
升秀夫のドラム機材|CANOPUSゼルコバとdw・Craviotto【2026年版】
サウンドマニア編集部/楽器の購入ガイドや基礎知識を発信するサウンドマニア編集部です。ピアノ・ギターをはじめとした楽器選…
BUMP OF CHICKENのドラマー・升秀夫の使用機材を、メーカー公式のエンドーサー情報、本人がメーカー公式サイトに寄せたコメント、そして機材専門メディアが現場で撮影した取材記事という、出典をたどれる資料だけで整理します。CANOPUSのゼルコバスネア、2019年のライブで確認されたdwのキットとCraviottoのソリッドスネア、そしてアーティスト公式インタビューで本人が明かしたサンプラーとスネアの配置まで、根拠のある範囲で見ていきます。
升秀夫とは──BUMP OF CHICKENのドラマー
公式プロフィールに記載されていること
升秀夫(ます ひでお)は、BUMP OF CHICKENでドラムを担当しています。BUMP OF CHICKEN公式サイトのPROFILEページには、ローマ字表記「HIDEO MASU」、生年月日1979年8月10日、しし座、A型と記載されています。公式プロフィールに書かれているのはここまでで、出身地や学歴は掲載されていません。
本人が語る自分のプレイ──「淡々とリズムキープ主体」
升秀夫のドラムがどういうものかを、本人の言葉で確かめられる資料があります。2024年のツアー「Sphery Rendezvous」を振り返ったBUMP OF CHICKEN公式サイトのインタビュー(2025年12月公開)で、升秀夫は他のメンバーのパフォーマンスについて聞かれた際、自分は淡々とリズムキープ主体のプレイが多いので、メンバーが仕掛け合っているところを見て熱くなる、という趣旨の答え方をしています。
同じインタビューでは、ツアー中の体調管理についても、ストレッチしてウォームアップするくらいで特別なことはしていない、当たり前のことをしっかりできることが大事だと語っています。この2つの発言からは、技術の誇示ではなく再現性に重心を置いた自己認識が読み取れます。
升秀夫の使用機材──メーカー公式と現場取材でたどれる範囲
升秀夫の機材は、メーカー公式のアーティストページ、本人のコメント、写真付きの現場取材という3種類の資料から確認できます。ただし、それぞれ記述された時点が違います。時点を混ぜると実態から離れてしまうため、下の表では機材と一緒に「いつの情報か」を明示しています。
出典をたどれる升秀夫の機材情報
カテゴリ | メーカー/モデル | 情報の時点 | 根拠となる資料 |
|---|---|---|---|
エンドースメント | CANOPUS(カノウプス) | エンドーサー一覧に掲載(一覧ページは2026年9月時点) | CANOPUS公式 国内エンドーサー一覧・個別ページ |
スネアドラム | CANOPUS Zelkova Snare Drum 6.5" | 2015年4月公開のコメント時点で「ライブのメイン」 | CANOPUS公式に掲載された本人コメント |
ドラムキット | dw(ツアーロゴとネームロゴ入り) | 2019年8月20日のライブ | 機材専門メディア『STAGE』の機材紹介(写真付き) |
スネアドラム | CRAVIOTTO NAMM SHOWプライベートリザーブ ソリッドスネア | 2019年8月20日のライブでメイン | 同上 |
スネアドラム(サブ) | CRAVIOTTO ソリッドシェル(メインとは別個体) | 2019年8月20日の撮影時にセット | 同上 |
スネアドラム(それ以前) | スチール製スネア | 「BFLY」まで使用 | 同上 |
サンプラー | 機種名の記載なし(スネアの左側に設置) | 2024年ツアー「Sphery Rendezvous」 | BUMP OF CHICKEN公式インタビュー |
※この表は、メーカー公式サイト・本人のコメント・写真付きの現場取材のいずれかで裏づけが取れた機材のみを掲載しています。
CANOPUSのエンドーサー掲載と「Accessory Only」表記
ドラムメーカーCANOPUS(カノウプス)の公式サイト「国内エンドーサー」一覧には、「升秀夫/BUMP OF CHICKEN」が掲載されています。個別のエンドーサーページも用意されています。
ここで見落とせないのが、掲載欄に添えられた「Accessory Only」という付記です。CANOPUSの一覧ページでは、エンドーサーによって「Hardware Only」「Snare Drum Only」といった注記が付く場合があります。注記の意味はページ上で説明されていませんが、升秀夫の欄に付いているのは「Accessory Only」です。
