
MIYAVIのギターは改造Fenderテレキャスター|アンプ3台・ペダルボード・Double Swords【2026年版】
サウンドマニア編集部/楽器の購入ガイドや基礎知識を発信するサウンドマニア編集部です。ピアノ・ギターをはじめとした楽器選…
MIYAVIの機材の核は、2016年に入手したFender Custom Shop製テレキャスターです。センターピックアップ・トレモロユニット・サスティナーを後付けした個体で、2020年には本人監修のシグネチャーモデル「MIYAVI Telecaster」がフェンダーからリリースされました(生産完了)。アンプは2023年のツアー時点でMarshall・Fender・ベースアンプの3台を同時に鳴らす構成、エフェクターはFree The Tone構築のシステムボードで、ソロ用ファズにPete Cornish NG-3が使われています。そして2026年3月には、本人が開発に関わった初のシグネチャーペダル「Double Swords」が発売されました。本記事では、Free The Tone公式が公開している2016年・2017年・2023年のボード構成、アンプの使い分け、Double Swordsの本人推奨セッティング、そしてMIYAVIサウンドの土台である「爪」まで、確認できた一次情報をもとに解説します。
MIYAVIの機材を理解する前提──三味線から生まれたスラップと「爪」
MIYAVIの機材選定を読み解くうえで最初に押さえるべきは、ギターそのものではなく何で弦を弾いているかです。ここを外すと、機材リストを揃えても音が近づきません。
スラップ奏法の源流は三味線
MIYAVIのスラップ奏法は、ベースのスラップをそのままギターに移植したものではありません。本人はJ-WAVE『GROOVE LINE』2022年3月28日放送回(記事公開は同年4月4日)で、その出発点をこう振り返っています。最初はピックで7弦ギターを弾いていたこと。海外で活動するうちに、西洋のギタリストと同じ弾き方では聴いてもらえないと感じ、日本人として気合の入ったことを探したこと。そして三味線をバチで弾くときのアタックをギターで出せたら面白いと考えたこと。
同じ対談では技術面の下地にも触れています。マーカス・ミラー、ラリー・グラハム、ルイス・ジョンソンといったベーシストの教則ビデオでスラップのテクニックを吸収しつつ、10代の頃からステージで披露するまで練習を重ねたとのこと。細かい三連符よりも「大振りで刀を振り回すような感じ」と本人が表現する大きなストロークは、この出自から来ています。
指へのダメージについても率直で、痛みがあることも、ちょいちょい流血していることも認めています。
(出典:J-WAVE NEWS「MIYAVI、独特のギター奏法で指は痛む? 本人に訊いた」)
ピックを使わない──爪がピックの代わり
MIYAVIはスラップ時だけでなく、通常のピッキングやストロークでもピックを使いません。かといってベースのように指の腹で弾いているわけでもなく、爪をピック代わりにしてアタック感を出しているとされます。
MIYAVI奏法の解説動画・連載を手がけるギタリストSHIMAGAKU氏によれば、同様のピッキング/ストロークを再現するには人差し指・中指・薬指の爪を指先から3〜4mm程度伸ばす必要があるとのこと。ただし鉄弦を激しく掻き鳴らすため、伸ばしただけの爪はすぐに削れたり割れたりします。
ギター演奏用ネイルの選択肢
クラシック/フラメンコ向けネイル(例:Kaina/ザ・ギタリスト)
特徴:光沢がなく色が自爪に非常に近い。塗るだけで済む手軽さ。楽器店で入手しやすい
注意点:金属弦では摩耗が早い
グラスネイル
特徴:非常に硬く分厚く耐久性が高い。素爪や通常のネイルでは得られないクリアでハッキリした音が出る
注意点:施術に手間と時間とコツが必要。価格も高め
(出典:オトノミチシルベ「どこよりも詳しいMIYAVIサウンド解体新書」SHIMAGAKU氏解説)
⚠️ 機材選びの前に、まずここです。どれだけ高価な機材を揃えても、爪のコンディションが整っていなければMIYAVIのアタック音は出ません。
ストラップの長さも計算されている
見落とされがちですが、MIYAVIはストラップの長さにもこだわっているとされます。基準は「立って弾いても座って弾いても、ギターの位置が変わらない長さ」。姿勢が前屈みにならず崩れにくく、座った状態でもストラップがギターを支えてくれる高さです。両手の自由度を最大化するためのセッティングといえます。
MIYAVIの使用ギター──テレキャスターと改造の履歴
MIYAVIとテレキャスターの関係は2015年に始まります。MIYAVIの15周年記念ギターのリリースによれば、新たなギターミュージックの可能性を求めてMIYAVIがフェンダーのテレキャスターを選んだのが2015年。そして翌2016年に、現在も使い続けているFender Custom Shop製の個体を入手しています。
