
山下昌良のベースはVigierとESP PPJ|機材と3本指ピッキング【2026年版】
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山下昌良の使用ベース・アンプ・音作り ─ 要点まとめ
山下昌良はLOUDNESSのベーシストです。機材の軸は2本立てになっています。近年のメインはフランス製のVigier(ヴィジェ)Arpegeベースのシグネチュア・モデル、そして初期からのトレードマークがESP PPJです。アンプは1985年以降ずっとAmpegを使っていると本人が語っています。
近年のメイン:Vigier Arpege 4 strings のシグネチュア・モデル(2012年から4本を発売)
原点:ESP PPJ。ピックアップ配列を試すために作られた試作機が、そのまま型番の由来になったベース
アンプ:Ampeg。1970年代のSVTとSVT-VRを軸に、2021年のレコーディングではHeritageも比較
弦:アーニーボール。ダウン時はパワースリンキー、レギュラー時は1弦.050のレギュラースリンキー
ピック:オニギリ型(トライアングル)。親指・人差指・中指の3本で持つ独自スタイル
チューニング:レギュラーとダウンチューニングを曲ごとに使い分け
本記事は、ESP GUITARSとAmpeg Japanのメーカー公式アーティストページ、Vigier輸入元である神田商会の発表資料、そしてベース・マガジンに掲載された本人インタビューをもとに構成しています。
山下昌良とは ─ 加入・脱退・復帰をたどったキャリア
山下昌良は1961年11月29日生まれ、大阪府出身のベーシストです。中学時代にビートルズで音楽に目覚めてベースを始め、1981年、高崎晃(g)と樋口宗孝(d)がLAZY解散後にLOUDNESSを結成するにあたり、オーディションを経て加入しました(出典:ベース・マガジン掲載のプロフィール)。
ここで押さえておきたいのが、彼のキャリアが一続きではないという点です。1992年に自らの後任として元Xの沢田泰司を推薦してLOUDNESSを脱退し、spAed、ブラッドサーカスといったバンドで活動したのち、2000年にLOUDNESSへ復帰しています。在籍期間は1981年から1992年と、2000年から現在までの2期に分かれます。
LOUDNESSは80年代半ばに海外進出し、ビルボードTOP100へのチャートイン、マジソン・スクエア・ガーデンでのライヴなど日本人初の記録を重ねました。2021年にはデビュー40周年を迎え、同年12月29日に29枚目のオリジナル・アルバム『SUNBURST〜我武者羅』をリリースしています。
2022年11月29日には自伝『重音〜HEAVY GROOVE 山下昌良自伝』(リットーミュージック刊、四六判280ページ、2,420円)が発売されました。本人が所有する楽器を撮り下ろした機材ページも収録されており、ESP PPJとVigierのシグネチュア・モデルが本人コメント付きで紹介されています。
近年のメインはVigier Arpege ─ 4本の「ライジング・サン」
ベース・マガジンのインタビュー(2022年1月)では、聞き手が「お馴染みのメイン・ベースであるヴィジェ」と紹介しています。また自伝の紹介記事でも、ヴィジェのシグネイチャー・モデルが「近年の愛用楽器」として挙げられています。いずれも2022年の資料で、ここ数年の音の中心はVigierとみてよいでしょう。
シグネチュア・モデル4本の系譜
Vigierは1980年にフランスでスタートしたハイエンド・ブランドで、過度な大量生産を行わず小ロットで製造しています。輸入元である神田商会の2020年8月の発表資料によれば、山下昌良は唯一の日本人ヴィジェ・アーティストとされています(2020年8月時点の記述)。
発売年 | 型番 | 呼称 |
|---|---|---|
2012年 | V4ECC BRS MY | Black Rising Sun |
2016年 | V4ECC BLRS MY | Blue Rising Sun |
2020年 | V4ECC WRS MY | White Rising Sun |
2023年 | V4ECC RRS MY | Red Rising Sun |
出典:神田商会プレスリリース(2020年8月4日)、神田商会お知らせ(2023年6月8日)
いずれもArpegeシリーズの4弦モデルをベースにした特別カラーです。神田商会の発表では、White Rising SunとRed Rising Sunについて「太陽をモチーフにしたカラーリング」と説明されています。第4弾のRed Rising Sunでは、ヘッドストックに「大和魂」の文字が入っています。
V4ECC RRS MY の仕様
Vigier公式の製品ページに掲載されている、第4弾Red Rising Sunの主要スペックです。
ボディ | メイプル/アルダー/メイプルの3層構造 |
ネック | ボルトオン。10/90 Neck System(10%カーボン+90%メイプル)。Dシェイプ |
指板 | Phenowood(フェノウッド)/R=300mm |
スケール | 860mm |
フレット | 24フレット+ゼロフレット/テフロン・グラファイト製ナット |
