
山口智史の使用ドラム|声で鳴らすヤマハの「VXD」とジストニアから復帰まで、似たドラムセット3選
サウンドマニア編集部/楽器の購入ガイドや基礎知識を発信するサウンドマニア編集部です。ピアノ・ギターをはじめとした楽器選…
山口智史が声でバスドラムを鳴らすのに使っているのが、ヤマハのシステム「VXD」です。
この記事では、VXDの仕組みと、山口智史がミュージシャンズ・ジストニア(演奏するときだけ筋肉がこわばる病気)からステージに戻るまでを紹介します。ソロツアーで使ったと紹介されたヤマハのドラムセット「Absolute Hybrid Maple」の特徴・値段・手に入れ方と、ヤマハで選べる似たドラムセット3選も紹介します。
山口智史が声でバスドラムを鳴らす「VXD」とは
VXDとは、ヤマハと慶應義塾大学が一緒に研究して作った、声でバスドラム(足で踏んで鳴らす、いちばん大きな太鼓)を鳴らすシステムです。共同研究は2024年7月に始まりました。
ヤマハは、山口智史を「長年ヤマハの楽器を愛用頂いているアーティスト」と紹介しています。VXDは、山口智史が「声で鳴らすバスドラム」をヤマハに提案したことがきっかけで始まりました。名前は「声(VOICE)・歌(VOCAL)」と「ドラム(DRUM)」の頭文字からきています。
機材 | 山口智史との関係 |
|---|---|
ヤマハのドラム | ヤマハの研究レポートで「長年ヤマハの楽器を愛用頂いているアーティスト」と紹介されている |
VXD | 山口智史の提案で始まった、ヤマハと慶應義塾大学の共同研究。2024年12月から、このシステムでステージに立っている |
ヤマハ Absolute Hybrid Maple | リズム&ドラム・マガジンのWebサイトが、2025年のソロツアーで使ったドラムとして紹介していた(編集部は記事の本文を読み直せていない) |
※ヤマハの研究レポート(2025年4月4日)とニュースリリース(2025年6月25日)をもとに編集部がまとめました。Absolute Hybrid Mapleについては、リズム&ドラム・マガジンのWebサイトの記事の本文を、編集部は読み直せていません。
出典:声でバスドラムを操るVXD(ヤマハ、2025年4月4日)/“声でバスドラムを操る”システム「VXD」を一般に初公開(ヤマハ、2025年6月25日)
VXDの仕組みは「ドン」の声で加振器を動かすこと
VXDは、ドラマーが「ドン」と声を出すと、バスドラムの中に付けた加振器(ふるわせる装置)が振動して音が出る仕組みです。電子ドラムの音を流すのではなく、本物のバスドラムをふるわせて鳴らします。
マイクに入った声の周波数(音の高さの成分)を調べて、「ドン」かどうかを見分ける
のど(咽頭部)に付けたセンサーで、のどの動きも感じ取る
マイクとセンサーの両方で声を見分け、加振器を動かす
この仕組みには、楽器そのものを鳴らすヤマハの「Real Sound Viewing」という技術が使われています。
出典:声でバスドラムを操るVXD(ヤマハ、2025年4月4日)
きっかけは和太鼓の口伝と村上"ポンタ"秀一の教え
声で鳴らすアイデアのもとになったのは、和太鼓の口伝(リズムを口で唱えて覚える教え方)と、ドラマーの村上"ポンタ"秀一の教えでした。山口智史は「叩く前にまずは口で音を出して練習する」という教えを思い出し、声でドラムを演奏できるのではないかと考えました。
出典:声でバスドラムを操るVXD(ヤマハ、2025年4月4日)
1号機から3号機まで作り直して「すごく楽しい」に
VXDは、3台目まで作り直されています。
試作 | やったこと | 山口智史の反応・残った課題 |
|---|---|---|
1号機 | 「ドン」の声でバスドラムを鳴らす仕組みを作った | タム(バスドラムの上などに付ける中くらいの太鼓)など、似た音にも反応して鳴ってしまった |
2号機 | 周波数の分析と、のどのセンサーを加えて見分ける力を上げた | 演奏に「なにか物足りない」と感じた |
3号機 | 加振器の置き方と動かし方を調整し、バスドラムに合わせて椅子が振動する仕組みを加えた | 「すごく楽しい!」と話した。一方で、大きな演奏音にのどのセンサーが反応してしまう課題も出た |
※ヤマハの研究レポート(2025年4月4日)をもとに編集部がまとめました。
出典:声でバスドラムを操るVXD(ヤマハ、2025年4月4日)
山口智史が声でドラムを鳴らすようになったのはミュージシャンズ・ジストニアのため
山口智史は、RADWIMPSのドラムを担当しています。RADWIMPSは2001年に結成し、2005年11月23日にシングル「25コ目の染色体」でメジャーデビューしました。
項目 | 内容 |
|---|---|
名前 | 山口智史(やまぐち さとし) |
バンド | RADWIMPS(ドラム) |