Fender Custom Shop Telecaster(2016年〜)と改造の変遷
フェンダー公式のアナウンスによれば、このギターはアルバム『SAMURAI SESSIONS vol.3 - Worlds Collide』のレコーディングに使用され、以降さらなるカスタマイズを施しながら本人の理想を追求。ほぼすべてのレコーディングとステージをこの1本で行うほどの信頼を得ています。
ただしその中身は、通常のテレキャスターとは別物です。テレキャスターといえば2ピックアップ+ハードテイルブリッジのシンプルな構成が定番ですが、MIYAVIの個体には以下の改造が施されているとされます。
センターピックアップの増設──スラップ時の音色の核。テレキャスターには本来存在しない位置
トレモロユニットの搭載──Super-Vee Maverick。テレキャスター専用設計で、キャビティ加工は必要になるものの、大きなブリッジプレートの見た目とピックアップ位置を保ったままアーミングが可能
サスティナーの搭載──専用デバイスが弦を強制的に振動させ、通常では不可能な無限のロングサステインを実現。仕様上、ON時はリアピックアップが強制選択される
2018年、リアピックアップの換装──オリジナルのテレキャス用からSeymour Duncan「Little '59」へ
本人がインタビューで「邪道」という言葉を使うほどの改造ぶりで、テレキャスターらしさはもはやシェイプだけとも言われます。
興味深いのは、ピックアップの使い分けも時期によって変化している点です。
時期 | スラップ時のピックアップ |
|---|---|
〜2017年(アルバム『SAMURAI SESSIONS VOL.2』まで) | センター+リアのハーフトーン |
2018年(アルバム『SAMURAI SESSIONS VOL.3』)以降 | センターのみ |
SHIMAGAKU氏は、この変化について2018年のリアピックアップ換装によるものではないかと推測の形で記しています。
(出典:オトノミチシルベ「どこよりも詳しいMIYAVIサウンド解体新書」)
Fender MIYAVI Telecaster──シグネチャーモデルの全スペック
2020年11月20日、上記のCustom Shop製テレキャスターを元に、本人監修のもとMade in Japanラインで実現したシグネチャーモデル「MIYAVI TELECASTER®」が発売されました。価格は250,000円+税でした。
MIYAVI本人は本モデルについて、切れ味の鋭いカッティングと繊細なアーミング、長いブレスのメロディを弾けるサスティナーを全部いいとこ取りした新しいギターであり、「これ一本で、どこでも闘えます」とコメントしています(出典:ユニバーサル ミュージック/MIYAVI公式ニュース 2020年11月20日)。
Fender MIYAVI Telecaster スペック
項目 | 仕様 |
|---|---|
ボディ材/塗装 | アルダー/グロス・ポリエステル |
カラー | Arctic White |
ネック材/塗装 | メイプル/グロス・ウレタン |
ネックシェイプ | Miyavi "C" |
指板材/指板R | ローズウッド/9.5インチ(241mm) |
フレット | 21本/ミディアムジャンボ |
ポジションインレイ | ホワイトドット |
ナット | ボーン/幅1.650インチ(42mm) |
スケール | 25.5インチ(648mm) |
ネックピックアップ | サスティナー・ドライバー |
センターピックアップ | Pure Vintage '65 Gray-Bottom Single-Coil Strat(日本語表記では American Vintage '65 Stratocaster シングルコイル) |
ブリッジピックアップ | Seymour Duncan Little '59 |
ピックアップ・スイッチング | 5ウェイ・ブレード(1=リア/2=リア+センター/3=センター/4=センター+ネック/5=ネック) |
コントロール | マスターVolume/マスターTone/Intensity Control/サスティナーON-OFF/Fundamental・Harmonic・Blendスイッチ |
コントロールノブ | ナール加工フラットトップ |
ブリッジ | Super Vee Maverick |
ペグ | Fender ヴィンテージスタイル |
ピックガード | 1プライ・ブラック |
ハードウェア | ニッケル/クローム |
ケース | デラックス・ギグバッグ |
(出典:クロサワ楽器 Fender MIYAVI Telecaster 特設ページ掲載のスペック)
スペック表からは読み取りにくい設計上の特徴が3点あります。