ピックアップ | Vigierオリジナルのツイン・シングルコイル |
コントロール | ボリューム、バランサー、ピックアップごとに独立した3バンドEQ |
ブリッジ | Vigierオリジナル(各弦独立) |
ペグ | Schaller |
出荷時の弦 | .040-.095 |
製造国 | フランス |
価格 | 990,000円(税込) |
出典:Vigier公式 V4ECC RRS MY 製品ページ
ネックにカーボンを混ぜる10/90システムと、弦がナットではなくゼロフレットに接する構造。この2点がVigierの設計上の特徴です。抜けの良さについては、本人もインタビューで「ヴィジェって、誰が弾いてもめちゃめちゃ抜けがいい」と語っています。
なお、2020年発売のWhite Rising Sunには、付属品としてVigier Masayoshi Yamashita Model Pick が10枚同梱されていました。ピックそのものがシグネチュアの一部として用意されています。
原点はESP PPJ ─ 「第1号機」から45周年モデルまで
ESP GUITARSの公式アーティストページには、山下昌良のシグネチュアとして5本のベースが掲載されています。ESP名義のPPJ系3本と、EDWARDS名義のMark-IVが2本です(2026年9月15日確認時点で、いずれもDISCONTINUED表記)。
「PPJ」という型番は、ピックアップ配列そのものだった
PPJの成り立ちについて、ESPは40周年記念モデルの製品情報で次のように説明しています。山下昌良が初期LOUDNESSで使用していたESP製の1号機は、もともとESPがオリジナルベースを製作する際にピックアップ配列を試すために作られたベースでした。そこで生まれた独特な配列が、そのまま「PPJ」というモデル名になったといいます。プロトタイプでありながら、当時からライヴやレコーディングで使用されていたそうです。
この「独特な配列」の中身は、コントロール構成から読み取れます。ネック側にプレシジョン型のSeymour Duncan SPB-3 を2基、ブリッジ側にジャズ型のSJB-3 を1基、合計3基。コントロールが「Neck Volume×2, Bridge Volume, Master Volume」となっているのは、3基それぞれに独立したボリュームが割り当てられているためです。P・P・Jという並びで、これが型番の由来とみられます。
ESPの製品解説によれば、ボディに大きく空けられたピックアップキャビティは、さまざまなピックアップの種類や配列を試すためのものでした。試作機の痕跡が、そのままシグネチュア・モデルの外観上の特徴になっているわけです。
ESP PPJ SILVER ─ 1号機「銀狼伝説」のリイシュー
2021年9月1日発売、完全限定10本。LOUDNESS 40周年記念モデルとして、その第1号機がリイシューされました。ESPの製品ページには本人のコメントとして「蘇る山下モデル1号機 ”銀狼伝説”/元祖爆音ベース!!復刻版には更に強力なパワーがある!!」という言葉が掲載されています。
ただし、オリジナルの完全な再現ではありません。ESPの解説によれば、オリジナルはセパレート式のオリジナル・ブリッジを搭載していたのに対し、リイシューではSchaller製に置き換えられています。ボディはPスタイル、材はスワンプアッシュ、ネックはハードメイプルで指板はRichlite。ブリッジ側のピックアップのみ SJB-3b が使われます。コントロールも他の4本とは異なり、マスター・ボリュームではなくマスタートーンとON/OFFスイッチが備わります。
ESP PPJ / PPJ-WHITE ─ 35周年記念とJEALOUSY TOURの復刻
ESP PPJ は2016年11月25日発売、LOUDNESS 35周年記念企画の第19弾にあたるモデルで、2017年5月31日までの完全期間限定生産でした。ブラック塗装、指板はローズウッドです。
ESP PPJ-WHITE は2019年4月12日発売。ESPの製品ページには「LOUDNESS JAPAN TOUR 19に合わせて、1988年のJEALOUSY TOURで使用した、あのベースを復刻!」と記されています。こちらは指板がメイプルで、スノーホワイト塗装。2019年9月30日までの期間限定生産でした。
EDWARDS Mark-IV-AL / Mark-IV-AS ─ 45周年記念の2機種
2026年2月16日発売、LOUDNESS 45周年記念モデル。2026年2月16日から5月15日までの期間で各20本の完全受注生産でした。ボルトオン・20〜21フレットのESP名義PPJ系に対し、こちらはスルーネック・24フレットという構造です。
ESP公式ページに掲載された本人コメントが、この2機種の設計意図をはっきり示しています。
LOUDNESSではノーマルチューニング以外にダウンチューニングの曲を演奏します。今回PPJでダウンチューニング対応のモデルを作りたく、ボディ材2種で作っていただきました!どちらも1音下げのDチューニングでも音に張りがあり弾きやすいです。
ヘッドに角度がありスルーネックの24フレットなので、そんなに弦高を上げなくてもダウンチューニング対応になっていると思います!!