出身 | 神奈川県横浜市港北区 |
メジャーデビュー | 2005年11月23日、シングル「25コ目の染色体」 |
休養 | 2015年9月から、持病の悪化のため |
※RADWIMPS公式サイトのBIOと、横浜アリーナのお知らせ(2025年7月11日)をもとに編集部がまとめました。
出典:BIOGRAPHY(RADWIMPS公式サイト)/山口智史氏(RADWIMPS)ソロツアー追加公演(横浜アリーナ、PR TIMES、2025年7月11日)
ミュージシャンズ・ジストニアは演奏するときだけ体が思い通りに動かない病気
ミュージシャンズ・ジストニアとは、演奏するときに限って、無意識に筋肉がこわばってコントロールがきかなくなる病気です。
山口智史は2009年に発症し、バスドラムを思い通りに演奏できなくなりました。ヤマハの研究レポートでは「右足」、2025年6月のニュースリリースでは「両足」に発症したと書かれています。ミュージシャンズ・ジストニアだと分かるまでには、5年ほどかかりました。
2015年9月、山口智史は持病の悪化のため休養に入りました。脱退ではなく、RADWIMPS公式サイトのBIOには今もドラムとして名前が載っています。
出典:声でバスドラムを操るVXD(ヤマハ、2025年4月4日)/“声でバスドラムを操る”システム「VXD」を一般に初公開(ヤマハ、2025年6月25日)/RADWIMPS ドラマー 山口智史さんインタビュー(TORJA、2026年4月7日)/BIOGRAPHY(RADWIMPS公式サイト)
研究者として自分の症状を調べた
山口智史は2021年から、慶應義塾大学の藤井進也准教授の研究室で、自分でもジストニアの研究を始めました。足以外の動きで演奏することも試しましたが、思うような演奏にはなりませんでした。
2024年には、山口智史も著者に名前を連ねる論文が、医学誌『Frontiers in Neurology』に2本載りました。1本目は、右足にジストニアがあるプロのロックドラマーが8ビート(1小節を8つに刻む、ロックの基本のリズム)を叩いたときの記録です。症状は主に1拍目に出て、バスドラムの音が小さくなり、タイミングが早まっていました。2本目は、同じドラマーの足の筋肉の動き方を調べたものです。
※論文の中で、ドラマーは名前を伏せて書かれています。
出典:声でバスドラムを操るVXD(ヤマハ、2025年4月4日)/Drumming performance and underlying muscle activities in a professional rock drummer with lower-limb dystonia: a case study(Frontiers in Neurology、2024年8月21日)/Lower-limb muscle synergies in musician's dystonia: a case study of a drummer(Frontiers in Neurology、2024年11月18日)
山口智史がVXDでステージに戻るまで
山口智史は、VXDで少しずつステージに戻ってきました。
時期 | できごと |
|---|---|
2024年12月21日 | 東京・渋谷の「Yamaha Lab Vol. 3」にゲストで出て、VXDを組み込んだドラムセットで演奏した |
2025年7月18日〜8月17日 | ヤマハの展示「Yamaha FUTURE BEAT!」の体験コーナー「VXD EXPERIENCE」で、VXDがはじめて一般に公開された(展示の会期は8月24日まで) |
2025年8月20日〜9月6日 | はじめてのソロツアー「The Past Can Be Changed - Talk and VXD live performance-」5公演が予定された |
2025年9月22日 | 新横浜 NEW SIDE BEACH!!での追加公演が予定された |
2025年12月 | 大阪と神奈川でソロツアーの追加公演が予定された |
2025年12月27日 | 有明アリーナのRADWIMPS 20周年ツアーのファイナルで、アンコールの「25コ目の染色体」に出演した |
※ヤマハの研究レポートとニュースリリース、SPICE、横浜アリーナのお知らせ、リズム&ドラム・マガジンのWebサイトの記事の見出し、Real Soundをもとに編集部がまとめました。ソロツアーの日程は、開催前のお知らせにもとづいています。
2024年12月の演奏は、活動を止めてからはじめて、支えてくれた人たちにドラムの演奏を届ける場にもなりました。ソロツアーは、横浜・浜松・名古屋・大阪・新横浜のライブハウスをまわり、VXDでの演奏とトークを届ける内容として案内されました。