1つめは、本体設計がかなりクラシカルなこと。 21フレット仕様で、アルダーボディ+メイプルネック+ローズ指板という木材構成、ヴィンテージスタイルのペグと黒の1プライ・ピックガード。最新機能を積みながら、土台はヴィンテージ・スタイルを踏襲しています。
2つめは、サスティナー関連のコントロールが3つあること。 効き具合を決めるIntensity Control、ON/OFFスイッチ、そしてFundamental・Harmonic・Blendを切り替えるモードスイッチが独立して用意されています。一般的なテレキャスターがマスターVolumeとToneだけなのに対し、操作系がかなり増えているのが分かります。
3つめは、ハーモニクスモードに関するメーカー注記があること。 フェンダー側は、アーティスト本人の好みのピックアップを搭載している関係で、ハーモニクスモード使用時にサスティナーが効きにくい場合があると明記しています。仕様であり不具合ではありません。
⚠️ MIYAVI Telecasterは生産完了モデルです。 販売店の商品説明では、一部パーツが製造元の関係で使用できなくなったことが理由とされています。新品の入手は在庫を持つ店舗に限られ、基本的には中古市場での探索が中心になります。
MIYAVI × TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.(15周年記念・15本限定)
MIYAVIの活動15周年を記念し、宮下貴裕によるブランド〈TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.〉とのコラボで15本限定製作されたフェンダー製オリジナルギターも存在します(2017年)。
すべてのパーツがソロイスト.によるオリジナル仕様で、ボディ側面にはカービングの施された継ぎ目のないレザーが埋め込まれ、15周年を記念したオリジナルデザインのコインが一周にわたり打ち込まれています。トレモロ機能を備えたテレキャスター・ブリッジプレートとフロントのサスティナーという、本人メイン機の特殊仕様をそのまま受け継いだ仕上がり。リアピックアップにはAmerican Vintage '64 Telecaster Pickupが採用されています。
(出典:MIYAVI 15th Anniversary 特設サイト掲載のリリース)
MIYAVIの使用アンプ──1人で複数のアンプを同時に鳴らす特殊構成
MIYAVIのアンプ構成は、ギタリスト1人分としてはかなり異例です。ギターアンプに加えてベースアンプを同時に鳴らす構成が、あの厚みの正体で、2016年時点では4台、2023年時点では3台がステージに並んでいます。
2016年ツアーファイナル時点の4台
MIYAVIのペダルボードを構築しているFree The Toneが、2016年10月10日に幕張イベントホールで行われた「MIYAVI Japan Tour 2016 "NEW BEAT, NEW FUTURE"」ファイナル公演の機材を公式サイトで公開しています。そこに記録されているアンプは以下の4台です。
機種 | 種別 |
|---|---|
Fender DeVille | ギターアンプ |
Fender Super-Sonic Twin | ギターアンプ |
Marshall 1959 | ギターアンプ |
AMPEG SVT-3Pro + SWR キャビネット | ベースアンプ |
同社の写真キャプションには、DROPTUNEでオクターブ下げたギター信号をベースアンプに送って鳴らしていると明記されています。ギター1本の信号を分岐し、片方をそのままギターアンプへ、もう片方をオクターブ下げてベースアンプへ送る──ギター1本の編成で低域まで埋める構成です。
(出典:Free The Tone 公式サイト・2016年11月28日掲載)
2023年 THE LAST ROCK STARS ツアー時点の3台
現在の構成に最も近い記録が、2023年3月にFree The Toneが公開したTHE LAST ROCK STARSツアーの機材紹介です。ここでは3台構成になっています。
機種 | 役割・備考 |
|---|---|
Marshall JCM2000 Dual Super Lead + 1960キャビネット | 中央に配置 |
Fender Twin Reverb-Amp | 左に配置。上にサブのJCM2000、さらにその上にRupert Neve Designs RNDI |
AMPEG SVT-3 PRO + tc electronic キャビネット | 右に配置 |
Twin Reverb-Ampに送られる信号は、RNDIというD.I.を経由してPAにも送られていると記載されています。アンプに送る信号をそのままラインでも分岐する設計です。
(出典:Free The Tone 公式サイト・2023年3月22日掲載)
Marshallの機種別使い分け
