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鈴木茂のギターは62年製ストラト|改造歴とシグネチャー2本【2026年版】

鈴木茂のギターは62年製ストラト|改造歴とシグネチャー2本【2026年版】

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サウンドマニア編集部/楽器の購入ガイドや基礎知識を発信するサウンドマニア編集部です。ピアノ・ギターをはじめとした楽器選…

鈴木茂の愛器は、1973年にロサンゼルスで約14万円で買った1962年製のフィエスタレッド・ストラトキャスターです。同じ日に近くの質屋のような店で見つけたJBLスピーカー入りのDeluxe Reverbは、50年以上たった今も現役。この記事では、フェンダー公式のインタビューやギター・マガジンの機材取材といった一次情報をもとに、このストラトに施されてきた改造の履歴、本人が公開しているDeluxe Reverbのセッティング、7台構成の“旅用”ペダルボードと歪みの4段階、はっぴいえんど期の音を担っていたギブソン・ファイアーバードV、そして2020年と2026年に発売された2本のシグネチャーモデルの違いまでを整理します。

鈴木茂の使用機材──一次情報でわかっている全体像

鈴木茂(1951年東京都生まれ)は、はっぴいえんど、ティン・パン・アレー、ソロと活動を重ねてきたギタリストです。フェンダーの公式メディアFenderNewsに掲載されたプロフィールによれば、1968年にスカイを結成してプロデビューし、1969年に細野晴臣に誘われ、松本隆、大滝詠一とヴァレンタイン・ブルーを結成(翌年はっぴいえんどに改名)。1974年に単身ロサンゼルスへ渡り、ソロアルバム『BAND WAGON』を完成させています。

機材については、フェンダーが公式メディアFenderNewsで本人インタビューを複数回公開しており、ギター・マガジンもペダルボードを実写付きで取材しています。まずは、それらの一次情報でわかっている範囲を一覧にまとめます。

区分

機材

要点

メインギター

1962年製 Fender Stratocaster(フィエスタレッド)

1973年にロサンゼルスで購入。現在は自宅でのデモ制作と自身のレコーディングが中心

ライブ用ギター

Fender Custom Shop SHIGERU SUZUKI '62 STRATOCASTER JOURNEYMAN RELIC

2020年発売のシグネチャー。「今はライブではほとんどこれ」と本人が語る

最新シグネチャー

Fender Made in Japan Limited Shigeru Suzuki Stratocaster

2026年5月13日販売開始。日本製・限定生産

過去の使用

Fender Telecaster/借り物のStratocaster(P-90搭載)/1965年製 Gibson Firebird V

はっぴいえんど期。1stアルバムの録音はレンタル品。『風街ろまん』はファイアーバードV中心

アンプ

Fender Deluxe Reverb(JBLスピーカー搭載)

1973年にギターと一緒に購入し、現在も使用

ライブのアンプ構成

Deluxe Reverb+Princeton Reverb×2

ドライ用1台、ウェット用2台の3台構成

エフェクター

ROSS Compressor×2、BOSS ODー1ほか/Jen Cry Baby Model 310.001

“旅用”ミニ・ペダルボードは全7台構成

弦

Ernie Ball Hybrid Slinky #2222(.009〜.046)

ペダルボード内に予備を収納

ポイントは、1973年にロサンゼルスで買ったギターとアンプを、役割を変えながら50年以上手元に置き続けている点です。以下、それぞれを掘り下げます。

愛器は1962年製フィエスタレッドのストラトキャスター

1973年、ロサンゼルスで約14万円──購入のいきさつ

FenderNewsに掲載された2026年のインタビューで、鈴木茂はこのギターとの出会いをこう語っています。ロサンゼルスでストラトを探していたとき、暖炉のある普通の民家の居間のような楽器店に入り、壁に吊るされていたフィエスタレッドの1本に目が留まった。「フィエスタレッドは色が目立ってたんでね、この色面白いなあと思って、色で選んじゃったんです」。試奏もしたうえでの決断でした。

価格は「当時のお金で14万円ぐらい」で、「当時はビンテージじゃなくて単なる中古品でしたからね」と振り返っています。2025年10月に原宿で行われたFender Experience 2025のトークセッションでも、「1962年製で、買ったのは1973年だから11年の中古だったということですね」と語っていました。