20周年ツアーのファイナルでは、メジャーデビュー曲「25コ目の染色体」を、サポートのドラマーと一緒にVXDで演奏しました。山口智史は、カナダの日系メディアTORJAのインタビューで、この日を「とても幸せな時間でした」とふり返っています。
山口智史が休養に入ったあと、RADWIMPSのライブでは、セッション・ドラマー(いろいろなバンドに呼ばれて演奏するドラマー)の森瑞希が、刄田綴色とのツインドラム(2人のドラマーで同時に叩く形)でサポートを務めました(2017年のインタビューより)。
出典:声でバスドラムを操るVXD(ヤマハ、2025年4月4日)/“声でバスドラムを操る”システム「VXD」を一般に初公開(ヤマハ、2025年6月25日)/山口智史(RADWIMPS)、自身初となるソロツアー開催決定(SPICE)/山口智史氏(RADWIMPS)ソロツアー追加公演(横浜アリーナ、PR TIMES、2025年7月11日)/山口智史[RADWIMPS]のソロ・ツアー追加公演が12月に大阪、神奈川で開催(リズム&ドラム・マガジン)/RADWIMPS 20周年ツアーファイナル徹底レポ(Real Sound、2026年1月23日)/RADWIMPS ドラマー 山口智史さんインタビュー(TORJA、2026年4月7日)/森瑞希インタビュー(リットーミュージック、2017年8月3日)
VXDの値段と手に入れ方は、まだ発売の案内を待とう
VXDは研究から生まれたシステムで、ヤマハの研究レポートやニュースリリースには、発売の予定や値段は書かれていません。2026年10月時点で、ヤマハから発売の案内は出ていません。
2025年の夏には、東京・渋谷のYamaha Sound Crossing Shibuyaで開かれた展示「Yamaha FUTURE BEAT!」で、だれでもVXDを体験できる「VXD EXPERIENCE」がありました(7月18日〜8月17日)。ヤマハのニュースリリースによると、この展示ではVXDがヤマハのドラムセット「Tour Custom」に組み込まれていました。
これから体験イベントや発売の案内が出るかは、ヤマハのニュースリリースをチェックしてみましょう。
出典:“声でバスドラムを操る”システム「VXD」を一般に初公開(ヤマハ、2025年6月25日)
ソロツアーで使ったと紹介されたヤマハ「Absolute Hybrid Maple」
Absolute Hybrid Mapleは、リズム&ドラム・マガジンのWebサイトが、山口智史が2025年のソロツアーで使ったドラムとして紹介していたドラムセットです。編集部は、この記事の本文を読み直せていません。
種類
ヤマハのドラムセット(シェルセット)です。シェルセットとは、バスドラム・タム・フロアタム(床に立てて置く大きめのタム)・スネア(ドラムセットの真ん中に置く、裏に響き線を張った太鼓)などの太鼓の部分の組み合わせで、シンバルやスタンドは入っていません。2014年7月に発売されました。
特徴
シェル(太鼓の胴)の真ん中に、強度の高いウェンジという木を1枚入れ、その両側をメイプル(カエデの木)3枚ずつではさんだ、7枚重ねのつくりです。厚さは、タムとフロアタムが6.2mm、バスドラムが8.0mmです。ヤマハは、プレイヤーが求める音を最大限に実現するためのモデルと説明しています。
値段
ヤマハの希望小売価格(メーカーが決めた目安の値段)は540,100円(税込)です。これは、22インチ×18インチのバスドラム、16インチ×15インチのフロアタム、12インチ×8インチと10インチ×7インチのタム、14インチ×6インチのスネアの5つを合わせた値段です。
手に入れ方
ヤマハの公式サイトに今も載っているドラムセットです。色は、オレンジスパークルやヴィンテージナチュラルなど10色あります。楽器店で取り寄せられるか相談してみましょう。
出典:Absolute Hybrid Maple(ヤマハ公式サイト)/Absolute Hybrid Maple 仕様(ヤマハ公式サイト)/山口智史[RADWIMPS]のソロ・ツアー追加公演が12月に大阪、神奈川で開催(リズム&ドラム・マガジン)
山口智史と同じヤマハで選べる似たドラムセット3選
山口智史のモデルではなく、今も買えるヤマハのほかのドラムセットです。VXDは付いていません。
ドラムセット | 種類 | 特徴 | 値段 | 手に入れ方 |
|---|---|---|---|---|
ヤマハ Tour Custom | ヤマハのシェルセット | オールメイプルの6枚重ね。VXDの展示ではTour Customが使われた | 229,900円(TMP2F4、税込) | 楽器店で探す |
ヤマハ Recording Custom | ヤマハのシェルセット | 薄いバーチ(カバの木)の6枚重ね | 540,100円(税込) | 楽器店で探す |