MIYAVIは2015年にテレキャスターへ持ち替えて以降、スラップ時の音色をクランチセッティングのMarshallで作っているとされます。ただし同じMarshallでも時期によって機種が異なります。
時期・用途 | 機種 |
|---|---|
2016年 Fire Birdツアーなど | Marshall 1959(俗にいうPlexi) |
以降のメイン | Marshall JCM2000(DSL) |
海外ツアーで稀に | Marshall JCM800 |
2023年のFree The Tone公式の写真キャプションでもJCM2000 Dual Super Leadが確認できるため、JCM2000がメインという観測は裏づけられています。
SHIMAGAKU氏はこれらに共通する印象として、低域のレスポンスが速くブライトであることを挙げています。逆にJCM900は低域がブーミーでもたつきやすくスラップのスピード感を表現しにくい、というのも同氏の個人的な印象として述べられているものです。
💡 セッティングのコツとして紹介されているのは、GAINを上げすぎず、MASTER VOLを上げ気味にしてパワー管でも歪みを作る方法。音が減衰していくと同時に歪みも弱くなっていくため、低域のスピード感を保ったまま歪ませられます。
(出典:オトノミチシルベ「どこよりも詳しいMIYAVIサウンド解体新書」)
FUZZ使用時はFenderアンプ+DI直出し
2015年のアルバム『THE OTHERS』以降、FUZZとWhammyを用いたソロ音色が聴けるようになります。ここがMIYAVIサウンドのもう一つの顔で、しかもMarshallとは別系統です。
時期 | FUZZ | アンプ |
|---|---|---|
〜2016年(Fire Birdツアーなど) | Z.VEX Fuzz Factory(ハンドペイント版) | Fender Super-Sonic Twin Combo |
2017年〜 | Pete Cornish DELUXE SERIES NG-3 | 65年式 Twin Reverb(黒) |
さらにアンプから音を出すことに加え、DI(ダイレクトボックス)を介してFUZZを通した音をそのままミキサーへ分岐することもあるとされます。つまりリスナーが聴いているのは「FUZZ→アンプ」の音と「FUZZ→DI直」の音がブレンドされたもの。なお2023年の構成でも、Fender Twin Reverb-Ampへ送られる信号がRupert Neve Designs RNDIを経由してPAにも送られることがFree The Tone公式に記載されており、Fender系統の音をラインでも客席に届ける設計は共通しています。
そしてFUZZ使用時はサスティナーもONにしているとのこと。サスティナーの仕様上、ON時はリアピックアップが強制選択されるため、FUZZ系統は自動的に「リアPU+Fenderアンプ」の組み合わせになります。
(出典:オトノミチシルベ「どこよりも詳しいMIYAVIサウンド解体新書」)
MIYAVIのエフェクターボード──Free The Tone構築システムの3世代
MIYAVIのペダルボードは、数多くのプロミュージシャンのシステムを手がけるFree The Toneが構築しています。同社の公式サイトには写真とキャプション付きで構成が公開されており、機材名まで特定できる一次情報になっています。公開されているのは2016年・2017年・2023年の3世代です。
2016年ツアー時点──2枚構成のボード
2016年10月の幕張公演時点では、ボードが2枚に分かれていました。コントローラーはFree The Toneが改造したProvidence PEC-2です。
右ボード(メイン)
Digitech WHAMMY
Future Impact
Fuzz Factory
empress Compressor
The Schaffer Replica
Ibanez TS-808HW
BOSS OC-3
左ボード
Eventide Time Factor ×2台
Free The Toneカスタム製 3 LOOP BOX
Free The Toneカスタム製 OUTPUT SELECTOR
接続・電源
ジャンクションボックス:Free The Tone JB-41S/JB-82S/JB-21
電源:Free The Tone PT-1D/PT-2/PT-3D
ケーブル:ソルダーレスケーブル SL-8S/SL-8L Pro
外部接続機器:SP-555、KAOSS PAD
特筆すべきはFree The Toneがカスタム製作したOUTPUT SELECTORで、これは2台のEventide Time Factorのどちらに信号を送るかを選択するためのユニットです。既製品では実現できない切り替えを、専用ユニットを作って解決しています。
(出典:Free The Tone 公式サイト・2016年11月28日掲載)
2017年11月末構築──以降の構成の原型