同じ日にアンプも買っている

ギターを買った際、近くの質屋のような店でJBLのスピーカーが入ったDeluxe Reverbを見つけ、こちらも購入して日本へ持ち帰ったといいます。本人いわく「そのアンプは今も使っていますよ」。ギターとアンプを同じ旅で入手し、両方を50年以上使い続けていることになります。

ソロアルバム『BAND WAGON』のレコーディングは、購入の翌年にあたる1974年10〜11月。つまりこのストラトは、ソロ第1作から現在までのキャリアの大半を共にしてきた1本です。

40年以上にわたる改造の履歴

鈴木茂のストラトが興味深いのは、オリジナル状態を保存する方向ではなく、必要に応じて手を入れ続けてきた点です。本人がFenderNewsのインタビューで語った改造内容を、時系列で整理します。

時期

改造内容

理由

現状

『BAND WAGON』録音時(1974年)

改造なし

「ネックもまだ削っていないし、まだオリジナルのままでしたね」

-

時期不明(初期)

ストリングガイドを1955年までの丸型2つに変更

強く弾くと弦がナットから外れることがあったため

現在も装着

入手後(5〜6年悩んだ末)

ネックを削る

「丸太を半分に切ったようなやつだった」ため

現在の形状

時期不明

ピックアップを巻き数の多いヴィンテージ品へ交換

低音が少なかったため

現在も搭載

時期不明

キャビティに銅板/ピックアップ裏にトライガード

ノイズ対策と高音の回復

トライガードは現在は外している

時期不明

ノイズキャンセリングシステムを搭載

シングルコイルのノイズ低減

現在も搭載

1980年代ごろ

MXR Dyna Compをボディ内部に内蔵

毎回セットするのが面倒だったため

現在は撤去

1990年代ごろ

コンデンサーをスプラグ“バンブル・ビー”へ

メロディを弾いたときの音が柔らかくなるため

現在も搭載

とりわけ独特なのが、コンプレッサーのギター内蔵です。アームをほとんど使わなかったことから、トレモロ・ブロックにスペーサーを入れて固定してスプリングを外し、空いたスペースにMXR Dyna Compの基板と電池を収めたといいます。さらにボリュームポットをスイッチ付きのものに交換し、コンプのOn/Offを本体で切り替えられるようにしていました。

時期についても本人が根拠を添えています。「『BAND WAGON』のレコーディングの時には普通に足元にコンプを置いていたので、その後のことなのは間違いないですね」。1980年代ごろの改造とみられます。

ピックアップ交換にまつわるエピソードも印象的です。低音の少なさを補うためセイモア・ダンカンに巻き直しを依頼したものの、「結局戻ってこなかったですね」。そこで楽器店でバラ売りされていたヴィンテージのピックアップを何個も買い、テスターで抵抗値を測って元より巻き数の多いものを選んで取り付けた、と語っています。年式については「分からないけど、1960年代のだと思いますね」と推定の形で述べています。

結果としてこの個体は、低域が少なく高域が太い、中域から上に音が集まった独特の鳴りになっているとのこと。この「低域の少なさ」が、後のシグネチャーモデル開発の出発点になります。

現在の使い分け──ビンテージは自宅、ライブはシグネチャー

50年以上使い続けてきた1本ですが、近年は持ち出し方が変わっています。Fender Experience 2025で本人はこう語りました。「最近はあまりライヴに持って行かないんです。やっぱりこれがなくなってしまうと、とっても心に穴が空いた感じになっちゃうので、ほとんどは家でデモテープを作る時に使っています。あと、自分のレコーディングには必ず持って行っています」。

ライブとレコーディングの主力は、2020年に発売されたCustom Shop製シグネチャーモデルへ移っています。オリジナルは「自宅のデモ用」と「自身の作品」という位置づけです。

はっぴいえんど期の機材──借り物のストラトとギブソンのファイアーバード

ストラトを手に入れる前、鈴木茂は何を弾いていたのか。2020年のFenderNewsのインタビューでは「はっぴいえんどの時にはすでにTelecasterを使用していたので、次はストラトが欲しいなと」と語っています。

一方で、はっぴいえんどの1stアルバム『はっぴいえんど』(通称“ゆでめん”、1970年)の録音では、ストラトキャスターを使っています。ただしこれは自身の楽器ではありませんでした。