つまり、CANOPUS公式が掲載しているのは「エンドーサーであること」と「その付記」までです。個別のエンドーサーページには、使用しているドラムキットやスネアの記載はありません。メインキットのメーカーを断定するには、別の一次情報が必要になります。
ゼルコバスネア──本人が語る選定理由
升秀夫の機材で、本人の言葉が最も具体的に残っているのがCANOPUSのZelkova Snare Drum(ゼルコバ スネアドラム)です。CANOPUS公式サイトに掲載された升秀夫のコメント(2015年4月公開)では、初めて叩いた瞬間の印象を、エッジがすごく立っているのに耳に痛くない音で、ハイも太いところも出ていると表現しています。
特徴的なのは、その評価軸がバンドのレコーディング現場に根ざしていることです。ギターを何本も重ねたあとでも、最初にドラムとベースを録ったときにイメージした通りの音域が残ってくれる「強さ」がある、という言い方をしています。大きな会場では生音の強さを自分の耳で直接感じながら叩きたいので、ここ一番というときはゼルコバでないとだめだ、とも語っています。
このコメントの時点では、ライブのメインに6.5インチを使っていると本人が明言しています。CANOPUS公式の製品ページに掲載されているのは14インチ×5インチ(HS-1450)と14インチ×6.5インチ(HS-1465)で、升秀夫が選んだのは深いほうということになります。
2019年のライブセット──dwのキットとCraviottoのソリッドスネア
実際のステージセットを写真付きで記録した資料として、機材専門メディア『STAGE』が2019年8月20日の新木場STUDIO COAST公演(BUMP OF CHICKEN TOUR 2019 aurora ark)を取材した機材紹介記事があります。
同記事によれば、このときのキットはdw(ドラムワークショップ)で、ツアーロゴとデザインのネームロゴが入っていたとされます。メインのスネアは、2017年のNAMM SHOW用に企画されたものを入手したというCRAVIOTTOのNAMM SHOWプライベートリザーブのソリッドスネアで、撮影時は調整中だったため別のCRAVIOTTOソリッドシェルがセットされており、メインとは音の響き方が違うと本人が説明したことも記されています。
さらに同記事は、スネアの変遷にも触れています。「BFLY」まではスチール製のスネアを使用しており、「PATHFINDER」以降にこのソリッドスネアへ移ったとされます。Craviotto Drum Company公式サイトは、同社の看板を one-ply solid shell(単板のソリッドシェル)と説明しています。ゼルコバも単板ですが、こちらは木をくり抜いて胴にする製法です。同じ単板でも、一枚板を曲げるCraviottoとくり抜きのゼルコバでは作り方が異なります。
ライブでの再現設計──サンプラーの配置とミュートの着脱
機材のリストよりも、升秀夫のドラムの考え方がはっきり出ているのが、前述のBUMP OF CHICKEN公式インタビューにある演奏面の話です。ここでは、音源とライブのあいだをどう埋めているかが具体的に語られています。
升秀夫によれば、レコーディングでサンプル音源と生ドラムの2種類の音を使う曲は多く、それをライブでどう再現するかをいつも考えているとのことです。サンプラーを叩くこともあります。アルバム『Iris』収録の「青の朔日」については、生ドラムでやったほうがいいと判断した一方で、曲の途中で音色も変えたかった、と説明しています。
音色を変えたいときの通常手段は、スネアを2つ置くことです。ところがこのツアーではスネアの左側にサンプラーを置いていたため、2台目のスネアを置くスペースがありませんでした。そこで升秀夫が採ったのが、1台のスネアにミュートを着脱して2音色を作るという方法です。サンプル音源にあたる箇所ではスネアにミュートをし、生ドラムの箇所ではそれを外して叩く。これを曲中で行き来させることで、2種類の音源を疑似的に出していたと語っています。
💡 機材を足さずに制約を解いた例 スネアを増やせない → ミュートの着脱で代替する、という発想です。本人も「たぶんあんまり気づかれてない」と前置きしたうえで、自分では発明だと思っていると話しています。手持ちの1台をどう使い切るかという点で、機材を増やす前に試す価値のあるアプローチです。