2017年11月末にFree The Toneで再構築されたボードが、以降の構成の原型です。コントローラーは引き続きFree The ToneがモディファイしたProvidence PEC-2。ボード右側から順に、Electro-Harmonix POG2、Pete Cornish NG-3、Eventide H9、The Schaffer Replica、Ibanez TS808HW、BOSS OC-3、Digitech Whammy、SONUUS Wahooが並びます。
機材 | カテゴリ | 公式キャプションに記載された役割 |
|---|---|---|
Electro-Harmonix POG2 | ポリフォニック・オクターバー | 記載なし(構成機材として掲載) |
Pete Cornish NG-3 | ファズ | 「叫ぶようなFUZZサウンド」に使用 |
Eventide H9 | マルチエフェクト(空間系) | 新規導入機材として紹介 |
The Schaffer Replica | ブースター | 構成機材として掲載 |
Ibanez TS808HW | オーバードライブ | 構成機材として掲載 |
BOSS OC-3 | オクターバー | 構成機材として掲載 |
Digitech Whammy | ピッチシフター | 構成機材として掲載 |
SONUUS Wahoo | フィルター/ワウ | 構成機材として掲載 |
Providence PEC-2 | スイッチャー | Free The Toneによるモディファイ品 |
Free The Tone JB-41 ×2 | ジャンクションボックス | マーシャルアンプ/フェンダーアンプ/ベースアンプ/PAの4系統へ分岐 |
Free The Tone PT-1D/PT-2 | パワーサプライ | 電源供給 |
Free The Tone ソルダーレスケーブル/CM-3510 | ケーブル類 | ボードの小型化・軽量化に寄与 |
(出典:Free The Tone 公式サイト・2018年1月5日掲載)
2023年 THE LAST ROCK STARS ツアー時点──最新の公開構成
2023年3月公開のボードは、2017年構成をベースに2点が入れ替わっています。
2017年11月末 | 2023年 |
|---|---|
Ibanez TS808HW | BOSS BD-2(weed mod) |
SONUUS Wahoo | SONUUS Voluum |
POG2、NG-3、H9、The Schaffer Replica、BOSS OC-3、Digitech Whammy、コントローラーのPEC-2、JB-41×2、PT-1D/PT-2、CM-3510という骨格は変わっていません。ワイヤレスレシーバーには、この時点ではSENNHEISER EM2050が使われていました。
そして、この記事でいちばん誤解されやすい部分がここです。
📌 ベースアンプへ送るオクターブ下は、POG2ではなくdrop系ペダルで作られている
Free The Tone公式の2023年のキャプションには、ボードの一番右に置かれたDigitech dropがギター信号の1オクターブ下を得るために使われ、Lehle P-Split IIとCOUNTRYMAN TYPE85 D.I.を経てベースアンプとPAへ送られる、と明記されています。2016年のキャプションでも、オクターブ下げはDROPTUNEによるものと記載されていました。POG2はボード上のポリフォニック・オクターバーとして別に搭載されています。
(出典:Free The Tone 公式サイト・2023年3月22日掲載)
ノイズ対策の設計思想が読み取れるポイント
Free The Toneのキャプションで見逃せないのが、ACアダプターの配置に関する記述です。ボードの一番左上にACアダプターが横向きに取り付けられているのは、OC-3やTS808HWの信号ラインにハムノイズが乗るのを最小限に抑えるためだと明記されています。
💡 電源部はノイズの発生源になりやすく、ギターからボードへの入力はノイズに弱いハイインピーダンス信号です。ハイインピーダンスのラインと電源系を可能な限り遠ざけるという設計思想が、MIYAVIのボードにも徹底されています。自作ボードを組む際にそのまま真似できる、実用性の高い知見です。
Donner × MIYAVI「Double Swords」──本人監修の初シグネチャーペダル
2026年、MIYAVIの機材まわりで最も大きな動きがこれです。2025年にDonnerのクリエイティブ・ディレクターに就任したMIYAVIが共同開発したシグネチャーペダル「Double Swords」が、2026年1月のNAMMショウでお披露目され、同年3月16日から出荷されました(予約は2月26日開始)。
