
田村明浩のベースは62年ジャズベとSago|4本の仕様と選び方【2026年版】
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スピッツのベーシスト・田村明浩のメイン器は 1962年製の Fender Jazz Bass。そしてライヴで使われているもう一方の柱が、兵庫県尼崎市の工房 Sago New Material Guitars にオーダーした複数本のベースです。ベース・マガジン2023年1月24日公開の対談記事によれば、Sago製のベースは同時点で4本。そしてその4本は、本人が「二本目以降もネック・シェイプは変えずに製作してもらいました」と語るとおり、ネックの形状が一貫しています。田村明浩のベースの実像と、そこから読み取れる楽器選びの考え方を整理します。
田村明浩が使用するベース ─ 出典で確認できる機材の全体像
まず、確認できる範囲の全体像を押さえておきましょう。田村明浩のベースは、長年使われてきたヴィンテージのジャズ・ベースと、複数本のSago製オーダーメイドという二本柱で構成されています。
機材 | メーカー | 位置づけ・特記 | 出典 |
|---|---|---|---|
Jazz Bass(1962年製) | Fender | メイン器 | ベース・マガジン |
SB-55GT | Sago New Material Guitars | グレートマエカワとの“兄弟ベース” | ベース・マガジン/Sago公式 |
Custom Order Bass(Jタイプ2基) | Sago New Material Guitars | オーダーメイド | Sago公式 |
Custom Order Bass(PJ/半音下げ仕様) | Sago New Material Guitars | オーダーメイド | Sago公式 |
半音上げ仕様のSago製ベース | Sago New Material Guitars | スケールが短く、ネックをFのピッチに差し替えた個体 | ベース・マガジン(本人発言) |
ポイント:田村明浩のベースは「1962年製ジャズ・ベース」をメイン器とし、Sago製のオーダーメイドが並走する構成です。
田村明浩のプロフィールと、公式が挙げる音楽的ルーツ
機材選択の背景を読み解く前に、公式サイトが公開している情報を確認しておきます。
スピッツのベーシスト ─ 公式プロフィールの記載
田村明浩(たむら あきひろ)は1967年5月31日、静岡県生まれ。血液型はA型と、SPITZ OFFICIAL WEB SITE のプロフィールページに記載されています。同ページによれば、スピッツは草野マサムネ(Vo/Gt)、三輪テツヤ(Gt)、田村明浩(B)、﨑山龍男(Dr)の4人組ロックバンドで、1987年結成、1991年メジャーデビュー。ベース・マガジンに掲載されたプロフィールでは出身地が静岡県藤枝市と記されており、2022年までにシングル45枚、オリジナル・アルバム16枚などを発表していることも紹介されています。
影響を受けたのはスティーヴ・ハリスとジョン・エントウィッスル
公式プロフィールの「影響を受けたミュージシャン / 音楽」の欄には、スティーヴ・ハリス(アイアン・メイデン)とジョン・エントウィッスル(ザ・フー)の2名が挙げられています。
田村自身のプレイについては、ベース・マガジンの対談で、フラワーカンパニーズのグレートマエカワが「芯からリード・ベース的でありつつ、ベースをメロディ/リズムの両観点でうまくコントロールしている」と語っています。ポップなメロディの楽曲にあのベース・ラインを入れ込む感性は独特だ、とも述べています。
最初の1本はグレコのバイオリンベース
同じ公式プロフィールの「初めて買った楽器」の欄にはグレコのバイオリンベースと記されています。「将来の夢」の欄が「楽器屋」であることも含めて、楽器そのものへの関心の強さがうかがえる記載です。実際、後述するSagoとのやり取りについて、田村は自身を「楽器オタク」と表現しています。
ポイント:公式プロフィールが挙げる影響元は、スティーヴ・ハリス(アイアン・メイデン)とジョン・エントウィッスル(ザ・フー)の2名です。
メイン器 ─ Fender Jazz Bass(1962年製)
ベース・マガジン2023年1月24日公開の記事では、Sago製 SB-55GT の解説のなかで、田村のメイン器が1962年製のジャズ・ベースであると明記されています。SB-55GTのネック・シェイプは、この1962年製ジャズ・ベースの形状を踏襲して作られました。