── ESP GUITARS 公式アーティストページ「山下昌良」より
ボディ材の違いについても、本人が選び方を明言しています。ノーマルチューニングがメインでたまにDチューニングも使う人にはアルダー材(AL)、1音以上下げる場合には音抜けの良いアッシュ材(AS)。用途で選び分けられるよう、2種類が用意されたわけです。
ESP系シグネチュア5モデルの仕様比較
モデル | 発売 | ボディ | 指板 | 構造・フレット | ブリッジ | 発売時価格(税込) |
|---|---|---|---|---|---|---|
ESP PPJ | 2016年11月25日 | スワンプアッシュ | ローズウッド | ボルトオン/21F | HIPSHOT STYLE"A" Brass | 550,000円 |
ESP PPJ-WHITE | 2019年4月12日 | スワンプアッシュ | メイプル | ボルトオン/21F | HIPSHOT STYLE"A" Brass | 550,000円 |
ESP PPJ SILVER | 2021年9月1日 | スワンプアッシュ | Richlite | ボルトオン/20F | Schaller 3D-4 | 770,000円 |
EDWARDS Mark-IV-AL | 2026年2月16日 | アルダー | エボニー | スルーネック/24F | ESP BB-I | 291,500円 |
EDWARDS Mark-IV-AS | 2026年2月16日 | アッシュ | エボニー | スルーネック/24F | ESP BB-I | 302,500円 |
出典:ESP GUITARS 公式アーティストページ「山下昌良」(2026年9月15日確認)。スケールは全モデル864mm、ピックアップは全モデル Seymour Duncan SPB-3×2+SJB-3(PPJ SILVERのみブリッジがSJB-3b)
5モデルを並べると、ピックアップ構成だけが一貫していることが見えてきます。ボディ材も指板材もネック構造も年代ごとに変わっているのに、SPB-3を2基+SJB-3という配列だけは動かない。試作機で生まれた配列が、最新の45周年モデルまで引き継がれています。
アンプはAmpeg ─ 公開されているセッティング
Ampeg Japanの公式アーティストページには、山下昌良の使用機材として SVT-VR、SVT-810E、SVT-II、SVT-5PRO の4機種が掲載されています。同ページに載る本人コメント(ベース・マガジン2020年4月号からの抜粋)はこうです。
1985年以降ずっとAmpegを愛用しています。1970年代のSVTを愛用していて、現在ステージではSVT-VRを使用。
太くしっかりしたチューブ・サウンドで、存在感のあるヌケ感を簡単に作ることができる点。唯一無比です。音量は10時。ウルトラ・ローのスイッチはマスト! とにかく太くてラウド!!