歪み系の「Rage Breaker」と空間系の「Dimension Weaver」という対を成す2台構成で、どちらも3in1仕様。価格はいずれも15,999円(税込)です。
Rage Breaker(ブースター/ファズ/オーバードライブ)
項目 | 仕様 |
|---|---|
コントロール | ゲイン/インプット/アウトプット(ブースター)、ゲート/インプット/トーン/サステイン(ファズ)、インプット/トーン/ゲイン(オーバードライブ)、+3dBゲイン(DIPスイッチ1)、ブライト・スイッチ(DIPスイッチ2) |
入出力 | インプット、アウトプット |
電源 | DC9Vセンターマイナス(300mA/アダプター別売) |
外形寸法 | 195.5(W)×64.5(D)×44(H)mm |
重量 | 280g |
価格 | 15,999円(税込) |
本人の解説によれば、収められた3つの歪みはMIYAVIサウンドの核になっているセクション。ディストーションではなくオーバードライブを選んでいるのは、ヘヴィでなくてもコシがあり存在感のある音が好きだからで、ロングトーンではファズでアプローチすることが多いとのこと。ブースターについては「1音を弾いた時の圧と衝撃」を大切にしているため、潰れすぎない範囲で弦の鳴りを限界まで押し上げてくれる存在として重要だと語っています。それぞれのサウンドは自分が使っている機材をベースにしている、とも明言しています。
本人の推奨セッティング
ブースター:ツマミは12時を基本に、Gainは上げめ、Outputは下げめ。ブースター単体でエッジを立たせてスラップ・バッキングを行なうことも多い
ファズ:Gateがポイント。開発中に4つ目のツマミとして急遽追加された経緯がある
オーバードライブ:一度12時に合わせてから微調整。Gainでバッキングとリードを使い分ける
Dimension Weaver(リバーブ/ディレイ/コーラス)
項目 | 仕様 |
|---|---|
コントロール | ドゥエル/トーン/ミックス(S-バーブ)、レベル/タイム/リピート(ディレイ)、レベル/レート/デプス(コーラス) |
入出力 | インプット、アウトプット |
電源 | DC9Vセンターマイナス(300mA/アダプター別売) |
外形寸法 | 195.5(W)×64.5(D)×44(H)mm |
重量 | 285g |
価格 | 15,999円(税込) |
リバーブはデジタル、ディレイとコーラスはアナログ回路という構成です。本人はコンセプトについて、赤と青=動と静という二面性から発想し、自分の人生や音楽の中にある「静」の部分を空間系で表現したと語っています。
本人の推奨セッティング
S-VERB:Dwell(ディケイ・タイム)は9時頃、Mixは1時方向でウェット成分を上げる。Toneはフラットにしてアンプ側で調整
DELAY:Level(ドライ/ウェットのバランサー)を大きく右へ。ソロで音の「尻尾」を長くするイメージ
CHORUS:Levelをややウェット寄り、Depthを2時方向
(出典:ギター・マガジンWEB「【動画連動】Donner × MIYAVIシグネチャー・ペダルDouble Swordsが見参!」2026年3月11日)
💡 Double Swordsは1台15,999円(税込)。各セクションの音は本人が普段使っている機材をベースに作られたと語られているため、実機と同じ型番を追いかける前に音の方向性を確かめる用途にも向きます。
MIYAVIサウンドの再現ガイド──「予算別」ではなく「系統別」で組む
MIYAVIの音は、単一のセットアップから出ているわけではありません。スラップ系統とFUZZ系統という2つの独立した信号経路を持っており、再現を考えるならまずこの構造を理解する必要があります。
📌 MIYAVIサウンドの2系統
スラップ時:センターピックアップ → Marshallクランチ + オクターブ下げた音をベースアンプへ
FUZZ時:リアピックアップ(サスティナーON)→ FUZZ → Fenderアンプ + DI直出しをミキサーへ
(この2系統の整理は、オトノミチシルベ掲載のSHIMAGAKU氏による「音作りまとめ」に基づきます)
ギター側で最優先すべき条件
MIYAVIモデル以外のギターで近づけるなら、優先順位は次のとおりです。
センターピックアップがあること──スラップ時の音色に不可欠。ここが最優先
サスティナー搭載──FUZZ系統の再現に必要。非搭載機の場合は、音色によってピックアップを使い分けることである程度カバーできる
トレモロユニット──アーミングを使うフレーズの再現に
結果的に、サスティナーとトレモロユニットを搭載したSSH配列のギターが近道になりそうです。テレキャスターである必要は必ずしもなく、ストラトタイプでも条件は満たせます。
エフェクターの導入順序
実機構成をそのまま揃えるのは現実的ではないため、役割から逆算した優先順位で考えます。