ヤマハ Stage Custom Birch | ヤマハのシェルセット | バーチ100%の胴 | 183,150円(SBP2F5、税込) | 楽器店で探す |
※ヤマハ公式サイトのドラムセット一覧と製品ページをもとに編集部がまとめました。値段はヤマハの希望小売価格です。セットに入っている太鼓の数や種類がちがうので、値段は目安です。
1. ヤマハ Tour Custom
種類:ヤマハのドラムセット(シェルセット)です。2018年7月に発売されました。
特徴:外側から内側まで全部メイプルの、6枚重ね・厚さ5.6mmの胴です。2025年の展示「Yamaha FUTURE BEAT!」では、このTour CustomにVXDが組み込まれていました。
値段:22インチのバスドラムが入ったTMP2F4が、ヤマハの希望小売価格で229,900円(税込)です。
手に入れ方:3選の中で、メイプルの胴を選べるのはこのセットだけです。Absolute Hybrid Mapleより値段をおさえて、メイプルの音を楽しめます。楽器店で探してみましょう。
2. ヤマハ Recording Custom
種類:ヤマハのドラムセット(シェルセット)です。2016年6月に発売されました。
特徴:ドラマーのスティーブ・ガッドと一緒に音を見直したモデルです。薄いバーチの6枚重ねの胴と、30度の鋭いエッジ(皮が当たる胴のふち)で、はっきりとした音になります。
値段:ヤマハの希望小売価格は540,100円(税込)で、Absolute Hybrid Mapleと同じです。22インチのバスドラムとスチールのスネアなどが入った値段です。
手に入れ方:楽器店で取り寄せられるか相談してみましょう。
3. ヤマハ Stage Custom Birch
種類:ヤマハのドラムセット(シェルセット)です。2015年9月に発売されました。
特徴:胴はバーチ100%です。ヤマハは、豊かな中音域と、反応のよさを特徴にあげています。
値段:SBP2F5のスタンダードセットが、ヤマハの希望小売価格で183,150円(税込)です。
手に入れ方:3選の中でいちばん値段が低いセットです。はじめてのヤマハのドラムセットに、楽器店で探してみましょう。
※ヤマハ公式サイトの仕様と価格をもとに編集部がまとめました。
出典:ドラムセット(ヤマハ公式サイト)/Tour Custom(ヤマハ公式サイト)/Recording Custom(ヤマハ公式サイト)/Stage Custom Birch(ヤマハ公式サイト)
山口智史のドラムについてよくある質問
山口智史はRADWIMPSを脱退したの?
脱退していません。2015年9月に休養が発表されましたが、RADWIMPS公式サイトのBIOには、今もドラムとして名前が載っています。
山口智史の病気は何?
ミュージシャンズ・ジストニアです。演奏するときだけ筋肉がこわばって、思い通りに動かせなくなる病気で、2009年に発症しました。
山口智史はまたドラムを演奏できるようになったの?
VXDを使い、声でバスドラムを鳴らす形で演奏しています。2024年12月にヤマハのイベントで演奏し、2025年にはソロツアーを行いました。2025年12月27日には、RADWIMPS 20周年ツアーのファイナルのアンコールに出演しました。
山口智史のドラムのメーカーは?
ヤマハです。ヤマハは山口智史を、長年ヤマハの楽器を使ってきたアーティストと紹介しています。
VXDは買える?
今のところ、発売の案内はありません。ヤマハの発表には、発売の予定や値段は書かれていません。2025年の夏には、東京・渋谷の展示で体験できました。
山口智史と同じヤマハのドラムセットを選ぶなら?
ソロツアーで使ったと紹介されたAbsolute Hybrid Mapleは、ヤマハの希望小売価格で540,100円(税込)です。VXDの展示で使われたのと同じシリーズのTour Customは、TMP2F4の構成で229,900円(税込)です。
まとめ|山口智史はヤマハと作ったVXDで、声でバスドラムを鳴らしている
山口智史は、ミュージシャンズ・ジストニアで2015年からドラムを休んでいましたが、ヤマハと慶應義塾大学が作ったVXDで、声でバスドラムを鳴らしてステージに戻りました。VXDは、まだ発売の案内が出ていないシステムです。同じヤマハのドラムセットなら、ソロツアーで使ったと紹介されたAbsolute Hybrid Maple、VXDの展示で使われたTour Custom、値段をおさえたStage Custom Birchが選ぶ目安です。
関連記事
※本記事は特定のメーカー・販売店・買取業者との広告提携に基づくものではありません。
サウンドマニア編集部
楽器の購入ガイドや基礎知識を発信するサウンドマニア編集部です。ピアノ・ギターをはじめとした楽器選びや、メンテナンス・演奏に関する実用的な情報をわかりやすくお届けします。