ここで注目したいのが、「音量は10時」「ウルトラ・ローのスイッチはマスト」という具体的な数字とスイッチ名が本人の口から出ている点です。ウルトラ・ローはAmpegのヘッドに搭載されているトーン・スイッチで、本人はこれを「マスト」と表現しています。音量については10時という値まで示されているため、手元のAmpeg機があれば出発点として同じ位置から試せます。
その後の動きも記録に残っています。ベース・マガジン2022年1月のインタビューによれば、『SUNBURST〜我武者羅』のレコーディングではアンペグSVTの70年代ヴィンテージ、SVT-VR、Heritage の3機種を鳴らして比較したとのこと。Heritageはライヴ用にも導入されています。1985年以降ずっとAmpegという本人の言葉どおり、ブランドは変えないまま機種は更新されているわけです。
もうひとつ、抜けの良さについて本人が挙げている要素があります。Vigierだけでなく、80年代の3曲で使ったSandbergでも抜けが良かったことに触れたうえで、「僕の使ってるDIによるところも大きいんじゃないかな」と語っています。DIの型番までは公表されていませんが、アンプとキャビだけでなくDIも音の一部として意識されていることは押さえておいてよいでしょう。
弦・ピック・チューニング
弦:アーニーボールを2種類で使い分け
ベース・マガジンのインタビューで、本人は弦をこう説明しています。ダウン・チューニングのときはアーニーボールの紫色のパッケージ(パワースリンキー)、レギュラーのときは1弦が.045ではなく.050のセット(レギュラースリンキー)。
この「.045ではなく.050」という選択には、はっきりした理由が語られています。細いほうが速弾きはしやすいと認めたうえで、12フレットあたりに行ったときの音の太さが.045と.050では全然違う、そのポジションをよく使うので音が寂しくなるのが嫌だ、と。弾きやすさより、実際に使うポジションでの音の太さを優先しているわけです。
用途 | セット | ゲージ |
|---|---|---|
レギュラー | Regular Slinky Bass | .050 / .070 / .085 / .105 |
ダウンチューニング | Power Slinky Bass | .055 / .075 / .090 / .110 |
セット名は本人インタビューによる。ゲージ数値はErnie Ball公式サイトの製品仕様
ピック:オニギリ型、厚みはヘヴィ
使用ピックについて、本人は「普通のオニギリ型の、厚みはヘヴィくらいかな」と答えています。そして続けてこう語ります。「昔はギターの人がよく使うティアドロップ型だったんだけど、3本指で持つようになってからは、オニギリが持ちやすいからずっとこれですね」。
形状の変更が持ち方の変更に付随して起きているという点が重要です。ピックを先に選んだのではなく、持ち方を変えた結果として形状が決まっています。
ESPからはシグネチュア・ピックとして PA-LY10-1 / PA-LY10-2 / PA-LY10-3 の3種が2024年12月4日に発売されています。いずれも素材はセルロース、厚さ1.0mm、形状はトライアングル、価格は各220円(税込)。本人が語る「オニギリ型」と仕様が一致します。
チューニング:レギュラーとダウンの使い分け
ESP公式ページの本人コメントには「LOUDNESSではノーマルチューニング以外にダウンチューニングの曲を演奏します」とあり、EDWARDS Mark-IVについては1音下げのDチューニングでも音に張りがあり弾きやすい、と説明されています。またベース・マガジンのインタビューによれば、『SUNBURST〜我武者羅』ではレギュラー・チューニングとCチューニングが使われました。
興味深いのは、ダウン時のピッキングです。奏法そのものは変えないものの、力加減はダウン・チューニングのときのほうが圧倒的に弱いと語っています。
弱く弾かないと低音が鳴らないし、チューニングも安定しない。だから本当に撫でるような感じでピッキングしますね。それで、ドーン!とした音を出す。
── ベース・マガジン「INTERVIEW – 山下昌良[LOUDNESS]」(2022年1月14日)より
太い弦、高い弦高、専用のベース。条件を整えたうえで、あえてゆるく弾く。強く弾くとチューニングが安定しないから、という理由も明確です。ダウンチューニングで音が濁る、ピッチが安定しないという悩みに対する、実践的な答えがここにあります。
本人が語るピッキング ─ 3本指の持ち方とミュート
山下昌良のサウンドを語るうえで、機材以上に本人が言葉を費やしているのがピッキングです。ここはベース・マガジンのインタビューで最も具体的に語られている部分でもあります。