オクターブ下の生成(ベースアンプへ送る低域の要)──MIYAVIの実機:Digitech drop
ソロ用のFUZZ──MIYAVIの実機:Pete Cornish NG-3(以前はFuzz Factory)
ピッチシフター(FUZZと組み合わせるソロ音色)──MIYAVIの実機:Digitech Whammy
オーバードライブ──MIYAVIの実機:BOSS BD-2(weed mod/2017年構成ではIbanez TS808HW)
空間系──MIYAVIの実機:Eventide H9
ブースター──MIYAVIの実機:The Schaffer Replica
1を最優先に置いたのは、Free The Tone公式が2016年・2023年のいずれの構成でも、オクターブ下げた信号をベースアンプへ送っていると記録しているためです。ギターアンプ側の歪みを似せても、この系統がなければ同じ帯域は出ません。
なお2・4・6にあたるファズ/オーバードライブ/ブースターは、Double SwordsのRage Breaker 1台に同じ3種類が収められています。
⚠️ 機材を揃える前に、まず爪です。 MIYAVIの音の大部分は、爪をピック代わりにしたアタックとスラップ・プル・タッピングという奏法そのものから生まれています。機材はあくまで土台であり、爪のコンディションと奏法の精度が伴わなければ、実機と同じペダルを並べても近づきません。
MIYAVI Telecasterの入手ガイド
流通状況
前述のとおりMIYAVI Telecasterは生産完了モデルです。2026年9月16日にデジマートで「MIYAVI Telecaster」を検索した時点では、該当する出品は確認できませんでした。過去には島村楽器アミュプラザ博多店のアウトレットや、ソニックス(浜松)の中古(2023年3月掲載)といった掲載例がありますが、いずれも掲載ページ上で売約済みとなっています。
本記事では、実測にもとづく中古相場レンジを掲載していません。出品数が統計的な母数に達しないためです。価格の代わりに、個体を見極めるための判断材料を以下に挙げます。
中古で購入する際のチェックポイント
MIYAVI Telecasterは一般的なテレキャスターと構造が異なるため、通常の中古チェック項目に加えて確認したい箇所があります。
サスティナーの動作確認──ON/OFFスイッチと、Fundamental/Harmonic/Blendのモード切り替えが正常に機能するか。電子回路を含むため、動作品かどうかは価格に直結します。なお本モデルは、アーティスト本人の好みのピックアップを搭載している関係で、ハーモニクスモード使用時にサスティナーが効きにくい場合があるとメーカー側が注記しています(=仕様であり不具合ではありません)
Super-Vee Maverickブリッジの状態──アームの取り付け、可動、チューニングの戻りを確認。テレキャスター専用の特殊ユニットのため、部品調達は一般的なブリッジより難しくなります
サスティナードライバーの状態──素人作業の痕跡がないか確認したい箇所です
電装・配線周り──サスティナー回路を備えるため、端子の腐食や配線の劣化がないか
ネックの反り・フレットの減り──ボルトオン構造のため、トラスロッドの調整余地を確認すれば一般的なメンテナンスの範囲で対応できます
生産完了に伴い一部パーツの供給が難しくなっているとされるため、「壊れていても直せる」前提で考えないほうが安全です。可能なら試奏し、サスティナーが確実に動作する個体を選んでください。
購入チャネル別のメリット・デメリット
楽器店(中古)
メリット:実物を試奏できる。動作保証・返品対応がある場合が多い。アクティブ回路の動作確認をしてもらえる
デメリット:店舗マージンが乗るため割高になりやすい。地方では在庫が限られる
フリマアプリ
メリット:出品数が多く、価格交渉が可能
デメリット:出品者の楽器知識が不均一。サスティナーの動作説明が不十分なケースがある
オークション
メリット:相場より安く落札できる場合がある
デメリット:実物確認不可。入札競争で想定以上の価格になることも
個人売買(SNS等の直接取引)
メリット:中間手数料が最小限。直接交渉で柔軟な条件設定が可能
デメリット:トラブル時の保証がない。配送破損リスク
配送破損リスクに対しては、ハードケースでの発送を条件にし、ネックジョイント部やヘッド部に十分な緩衝材を入れた梱包を求めてください。アクティブ回路搭載機は、輸送中の振動で配線にストレスがかかる可能性もあります。
⚠️ 法規制に関する注意点
個人の不用品売却に古物商許可は不要ですが、継続的に転売目的で楽器を売買する場合は古物商許可が必要です。継続的な売買で一定額を超える利益が出た場合は確定申告の対象となります。要件は個々の状況によって異なるため、判断に迷う場合は税務署や専門家にご確認ください。
MIYAVIの機材に関するよくある質問
Q1:MIYAVIはピックを使いますか?