「淡々とリズムキープ主体」という自己認識と、この工夫は矛盾しません。目立つフレーズを足すのではなく、曲が要求している音を出すために手元の条件を組み替えるという方向に手間がかかっている、ということです。
Zelkova Snare Drumのスペックと、くり抜き胴スネアの見方
升秀夫が「ここ一番」に選ぶと語ったゼルコバスネアは、CANOPUSのフラッグシップにあたるモデルです。同じ音を目指すうえでも、中古で単板胴のスネアを探すうえでも、まず構造を押さえておくと判断がしやすくなります。
CANOPUS Zelkova Snare Drum 公式スペック
項目 | 内容 |
|---|---|
品番 | HS-1450(14"×5")/HS-1465(14"×6.5") |
シェル | One-Piece Hollowed Zelkova 14mm(完全くり抜き単板胴・ケヤキ・14mm) |
標準ラグ | Brass(回転式高さ調整ラグ/±2mm) |
フープ | Die-Cast/8 |
スネアワイヤー | Vintage Snare Wire(CPSL-ZL14NP) |
エアホール | エアーベント金具なし |
価格(税込) | HS-1450/HS-1465ともに280,170円 |
※CANOPUS公式のZelkova Snare Drum製品ページの記載に基づきます(2026年9月時点で確認)。
くり抜き胴だからこそ、状態の見方が変わる
CANOPUS公式の製品ページは、くり抜き単板胴のリスクを自社で明言しています。円筒形というドラムシェルの形状は単板くりぬきドラムにとって非常に割れやすいという宿命を持つ、という書き方です。そのうえで、球面体のシェル形状で力を分散させる工法や、シーズニングを経て含水量を9%に調整する乾燥工程によって、収縮や割れを抑えていると説明しています。
この説明は、中古で単板胴スネアを見るときのチェック項目にそのまま置き換えられます。公式が挙げている構造上の性質から導けるのは、次の4点です。
シェルの割れ・ヒビ──公式が「割れやすいという宿命」と書いている以上、単板胴では最優先の確認項目になります。外側だけでなく内側も見てください。ゼルコバの場合、貫通穴部がオイルフィニッシュのみで断面を確認できる仕様になっています。
テンションボルトが素直に入るか──公式ページは、木胴が湿度の影響で常に収縮膨張し、湿度が高ければ胴の直径は長くなり、低ければ短くなると説明しています。CANOPUSのチューブラグは振動効率を優先したソリッド構造でテンションボルトを受ける「へそ」がないため、収縮膨張が起きるとボルトを付ける際に障害が出る場合がある、と明記されています。実機では必ずボルトを回して確認してください。
回転式高さ調整ラグの有無と動作──上記の問題に対応するため、ゼルコバスネアにはラグのセンターポールを回して±2mmの範囲で高さを調整できるラグが標準装備になっています。年式によって仕様が異なる可能性があるため、この機構があるか、実際に動くかを確認しておくと安心です。
保管環境の履歴──含水量を管理して出荷される楽器である以上、購入後の保管環境の影響を受けます。エアーベント金具を意図的に付けていないという設計思想も、シェルへのストレスを避けるためだと公式は説明しています。販売者に保管状況を確認できるなら、聞いておいて損はありません。
価格について
新品価格は、CANOPUS公式がHS-1450/HS-1465ともに280,170円(税込)と掲載しています。一方、本記事では実測にもとづく中古相場のレンジは掲載していません。単板くりぬき胴のスネアは同じ型番でも個体ごとの状態差が価格に直結するため、レンジだけを見ても判断材料になりにくいためです。価格の代わりに、上の4点を実機で確認する手順を優先してください。なお2点目と3点目はCANOPUSのラグ構造に固有の話なので、他メーカーの単板胴スネアを見るときは1点目と4点目を中心に確認してください。
スネアの時系列については、資料によって書かれていることが食い違います。CANOPUS公式の本人コメント(2015年4月公開)はその時点でゼルコバ6.5インチをライブのメインとしており、『STAGE』(2019年8月取材)は「BFLY」までスチール製を使い「PATHFINDER」以降ソリッドスネアに移ったと記しています。両者を1本の年表につなぐ資料はないため、本記事でも「いつの情報か」を併記するにとどめます。
升秀夫の機材に関するよくある疑問
升秀夫のメインのドラムキットはどこのメーカー?