親指・中指・人差指の3本でピックを持つ
通常、ピックは親指と人差指で持ちます。山下昌良はそうしません。親指と中指でピックを挟み、人差指を支えに添えるという3本持ちです。
理屈はこうです。ダウンは親指、アップは中指で弾く感覚になるため、指弾きと同じ感覚でピックを扱える。指弾きの人がアップを中指で弾くのと動きが一致するわけです。親指と人差指で持つ一般的なフォームだと、弾いているうちにピックが動いていくうえ、指弾き出身の人ほど感覚が狂う、と指摘しています。
効果として本人が挙げているのが音量です。指弾きの人がピックで弾くと音が小さくなりがちだが、この3本持ちなら音は小さくならない、と断言しています。オルタネイトを弾いても、横で聴かせてどちらがアップでどちらがダウンかわからない、とも。参考にしたプレイヤーとしてボブ・デイズリー、ジューダス・プリーストのイアン・ヒルの名前を挙げ、「ああいう感じにやろうと思ったら3本で持つのが近道かなと」と語っています。
ミュート ─ 大音量でも濁らせない技術
ピッキングで重視しているポイントを問われた本人の答えは、ミュートでした。「うまいやつって、やっぱミュートがうまいですよ、鳴らさない音をどう処理するか」。
例として挙げているのがE開放弦のミュートです。A音を刻む場合は4弦5フレットを押さえていた左手の指を浮かせれば止まりますが、E開放にはその手が使えず、能動的に止めにいく必要がある。いろいろなポジションのミュートを大事にしてきたからこそ、大きい音を出しても濁らず、聴きやすく、グルーヴも出る──そう説明しています。
指弾きの練習法についても具体的です。2フィンガーのオルタネイトが「ドタドタ」になる人に対して、まず指1本で確実に弾けるようになれと。ブラック・サバスの「Paranoid」が指1本で弾けるようになれば、2本にしても大丈夫だという考え方です。
シンコペーションと空ピック
もうひとつ挙げているのがシンコペーションです。ダウンで弾く場合は空ピックを入れて弾けるようになること、4発が完全に揃ってから速くすること。歯切れよく弾ければグルーヴが出て音も抜けてくる、と語ります。
実例として挙げられているのが、『SUNBURST〜我武者羅』収録の「OEOEO」です。歌が入ってからの空ピックが効いているとのことで、「空ピックを埋もれないように入れるのは難しかった」と振り返っています。具体的な楽曲名を挙げて奏法を語っている箇所なので、音源と照らし合わせて聴いてみてください。
手持ちの機材で近づけるには
同じ機材を揃えても同じ音にはなりません。ここまで見てきた内容から、コストをかけずに試せる順に整理します。
ピックの持ち方を変える。親指と中指で挟み、人差指を添える。コストはゼロで、本人が最も具体的に語っている要素です。形状はオニギリ型、厚みはヘヴィ。
弦を変える。レギュラーで弾くなら、1弦が.050のRegular Slinky Bass。ハイポジションでの太さが目的なので、まずは12フレット付近を弾いて違いを確かめるのが近道です。
ミュートを詰める。特にE開放弦。大音量でも濁らないかどうかは、ここで決まります。
アンプのウルトラ・ロー系スイッチを使う。Ampeg機を使える環境なら、ベース・ノブを上げる前にこのスイッチを試す。音量10時という値も公開されています。
ダウンチューニングでは弱く弾く。撫でるようなピッキングでドーンと鳴らす、という本人の言葉どおりに力加減を落としてみる。
楽器本体については、ESP系もVigierもいずれも高価格帯です。ただしピックアップ構成という観点なら方向性は掴めます。PPJ系の核はプレシジョン型2基+ジャズ型1基という構成です。3基すべてを再現するのは難しくても、ネック側にプレシジョン型、ブリッジ側にジャズ型という組み合わせ自体は、一般的なPJレイアウトのベースでも試せます。
中古で探すときに見るポイント
本記事では、実測にもとづく中古相場レンジを掲載していません。ESP PPJ系・EDWARDS Mark-IV・Vigier V4ECC系はいずれも限定生産のモデルで、相場として示せるだけの流通量がないためです。価格レンジの代わりに、個体を判断するための材料を整理します。
まず押さえる前提
ESP系5モデルは、メーカー公式ページ上でいずれも生産終了の表示になっています(2026年9月15日確認時点)。新品の流通在庫があるかどうかは、販売店に個別に確認する必要があります。
発売時の定価は公表されています。ESP PPJ/PPJ-WHITE が550,000円、PPJ SILVER が770,000円、EDWARDS Mark-IV-AL が291,500円、Mark-IV-AS が302,500円(いずれも税込)。中古価格の妥当性を判断する際の基準として使えます。