使いません。スラップだけでなく、通常のピッキングやストロークでもピックを使わず、爪をピック代わりにしているとされます。人差し指・中指・薬指の爪を指先から3〜4mm程度伸ばし、演奏用のネイルで摩耗から保護するのが一般的な対処法です。MIYAVIのアタック音の正体はここにあります。
Q2:Fender MIYAVI Telecasterは今も買えますか?
新品は生産完了しており、販売店の説明では一部パーツが製造元の関係で使用できなくなったことが理由とされています。在庫を持つ楽器店での購入か、中古市場での探索が中心になりますが、2026年9月時点でデジマートに出品はありませんでした。サスティナーとSuper-Vee Maverickブリッジという特殊仕様を含むため、動作確認ができる楽器店経由での購入が安心です。
Q3:MIYAVIのスラップ奏法に向いたギターの条件は?
最優先はセンターピックアップの有無です。MIYAVIは2018年以降、スラップ時にセンターピックアップのみを使用しているとされます。加えてサスティナーとトレモロユニットがあればFUZZ系統の音色にも対応でき、結果としてサスティナー+トレモロ搭載のSSH配列が条件を満たします。MIYAVIモデル以外でも、この3条件を満たすギターであれば練習・再現に十分活用できます。
Q4:MIYAVIはKemperなどのデジタルモデラーを使っていますか?
本記事の調査範囲では、KemperやLine 6 Helix等のアンプモデラーをメインに据えている記録は確認できませんでした。Free The Tone公式が公開している機材写真では、Marshall・Fender・ベースアンプを実機で同時に鳴らすアナログ構成が確認できます。デジタル機材としてはEventide H9やDigitech Whammy、Digitech dropなどが個別のエフェクトとしてボードに組み込まれています。
Q5:MIYAVI本人が監修したエフェクターはありますか?
あります。2026年3月に発売されたDonnerとの共同開発モデル「Double Swords」がそれで、歪み系のRage Breakerと空間系のDimension Weaverの2台構成です。MIYAVIは2025年にDonnerのクリエイティブ・ディレクターに就任しており、それぞれのサウンドは自分が使っている機材をベースにしていると本人が語っています。
Q6:使用弦のゲージや弦高は公開されていますか?
本記事の調査範囲では、使用弦のブランド・ゲージ、弦高の具体的な数値を確認できる公開情報は見つかりませんでした。裏付けが取れないため本記事では推測を記載しません。
まとめ──MIYAVIの機材を理解しサウンドに近づくために
MIYAVIの機材を一言でまとめるなら、「センターピックアップ・サスティナー・トレモロを後付けしたFenderテレキャスター+Marshall・Fender・ベースアンプという複数系統のアンプ+Free The Tone構築のシステムボード」です。2023年のツアー時点では、この3台構成が公式に記録されています。2015年のテレキャスターへの移行、2016年のCustom Shop製個体の入手、2018年のリアピックアップ換装、2020年のシグネチャーモデル化、そして2026年の自身監修ペダル「Double Swords」まで、機材は一貫して「三味線的なアタックをギターで鳴らす」という目的に向かって最適化されてきました。
再現を目指すなら、まず爪とネイルを整え、センターピックアップのあるギターを用意し、オクターブ下をベースアンプへ送る系統を組む──この順番です。シグネチャーモデルは生産完了となりましたが、条件を満たすギターは他にもあります。機材リストを追いかけるより、なぜその機材が選ばれたのかという構造を理解することが、MIYAVIサウンドへの一番の近道です。
ℹ️ 本記事は2026年9月時点で確認できた公開情報に基づいています。MIYAVIの使用機材はツアー・レコーディングごとに変更される可能性があり、記載のペダルボード構成もFree The Toneが公開した各時点のものです。中古の流通状況も市場の需給により変動しますので、購入検討時は最新の出品状況をご確認ください。
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サウンドマニア編集部
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