A:CANOPUS公式のエンドーサーページには、使用キットの記載はありません。公開されている資料からわかるのは、CANOPUS公式のエンドーサー一覧に「Accessory Only」の付記付きで掲載されていること、そして2019年8月20日の公演ではdwのキットが使われていたこと(機材専門メディア『STAGE』の写真付き取材)の2点です。時期によってセットは変わるため、キットのメーカーを一つに断定するのは避けたほうが正確です。
スネアはゼルコバとCraviottoのどちらを使っている?
A:確認できる資料は時点が異なります。CANOPUS公式に掲載された本人コメント(2015年4月公開)では、ライブのメインはゼルコバの6.5インチ。『STAGE』の取材(2019年8月)では、メインはCRAVIOTTOのNAMM SHOWプライベートリザーブのソリッドスネアで、サブにも別個体のCRAVIOTTOがセットされていました。どちらか一方が正しいのではなく、時期による違いとして理解するのが妥当です。
シグネチャーモデルは販売されている?
A:CANOPUS公式サイトのシグネチャー・スネアドラムには、Jonathan Pinson、Harvey Mason、Mel Taylorの各モデルが掲載されています(2026年9月時点)。廃盤モデルをまとめた「Signature Model History」も含めて、升秀夫のシグネチャーモデルは掲載されていません。ゼルコバスネア自体は品番HS-1450/HS-1465として一般に販売されている製品です。
ライブでサンプラーは使っている?
A:使っています。2024年のツアー「Sphery Rendezvous」について語った公式インタビューで、サンプラーを叩くこともあること、そのツアーではスネアの左側にサンプラーを置いていたことを本人が明かしています。インタビューでは機種名までは語られていません。
まとめ
升秀夫の機材について、出典をたどって確認できるのは次の範囲です。CANOPUSのエンドーサーとして「Accessory Only」の付記付きで公式に掲載されていること。2015年時点ではゼルコバスネアの6.5インチをライブのメインに据えていたこと。2019年8月のライブではdwのキットとCraviottoのソリッドスネアを使っていたこと。そして2024年のツアーでは、スネアの左にサンプラーを置いた結果2台目のスネアが置けず、ミュートの着脱で音色を切り替えていたこと。
機材リストとしては地味に見えるかもしれません。ただ、ゼルコバにせよCraviottoにせよ、本人が語っている選定理由が「バンドの音の中で自分の音が残るか」という一点に向いていることは共通しています。「淡々とリズムキープ主体」と自認しながら、曲が要求する音のために手元の条件を組み替える。機材選びの考え方として参考にできるのは、モデル名よりもこの部分です。
サウンドマニア編集部
楽器の購入ガイドや基礎知識を発信するサウンドマニア編集部です。ピアノ・ギターをはじめとした楽器選びや、メンテナンス・演奏に関する実用的な情報をわかりやすくお届けします。