“ゆでめん”で弾いたのは渋谷のヤマハからの借り物 「あれは渋谷のヤマハからの借り物でしたね。ソープバータイプのピックアップが二つ付いていて、しっかりした音で、なおかつ繊細な音も出るギターでした。本来のストラトではないんだけども(笑)」。Fender Experience 2025のレポートでも、このレンタル機のピックアップがP-90だったことが紹介されています。当時の写真でブリッジカバーが付いたままなのも、「借り物だからいじれなかったんじゃないですかね」とのことでした。

『風街ろまん』の中心にいたのはギブソンのファイアーバード

さらに、はっぴいえんど期の音を決定づけたのはフェンダーですらありませんでした。ギター・マガジンWEBが2021年に本人の所有器を実写取材した記事によれば、鈴木茂は1965年製のギブソン・ファイアーバードVを所有しており、『風街ろまん』(1971年)でのプレイはほぼすべてこの1本によるものとされています。ノン・リバース・シェイプにミニ・ハムバッカー2基とロング・ヴァイブローラを備えた個体で、岡林信康のツアー・バックを務めたときのギャラで1970年に購入したものだといいます。

同記事によれば、この個体は大滝詠一『A LONG VACATION』(1981年)でもアルバムを通してメインに据えられ、「さらばシベリア鉄道」の印象的なメロディもこのギターが奏でています。本人は「はっぴいえんどが解散してからは、大滝さんのレコーディングはほぼこのギターを使ったね。オールディーズ的な音を出したい時にこのファイアーバードはすごくハマるの」と語っています。

つまりはっぴいえんど期は、テレキャスターを自分の楽器として使い、レコーディングでは借り物のストラト(それもP-90搭載の変則的な個体)やギブソンのファイアーバードも弾いていた、という状況です。「テレキャスターからストラトキャスターへ持ち替えた」という単純な図式では捉えきれません。フィエスタレッドのストラトが軸になるのは、あくまで解散後のことです。

アンプはDeluxe Reverb──本人が公開しているセッティング

鈴木茂のアンプはフェンダーのDeluxe Reverbです。1973年にロサンゼルスで買ったJBLスピーカー入りの個体を今も使い続けており、Fender Experience 2025のステージにも3台のDeluxe Reverbが並びました。

同イベントでは、セッティングの考え方も具体的に語られています。

「これは中域の音量がちょっと低いんです。だからシャキッとした音になるんですよね。Deluxe Reverbは、左側のノーマルチャンネルのトレブルとベースをゼロにしても音が出る。それぞれゼロのままヴォリュームを6ぐらいにすると気持ちいい歪みになるんです」

トーンを絞り切ったままボリュームだけを上げる、という順序です。アンプ側で歪みを作るための設定であり、次の言葉がその前提を説明しています。

音作りの前提となる考え方も明確です。「アンプでまずは歪ませて、それで足りない分をエフェクターで補うのが理想。今でもそれがいいと思っています。1個の機材で全部を作ろうと思うと、何かつまらない薄っぺらい音になっちゃう。シミュレートで鳴らすのではなく、アンプで鳴らすほうがいいと僕は今でも思っています」。

ライブは3台構成、遠征時はレンタル

ギター・マガジンの2021年の取材によれば、通常のライブでは超巨大なペダルボードとアンプ3台という構成をとっています。内訳は、ドライ・サウンド用のDeluxe Reverbが1台、ウェット・サウンド用のPrinceton Reverbが2台と紹介されています。

ローディが同行しない地方公演では、ボードとギターだけを持ち運び、アンプは現地で2台レンタルするとのこと。その際はJC-120とTwin Reverbの組み合わせになることが多いと紹介されています。

“旅用”ペダルボードの全7台と、歪みの4段階

ギター・マガジンが実写付きで公開した“旅用ボード”は、飛行機移動の際に持ち運ぶミニ・ペダルボードです。接続順は①から⑦の番号どおりで、⑤以降がステレオになります。

順

機材

種別

使い方

①

ROSS / Compressor

コンプレッサー

常時オン

②

ROSS / Compressor

コンプレッサー

歪ませる/サステインを伸ばす際にオン。OUTPUTは12時が基本、3時まで上げることも

③

BOSS / ODー1

オーバードライブ

ハイフンが全角表記の初期型。ボードでは「完全に歪ませる用」

④

KORG / Pitchblack

チューナー

-

⑤

Eventide / PitchFactor

ピッチ・シフター

MicroPitchモード。ここからステレオ出力

⑥

Ernie Ball / VP JR F-Sugar Mod.