この1本が果たしている役割は、所有する機材のひとつにとどまりません。Sagoへのオーダーでネック形状の基準になったという点で、田村の機材構成の中心に置かれています。
Sago公式に掲載されたコメントで、田村は楽器を選ぶポイントについて、ヴィンテージでも新品でもネックの響きだと述べています。メイン器がヴィンテージのジャズ・ベースであり、そのネック形状がオーダーメイドの基準にもなっているという関係は、この発言と一貫しています。
Sago New Material Guitars ─ 基準を共有する4本のオーダーメイド
田村明浩は、Sago New Material Guitars の公式アーティストページに掲載されているベーシストのひとりです。同社は兵庫県尼崎市のオーダーメイド工房で、公式サイトにはSago製ベースの仕様表と、田村本人のコメントが掲載されています。
Sagoにたどり着くまで
ベース・マガジンの対談で、田村はSagoとの出会いを具体的に語っています。sleepy.abと対バンした際にベースの田中秀幸がSagoを使っているのが気になり、その話を同じくSagoを使っていた the pillows の真鍋吉明に伝えたところ、Sago New Material Guitars 代表の高山賢につないでもらった、という経緯です。
Sago公式サイトに掲載された田村のコメントでは、動機がこう説明されています。今の若くてかっこいい日本のバンドと同じようなセンスを持つ人に自分のベースを作ってもらいたくなって探していた、というものです。
サーモウッドという選択
Sagoに惹かれた理由として田村が挙げているのが、ネック材に使われているサーモウッドです。ベース・マガジンは編集部注として、これを木材を無酸素状態で高熱処理したのち乾燥させ、材中の水分や油分を揮発させて剛性を高める技術だと説明しています。
田村によれば、当時このやり方は世界的にも珍しく、サーモ・ネックを使うとサウンドにヴィンテージの風味が出たり、新品では味わえないような音が出せる。自分の使っているヴィンテージ楽器との違いが気になった──というのが最初の1本を発注した動機でした。Sago公式のコメントでも、日本ではほとんど使われていなかったサーモウッドに興味津々だったと述べています。
ネック・シェイプのプロファイリング ─ 4本を貫く一本の軸
Sagoに依頼した際、最初にメイン器のネック・シェイプなどを全部測って理想のネック形状をプロファイリングしてもらえたことが大きかった、と田村は語っています。そのうえで、「ネックはベースで一番重要な部分だから、二本目以降もネック・シェイプは変えずに製作してもらいました」と明言しています。
ボディ形状もピックアップ構成もチューニングの前提も異なる複数のベースが、ネック・シェイプだけは揃えられている。ここが田村のオーダーの一貫した方針です。
SB-55GT ─ グレートマエカワとの“兄弟ベース”
SB-55GT は、フラワーカンパニーズのグレートマエカワのSB-53GTと対になる“兄弟ベース”として作られたモデルです。きっかけはスピッツのファンクラブ“Spitzbergen”の会報誌で連載している対談だったと、ベース・マガジンの聞き手が説明しています。
ベース・マガジンによるSB-55GTの記述は以下のとおりです。
木材構成:アルダー・ボディ、メイプル・ネック、ローズウッド指板
スケール/フレット:34インチ・スケール、20フレット
ネック・シェイプ:メイン器である1962年製ジャズ・ベースの形状を踏襲
ピックアップ:納品後に田村の好みに合わせて新たに製作された2基のオリジナルのJタイプ
コントロール:ヴォリューム、トーン。トーン・ノブをプルするとリア・ピックアップがキャンセルされる
ボディ・シェイプはOPB(オリジナル・プレシジョン・ベース)タイプ。対談のなかで田村は「元はOPBなわけだからね。言ってみれば一番歴史のあるベースなわけだし」と述べています。ヘッドはオリジナルのOPBのヘッドを今風にデザインしたもので、Sago代表の高山賢からの提案だったことも語られています。
ブリッジにはBADASS BASS IIが採用されました。これは2人のベースに共通する仕様です。田村は、オリジナルのOPBはブリッジ周辺が貧弱に感じられること、裏通しにしたくなかったことを理由に挙げ、結果的にサステインの伸び方やサウンドにも貢献していると思う、と語っています。グレートマエカワは、OPBシェイプだからといって一般的なOPBのブリッジを付けるのではなく、見た目的にも存在感のあるバダスを選んだと説明しています。