PPJ SILVERは完全限定10本、Mark-IVは各20本の受注生産です。母数が小さいぶん、出てきた個体の状態差がそのまま価格差になりやすい領域です。
個体を見るときのチェック項目
ピックアップの構成が公式仕様と合っているか。PPJ系はネック側にSPB-3が2基、ブリッジ側にSJB-3が1基。ボリュームが3つあるかを写真で確認します。4つめのつまみは、PPJ/PPJ-WHITE/Mark-IVがマスター・ボリューム、PPJ SILVERはマスタートーンです。
ブリッジの型。PPJ/PPJ-WHITEはHIPSHOT、PPJ SILVERはSchaller 3D-4、Mark-IVはESP BB-I。交換歴の有無を見分ける手がかりになります。
ネックの状態とトラスロッドの余裕。ダウンチューニング前提で使われていた個体は、弦高が高めにセットされていることがあります。ロッドに調整余裕が残っているかを確認しておきたいところです。
フレットの残り。ESP系はJESCAR FW47104-NS、Mark-IVはEXJ-SSと、公式仕様にフレット型番まで記載があります。打ち替え済みかどうかの判断材料になります。
付属品。PPJ SILVERとMark-IVには認定証が付属します。PPJ SILVERにはさらに40周年ロゴ入りの専用ハードケースが付きます。付属品の欠品は価格に影響します。
個人間取引を利用する場合は、ネックをヘッド側から撮影した写真、電装系の動作確認、ハードケースの有無と梱包方法を、購入前に出品者へ具体的にリクエストしておくと判断しやすくなります。
よくある質問
山下昌良のメイン・ベースはどれですか?
近年のメインはVigier Arpegeのシグネチュア・モデルです。ベース・マガジンのインタビュー(2022年1月)で「お馴染みのメイン・ベース」として紹介されています。一方、初期からのトレードマークはESP PPJで、記念モデルとして複数回リイシューされています。
「PPJ」とは何の略ですか?
ESPの製品情報によれば、ピックアップ配列を試すために作られたベースで生まれた独特な配列が、そのままモデル名になったとされています。略号の内訳までは公表されていませんが、実際の構成はネック側にプレシジョン型を2基、ブリッジ側にジャズ型を1基で、P・P・Jという並びになっています。
EDWARDS Mark-IV は AL と AS のどちらを選べばいいですか?
本人がESP公式ページで選び方を述べています。ノーマルチューニングがメインでたまにDチューニングも使う人にはアルダー材のAL、1音以上下げる場合は音抜けの良いアッシュ材のASが推奨されています。
アンプのセッティングは公開されていますか?
Ampeg Japanの公式アーティストページに、音量は10時、ウルトラ・ローのスイッチはマスト、というコメントが掲載されています(ベース・マガジン2020年4月号からの抜粋)。使用機材としてはSVT-VR、SVT-810E、SVT-II、SVT-5PROが挙げられています。
ピックの持ち方を真似るには何から始めればいいですか?
親指と中指でピックを挟み、人差指を添える形です。ダウンが親指、アップが中指に対応するため、指弾きの感覚に近づきます。形状はオニギリ型、厚みはヘヴィ相当。本文の「本人が語るピッキング」の項で詳しく解説しています。
まとめ
山下昌良の機材は、近年のメインであるVigier Arpegeのシグネチュア・モデルと、原点であるESP PPJ系という二系統で捉えると整理できます。ESP PPJは、ピックアップ配列を試すための試作機がそのまま型番になったベースで、プレシジョン型2基+ジャズ型1基という構成は5モデルすべてで変わっていません。アンプは1985年以来のAmpeg。音量10時、ウルトラ・ローはマストという具体的な設定まで公開されています。
そして、本人が最も多くの言葉を割いているのは機材ではなくピッキングでした。親指・中指・人差指の3本持ち、E開放弦のミュート、空ピックの精度。いずれも今日から試せて、コストはかかりません。まずは持ち方から変えてみてください。
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本記事は個人の使用経験に基づく情報です。楽器・機材の使用に際しては、取扱説明書や専門家の指示に従い、安全にご注意ください。
サウンドマニア編集部
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