ボリューム・ペダル

ステレオ仕様。MONO側ポットをCLAROSTAT、STEREO側は国産(11kΩ程度)へ交換

⑦

strymon / TIMELINE

ディレイ

主にDIGITALモード。ここから2台のアンプへ分岐

コンプレッサー2台で歪みを4段階に分ける

このボードの核心は、ROSS Compressorを2台積んでいることです。歪みの段階は次の4つに整理されています。

  1. ①ROSS Compressorのみ

  2. ①+②ROSS Compressor

  3. ①+③ODー1

  4. ①+②+③

歪みをオーバードライブではなくコンプで作るという発想について、本人はこう説明しています。「ディストーションやオーバードライブなんかを使うと、強く弾いても、弱く弾いても、同じように歪んじゃう。でも、コンプやアンプ本体で歪ませると、弱く弾いた時にはクリーンな音が出るし、強く弾けばクランチになる。その変化がおもしろいんですよね」。

ピッキングの強弱で歪み量が変わる状態を保つ、という一点で機材の選択が一貫しています。アンプのセッティングで「ボリュームを6ぐらい」に設定するという話も、同じ考え方の延長線上にあります。

コーラスは使わず、±7セントのピッチ・シフトで代用

空間系の使い方も特徴的です。⑤PitchFactorをMicroPitchモードで使う理由を、本人はこう語っています。「僕はあんまりコーラスが好きじゃなくて。コーラスって、うねりが強すぎちゃうんですよ。だからコーラスの代わりにこれで±7セントくらいの揺れ方にして、ちょっとダブル・トラッキング的な音にするんです」。

なお③BOSS ODー1については、70年代後半から使用しており、これまでに4〜5台ほど入手したと紹介されています。ボードにはカポタスト、スライド・バー、ドライバー、イヤホン、そして弦(Ernie Ball製Hybrid Slinky #2222/.009〜.046)も収められていました。

2本のシグネチャーモデル──2020年のCustom Shopと2026年の日本製

鈴木茂のシグネチャーモデルは、2026年9月時点で2機種が発売されています。いずれも、あの1962年製フィエスタレッドがベースです。

項目

Custom Shop SHIGERU SUZUKI '62 STRATOCASTER JOURNEYMAN RELIC

Made in Japan Limited Shigeru Suzuki Stratocaster

発売

2020年(はっぴいえんどデビュー50周年記念)

2026年5月13日

コンセプト

オリジナル個体の再現

再現にとどまらず“理想の音”を反映

ボディ

2-Piece Select Alder

Alder

指板

7.25" Radius Slab Board Darker Rosewood

Rosewood

ピックアップ

Custom Shop Handwound Fat 60's Strat

Shigeru Suzuki Original Single Coil Stratocaster(通常比 約20%多巻き)

ポット

500kΩ

500kΩ

コンデンサー

ヴィンテージのバンブル・ビー(スプラグ製)

ヴィンテージのSPRAGUE "BLACK BEAUTY"

ブリッジ

6-Saddle American Vintage Synchronized Tremolo

6-Saddle Pure Vintage Synchronized Tremolo

仕上げ

JOURNEYMANレリック加工

ニトロセルロースラッカーを必要最小限の回数のみ塗装

価格

600,000円(税別)/803,000円(税込)※出典により表記が異なる

330,000円(税込)

どちらもアンダーコートにデザートサンドを敷き、その上にフィエスタレッドを吹くというオリジナルと同じ塗装構造をとっています。フィエスタレッドが剥げてくると下からデザートサンドが現れる仕組みです。

Custom Shop版の価格は、出典によって記載が異なります。デジマート・マガジンの製品ニュース(2020年5月1日)では600,000円(税別)、FenderNewsの記事末尾の製品情報では803,000円(税込)と案内されています。税別・税込の違いだけでは埋まらない差があるため、購入を検討する場合は取扱店に確認してください。