なお、田村がこれまでSagoで製作した3本のベースはすべてマッチング・ヘッド仕様であり、SB-55GTもマッチング・ヘッドで作られました。この対談が公開された2023年1月時点で、田村のSago製ベースは合計4本ということになります。
【表】Sago公式に掲載されている仕様
Sago公式のアーティストページには、3本のベースの仕様表が掲載されています。
項目 | SB-55GT | Custom Order Bass(Jタイプ2基) | Custom Order Bass(PJ) |
|---|---|---|---|
ボディ | Alder 2P | Thermo Alder 2P | Thermo Alder 2P |
ネック | Herd Maple | Light Thermo Maple | Light Thermo Maple |
指板 | Indian Rosewood | Indian Rosewood | Indian Rosewood |
ペグ | Gotoh GBR640 | Gotoh GB528 | Gotoh GB528 |
ナット | Oiled Bone | Oiled Bone | Oiled Bone |
指板R | 7.25inch | 185mm | 185mm |
スケール | 34inch (20F) | 864mm (20F) | 864mm (20F) |
ネックPU | L(x) OPB Split | L(x) JB4 Custom | L(x) PB4 Custom |
ブリッジPU | L(x) OPB Single | L(x) JB4 Custom | L(x) JB4 Custom |
ブリッジ | BADASS BASS II | Gotoh 404BO-4 | Gotoh 404BO-4 |
コントロール | 2Vol+1Tone | 1Vol+Toggle SW+Series/Parallel SW | 2Vol |
ピックガード | White 1P | Vintage White 3P | Mint Green 3P |
塗装 | Body / Neck ともに Thin Lacquer | Top lacquer | Top lacquer |
Jタイプ2基のモデルについては、Sago公式に「¥436,920(With Tax)」という金額が、2023年現在価格という注記付きで掲載されています。オーダーメイドの価格は仕様によって変動するため、この数字はあくまでこの個体の、この時点の記載です。
PJタイプのモデルについては、Sago公式が「半音下げのベースを制作しました!」「20Fの仕様を、そのまま1F伸ばすことによって開放弦が半音下げになっています」と説明しています。仕様表の表記は20Fのまま、本文の説明は21F仕様となっており、この点は出典内でも記載が揃っていません。
出典によって記載が異なる点
SB-55GT については、ピックアップとコントロールの記述が出典によって異なります。読み手が自分で確認できるよう、両方を示しておきます。
項目 | ベース・マガジン(2023年1月24日) | Sago公式アーティストページ |
|---|---|---|
ピックアップ | 納品後に新たに製作されたオリジナルのJタイプ×2 | L(x) OPB Split + L(x) OPB Single |
コントロール | ヴォリューム、トーン(トーンをプルでリアPUキャンセル) | 2Vol+1Tone |
ベース・マガジンの記述が「納品後に田村の好みに合わせて新たに製作された」ピックアップに言及していることから、両者は異なる時点の仕様を指している可能性がありますが、どちらの記述がどの時点のものかを示す記載は、いずれの出典にもありません。
ポイント:Sago製の4本は、ボディ形状もPU構成も異なる一方で、ネック・シェイプは二本目以降も変えずに製作されたと本人が語っています。
チューニングを、楽器側で解決する
田村のオーダー内容で特徴的なのが、チューニングごとに楽器を作り分けている点です。ベース・マガジンの対談で、本人が次のように説明しています。
所有するSagoベースのうち1本はスケールが短く、半音上げで使っているモデル。スピッツに半音上げチューニングの曲が多いこともあって、完成したベースのネックをFのピッチのものに差し替えてもらった個体だといいます。逆に、スケールを長くした半音下げ(E♭)のピッチのモデルも作ってもらい、いずれもすごく良かった、と述べています。