ピックアップの抵抗値でたどる「太さ」の調整

2機種の性格の違いは、ピックアップの抵抗値に端的に表れています。本人がインタビューで語った数値を並べると次のようになります。

対象

抵抗値

本人の説明

通常のフェンダー製ストラト用ピックアップ

約5.5kΩ/5kΩ台後半

基準となる値

オリジナルの1962年製(交換後)

約12kΩ

「倍以上の巻き数なんです」

Custom Shop版(2020年)

約6.3kΩ

巻きすぎると「ストラトっぽくない音」になるため減らした

Made in Japan版(2026年)

約9kΩ

12kΩまで試作したが「太すぎてフェンダーっぽくなくなっちゃった」

Custom Shop版では、ピックアップをファットにした分だけ高音の損失を抑えるため、ボリュームポットをオリジナルの250kΩから500kΩへ変更しています。日本製モデルも同様に500kΩを採用しています。

日本製モデルのピックアップについては、フェンダーの発表が「通常比で約20%ほど多く巻いた特別仕様」と説明しているのに対し、本人はインタビューで「結局9kΩぐらいにしましたね」と語っています。通常が5kΩ台後半という前提で20%増やした値とは一致しないため、本記事では巻き数と抵抗値をそれぞれの出典に紐づけて記載しています。

日本製モデルの開発について、本人は「カスタムショップとは違って、ビルダーさんと何度もお会いして打ち合わせができるので、今回は色や見た目だけではなく、音も僕の理想のものにしてもらったんです」と語り、オリジナルの弱点だった低域の少なさを改善した点を挙げています。塗色についても「カスタムショップのよりも、僕のオリジナルの初期の時の色に近いと思います」とのこと。

2本の使い分けについては、「僕はスライドの時にオープンチューニングにするので、一つはスライド用、一つはレギュラーチューニング用にして使い分けようかなと思っています」と構想を述べています。

日本製シグネチャーの流通状況(2026年9月時点)

Made in Japan Limited Shigeru Suzuki Stratocasterは限定生産モデルです。楽器検索サイトのデジマートに掲載されている出品を集計したところ、2026年9月14日時点で48件が確認できました。内訳は新品扱いが37件、アウトレット扱いが11件です。

指標

掲載価格(税込)

最安

275,000円

第1四分位

297,000円

中央値

319,000円

第3四分位

330,000円

最高

330,000円

上記はデジマート掲載時点の販売価格(売り手の提示価格)であり、実際の成約価格ではありません。また、買取価格は事業者が仕入れる側の価格であるため、これらの数値とは直接比較できません。集計には新品扱いとアウトレット扱いの両方が含まれており、新品37件だけを見ると中央値は330,000円、アウトレット11件では275,000円〜299,800円に分かれます。出品状況は日々変動します。

同じ集計の範囲では、2020年のCustom Shop版の出品は確認できませんでした。オリジナルの1962年製ストラトキャスターに相当する個体の相場についても、母数が確保できなかったため、本記事では実測にもとづく相場レンジを掲載していません。

『BAND WAGON』とストラトキャスター

1975年3月25日に発売されたソロ第1作『BAND WAGON』は、鈴木茂のギターを語るうえで外せない作品です。日本クラウンの公式ディスコグラフィによれば、1974年秋に単身渡米し、リトル・フィート、スライ&ザ・ファミリー・ストーン、サンタナ、タワー・オブ・パワーのメンバーらと制作されました。

録音の経緯は、2025年に行われた本人のトークイベントやインタビューで詳しく語られています。レコーディング期間は1974年10月28日からの約1ヶ月間。当初依頼していたミュージシャンを手配できず、サンフランシスコのDifferent Fur Studiosでダグ・ローチ(ベース)、グレッグ・エリコ(ドラム)との3人で4曲ほどをセッション。そこへタワー・オブ・パワーのデイヴィッド・ガルバルディ(ドラム)が加わり、キーボードにはドン・グルーシンとウェンディ・ハースが参加しています。7曲ほど録ったところでリトル・フィートのツアー帰還の連絡を受け、マルチテープを持ってロサンゼルスのクローヴァー・スタジオへ移り、ケニー・グラダニー(ベース)とリッチー・ヘイワード(ドラム)で「スノー・エキスプレス」「夕焼け波止場」を録音しています。

なお、はっぴいえんどの3作目『HAPPY END』のロサンゼルス録音はサンセット・サウンド・レコーダーズで行われており、こちらは『BAND WAGON』とは別のスタジオです。鈴木茂がクローヴァー・スタジオを知ったのは、この『HAPPY END』録音時にリトル・フィートの『Dixie Chicken』のセッションを見学したことがきっかけでした。

本人が選ぶ「一番ストラトの音を上手く使えた曲」

2026年のインタビューで、自身の曲のなかでストラトの魅力がもっとも出ているものを問われた鈴木茂は、迷わず「砂の女」を挙げています。「あれが自分の中では、一番ストラトの音を上手く使えたかなと思います」。『BAND WAGON』の1曲目です。

参加した他アーティストの作品については、荒井由実『COBALT HOUR』(1975年)を挙げ、こう語っています。「あれはオリジナルのフィエスタレッドで全部やっていますから、僕のあのストラトの音がよく分かると思います」。「卒業写真」を収録したアルバムの全編で、あの1962年製が鳴っているということになります。

その「卒業写真」のソロについては、別のインタビューで踏み込んだ説明をしています。使ったワウはJen Cry Baby Model 310.001。『風街ろまん』の頃に購入して以来50年以上使い続けている個体で、「ギアを浅めに調節して、踏み込んだ際にワウがきつくかからないようにした。人間の声みたいにするためにね」と可変幅を狭めた意図を語っています。同じワウは荒井由実『MISSLIM』(1974年)の「あなただけのもの」、『COBALT HOUR』の「雨のステイション」「少しだけ片想い」でも使われています。

音作りについてはこう述べています。「この音作りの肝は、まずピックじゃなくて素手で弾いていること。それから、アンプだね」。アンプはアルファのスタジオに置かれていたJBLスピーカー搭載のフェンダー・ツイン・リバーブで、本人いわく「いつしか、誰かが“鈴木茂専用”とかって名前を書いてくれて」という個体。「そのアンプを、ちょうど歪み始めるギリギリあたりで音作りするの」。ピックを使わず、歪みの手前にアンプを置き、強弱で音色を動かす。後年のペダルボードについて本人が語っている考え方と、同じ方向を向いた説明になっています。

鈴木茂のストラト観と、音作りの考え方

ギターを弾き始めたきっかけはベンチャーズでした。本人によれば、初期のリードギタリストであるボブ・ボーグルはジャズマスターやジャガーを使い、サイドギターのドン・ウィルソンがストラトだったため、「ストラトというのは、リズムカッティングに向いているギターぐらいに思っていたんです。細かいリズムのニュアンスが出せますしね」という認識だったといいます。

その見方を変えたのがジミ・ヘンドリックスでした。「ストラトキャスターをアンプにつないで、ズンと大きな音で歪ませて弾いたんですね。それを聴いて、ウワッと思いました。(略)リズムを刻むシャキシャキした音から、派手な暴力的な音まで、ジミ・ヘンドリックスによってストラトの幅が一気に広がっちゃったわけです」。トラフィックのデイヴ・メイスンについても、フレーズの覚えやすさと「過激ではなくて、滑らかで、心地よい」アームの使い方に惹かれたと語っています。

ストラトキャスターの魅力を一言でまとめるなら何か、という問いへの答えは「オールマイティ」でした。「きれいな音から派手な音、ワイルドな音まで、様々な音が出せます。繊細なリズムカッティングもできるし、コードを弾きながら歌うのも楽だし、なおかつソロを弾く時には、エフェクターとかで少し工夫すれば十分にいける。その幅広さがストラトの一番の魅力ですよね」。

ハムバッカーとの比較についても言及があります。「ハムバッキングの音は太くてメロディを弾く時はいいんだけど、コードを弾きながら歌う時に重くなりがちなんですよ。ストラトの音はバランスが良くて重くなり過ぎず、エッジがはっきりしているからリズムが際立つというか」。弾き語りとリズムギターを両立させる楽器としてストラトを選んでいる、という説明です。