この経験が、グレートマエカワへの提案につながりました。フラワーカンパニーズがライヴで半音下げを使うことを知っていた田村が、「どうせだったら半音下げを想定した、長いネックのモデルを作ってみない?」と持ちかけたのが SB-53GT です。結果として、田村のSB-55GTは開放弦が通常のE、グレートマエカワのモデルは1フレット長い仕様になっています。
なお田村は、レコーディングでは面倒でカポを使ってしまう人間だとも語っており、この考え方に賛成だったと説明しています。半音上げ・半音下げの処理を、演奏側の運指ではなく楽器側の設計で吸収する──という発想が、複数本のオーダーに一貫しています。
田村明浩の機材から読み取れる、楽器選びの手がかり
本記事では、実測にもとづく中古相場のレンジを掲載していません。代わりに、ここまでの出典から読み取れる判断材料を整理します。
基準にする1本を決め、そこからネックを揃える
田村のオーダーで一貫しているのは、ネック・シェイプを基準器から動かさないという方針です。本人が「ネックはベースで一番重要な部分」と述べ、二本目以降もシェイプを変えずに製作してもらったと語っている点は、複数本を使い分けたい人にとって参考になる考え方でしょう。手にした感触が揃っていれば、ボディ材やピックアップ構成が違っても持ち替えの負担は小さくなります。
チューニングの運用を、先に決めておく
半音上げ・半音下げを日常的に使うかどうかは、スケール長やネックの選択に直結します。田村の例では、半音上げ用にはスケールの短い個体、半音下げ用にはスケールの長い個体という対応が取られました。中古で楽器を選ぶ場合も、自分がどのチューニングで最も長い時間を過ごすのかを先に決めておくと、スケール長の判断がしやすくなります。
ジャズ・ベース系を軸に考える
メイン器がジャズ・ベースであり、Sago製の1本もJタイプのピックアップ2基構成であることから、田村のサウンドの出発点にジャズ・ベース的なピックアップ構成があることは読み取れます。方向性を近づける出発点としてジャズ・ベース・タイプを選ぶ、という考え方は出典と矛盾しません。
中古で個体を見るときの確認項目
ネックの状態:反り、トラスロッドの可動量の残り
フレット:摩耗の度合いと、すり合わせ・打ち替えの履歴
電装系:ピックアップ、ポット、ジャックのノイズやガリ
ボディ:打痕、クラック、塗装の状態
パーツのオリジナル性:年式が売買価格に影響する個体では、ブリッジ・ペグ・ピックアップが当時のものかどうか
実物を確認できない通信販売では、販売者に詳細な写真と状態説明を求めておくと判断材料が増えます。
よくある質問
田村明浩のメインのベースは何ですか?
ベース・マガジン2023年1月24日公開の記事に、メイン器は1962年製のジャズ・ベースだと記されています。Sago製 SB-55GT のネック・シェイプは、この個体の形状を踏襲して作られました。
田村明浩はSagoのベースを何本持っていますか?
同じ対談記事の時点(2023年1月)で、それまでに製作した3本にSB-55GTを加えた計4本です。Sago公式のアーティストページには、このうち3本の仕様が掲載されています。
田村明浩が影響を受けたベーシストは誰ですか?
SPITZ OFFICIAL WEB SITE の公式プロフィールには、スティーヴ・ハリス(アイアン・メイデン)とジョン・エントウィッスル(ザ・フー)の2名が挙げられています。
SB-55GTと同じベースはオーダーできますか?
SB-55GTはグレートマエカワのSB-53GTと対で製作されたモデルです。Sagoはオーダーメイドを受け付けている工房のため、仕様の相談はSago公式のオーダーページから可能です。
まとめ
田村明浩のベースは、1962年製の Fender Jazz Bass をメイン器とし、Sago New Material Guitars製のオーダーメイドが並走する構成です。2023年1月時点でSago製は4本。ボディ形状もピックアップも塗装も異なる一方、ネック・シェイプは二本目以降も変えずに作られてきたと本人が語っています。半音上げ用・半音下げ用と、チューニングごとに楽器を作り分けている点も、この人の機材の考え方をよく表しています。
公式プロフィールが挙げる影響元は、スティーヴ・ハリスとジョン・エントウィッスルの2名です。「基準にする1本を決め、そこから手に触れる部分を揃えていく」という進め方は、所有本数にかかわらず取り入れられる考え方です。
サウンドマニア編集部
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