機材から読み取れる3つの一貫性

ここまでの一次情報を並べると、機材選びに一貫した基準が見えてきます。

1. ピッキングの強弱で歪みが変わる状態を守る コンプ2台で歪みの段階を作り、オーバードライブは「完全に歪ませる用」に限定する。アンプ側もボリュームを上げて歪みを作る。「弱く弾いた時にはクリーンな音が出るし、強く弾けばクランチになる」という本人の言葉が、この設計の理由です。

2. 揺れものは浅く コーラスを好まず、PitchFactorのMicroPitchで±7セント程度に留める。ダブル・トラッキングに近い効果を狙うという方向性です。

3. 必要なら楽器そのものに手を入れる ストリングガイドの追加、ネックの削り込み、ピックアップの選定、コンプの内蔵まで、すべて演奏上の必要から出発しています。「ギターを弾く前にラジオとかを作っていたので、ある程度ですが電気的な知識もあって」という本人の言葉どおり、自分で判断して手を動かすタイプです。

よくある質問(FAQ)

鈴木茂のメインギターの年式は?

1962年製のフェンダー・ストラトキャスター(フィエスタレッド)です。1973年にロサンゼルスで購入したもので、本人は「1962年製で、買ったのは1973年だから11年の中古だったということですね」と語っています。2020年発売のCustom Shop版のモデル名に「'62」が入っているのも、この年式にちなんだものです。

使用している弦とゲージは?

ギター・マガジンの機材取材では、ペダルボードにErnie Ball製のHybrid Slinky #2222(.009〜.046)が収められていることが紹介されています。2026年発売の日本製シグネチャーモデルも、工場出荷時の弦は.009〜.046のニッケルプレーテッド・スチールです。

スライドギターは弾く?

弾きます。ペダルボードにはスライド・バーが常備されており、Fender Experience 2025ではオープンGチューニングでのスライドプレイが披露されました。本人も2本のシグネチャーについて「スライドの時にオープンチューニングにするので、一つはスライド用、一つはレギュラーチューニング用にして使い分けようかな」と語っています。

コーラスは使っている?

使っていません。「僕はあんまりコーラスが好きじゃなくて。コーラスって、うねりが強すぎちゃうんですよ」として、Eventide PitchFactorのMicroPitchモードで±7セント程度の揺れを作り、コーラスの代わりにしていると語っています。

シグネチャーモデルはどちらを選べばいい?

2020年のCustom Shop版はオリジナル個体の再現を、2026年の日本製モデルは本人が理想とする音の実現を狙ったモデルです。ピックアップの抵抗値はCustom Shop版が約6.3kΩ、日本製が約9kΩで、日本製のほうが低域を増やす方向に振られています。価格は日本製が330,000円(税込)です。いずれも限定的な生産のため、購入を検討する場合は流通状況の確認が必要です。

まとめ

鈴木茂の機材は、1973年にロサンゼルスで買った1962年製フィエスタレッドのストラトキャスターと、同じ日に買ったJBLスピーカー入りのDeluxe Reverbを軸に、50年以上かけて磨かれてきました。ストリングガイドの追加からネックの削り込み、ピックアップの選定、一時期はコンプレッサーのボディ内蔵まで、改造はすべて演奏上の必要から出発しています。

エフェクターはROSS Compressorを2台重ねて歪みを4段階に分け、コーラスの代わりに±7セントのピッチ・シフトを使う。アンプはノーマルチャンネルのトレブルとベースをゼロにしてボリュームを6付近まで上げる。いずれも「ピッキングの強弱で音が変わる状態を保つ」という一点に向かっています。

2020年のCustom Shop版、2026年の日本製シグネチャーは、その積み重ねを製品として定義し直したものです。Custom Shop版が約6.3kΩ、日本製モデルが約9kΩという数値の違いは、同じ1本を出発点にしながら狙いが異なることを示しています。日本製モデルについて本人が「音も僕の理想のものにしてもらった」と語っている点が、その差の理由です。どの機材を選ぶかという話の前に、本人の言葉が一貫して指しているのは「弾き方の強弱で音が変わる状態を残す」という一点でした。機材リストとあわせて読むと、その意図が見えてきます。

サウンドマニア編集部

楽器の購入ガイドや基礎知識を発信するサウンドマニア編集部です。ピアノ・ギターをはじめとした楽器選びや、メンテナンス・演奏に関する実用的な情報をわかりやすくお届けします。

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