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今剛のギターはProvidence sD-102RVS|Axe-Fx IIIとFM9の音作り【2026年版】

今剛のギターはProvidence sD-102RVS|Axe-Fx IIIとFM9の音作り【2026年版】

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サウンドマニア編集部/楽器の購入ガイドや基礎知識を発信するサウンドマニア編集部です。ピアノ・ギターをはじめとした楽器選…

今剛のシグネチャーギターはProvidence sD-102RVS、そして2025年8月に本人が語ったサウンドシステムはFractal Audio Systemsの Axe-Fx III と FM9 です。寺尾聰「ルビーの指環」から宇多田ヒカル「Automatic」まで、日本の歌謡・ポップス史に残るヒット曲を支えてきたスタジオ・ギタリストは、20Uのラックシステムからデジタル・プロセッサーへと機材を移し替えながら、一貫して「スイッチひとつで音色を切り替える」ことを追求してきました。本記事では、メーカー公式スペックと本人が公開した音作りの手順を軸に、機材の全体像、システムの変遷、そして中古市場での入手性の実測結果までを整理します。

今剛とは──日本のポップスを支えてきたスタジオ・ギタリスト

今剛(こん つよし)は1958年2月23日生まれ、北海道釧路市出身のギタリストです。ザ・ベンチャーズの影響で小学校5年生からギターを始め、15歳でプロを目指して上京。1977年にPANTA&HALでデビューし、同時期にスタジオ・ミュージシャンとしての活動を開始しました(Wikipedia「今剛」、Guitar☆Man)。

ギター以外にスティール・ギターの名手としても知られ、ベース、マンドリン、ウクレレの演奏技術にも秀でていると紹介されています。後述するFractal Audioのプリセット製品にペダルスチール用の音色が含まれているのは、この幅広さの反映といえます。

プロフィールとキャリアの歩み

年

主な出来事

1958年

2月23日、北海道釧路市に生まれる

小学5年

ザ・ベンチャーズの影響でギターを始める

15歳

プロを目指して上京

1977年

PANTA&HALでデビュー。同時にスタジオ・ミュージシャンとしての活動を開始

1979年

林立夫・松原正樹らとともにPARACHUTEを結成(1982年まで)

1980年

1枚目のソロアルバム『STUDIO CAT』を発表

2009年

2枚目のソロアルバム『2nd ALBUM』を発表。収録曲「From Into the Grey Sky」で第16回日本プロ音楽録音賞ベストパフォーマー賞を受賞

2010年

Battle Cryを結成

2011年

井上鑑・山木秀夫・髙水健司とともに井山大今を結成

2013年

教則映像『今剛 スタジオ・ライヴ&ギター・インストラクション』(アトス・インターナショナル)

出典:Wikipedia「今剛」(HMV、Guitar☆Man、CDJournal等を典拠として記載)

代表的な参加作品と活動

井上陽水、矢沢永吉、西城秀樹、宇多田ヒカル、角松敏生、福山雅治など、数多くのアーティストのツアーおよびレコーディングに参加しています。演奏が特定できる代表例として挙げられるのが、寺尾聰「ルビーの指環」と宇多田ヒカル「Automatic」です。映画『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』の劇伴にも参加しています。

PARACHUTEでツインギターを組んでいた松原正樹は、2016年2月に逝去しました。

参加作品の多くはクレジットが公開されていないため、本記事では出典で確認できた楽曲のみを挙げています。参加曲数についても、公表された総数を示す資料が見当たらないため具体的な数字は記載していません。

シグネチャーギター Providence sD-102RVS──公式が「Desperado」と呼ぶ1本

Providenceの公式サイトは、エレキギター製品一覧の筆頭にsD-102RVSを「Tsuyoshi Kon Signature Model」として掲載しています。同ページは「常に最高のパフォーマンスを要求される“プレーヤーズ・プレーヤー”今剛。その今剛の傍につねにあるシグネーチャーモデルがDesperado® sD-102RVSです」と記しており、これが今剛の機材を語るうえでの出発点になります(Providence公式:エレキギター製品一覧)。Providence公式サイトのARTISTS欄にも、今剛(Tsuyoshi Kon)が掲載されています。

sD-102RVSの公式スペック

項目

仕様

ボディ

ライトアッシュ 2ピース

ネック

メイプル 1ピース/400R

指板

インディアン・ローズウッド

フレット

Jim Dunlop #6105

スケール

648mm

ペグ

Gotoh SG381MG-T

ブリッジ

Wilkinson VS-100

ピックアップ

J.M.Rolph '59LP PAF Style/Tapped ×2

ピックガード

ミント 3プライ

コントロール

ボリューム×1、トーン×1

回路

VITALIZER-G1 VZ-G1回路

スイッチ

CRL 3ウェイ、コイルタップ×2、Vitalizer ON/OFFスイッチ

ジャック

Switchcraft

カラー

ラメ塗装の複数色を設定

標準価格

オープンプライス

出典:Providence公式:エレキギター製品一覧(2026年9月11日確認)

公式ページは、J.M.Rolphがこのモデルのためだけに特別に製作した'59 LP PAF Style/Tappedを搭載し、音の立ち上がりに優れ中音域の豊かな芯のあるサウンドが特徴だと説明しています。あわせて、長年にわたり今剛本人のギターのセットアップおよびメンテナンスを手がける志村昭三による最終調整により、細部にいたるまで今剛と全く同じセッティングに仕上げた、とも記されています。

STタイプのボディにハムバッカー2基という組み合わせに、コイルタップとローインピーダンス変換回路が加わる構成です。ボディ材は2ピースのライトアッシュで、公式が挙げる特徴も「音の立ち上がり」と「中音域の芯」でした。スタジオ・ワークで求められる持ち替えの少なさを、1本あたりの音色の選択肢で補う方向の設計といえます。

Vitalizer G1とコイルタップ──本人が語る使い方

このギターの核心はVitalizer G1です。Providenceが独自開発したローインピーダンス変換回路をギター内蔵用に改良したもので、一般的なバッファーやプリアンプのように音を色づけせず、信号の劣化やレベル低下を防ぐ役割を担います。

本人はシグネチャーモデル発表時のインタビューで、実際の使い方をこう語っています。

僕はVitalizer Gを常に入れっぱなしです。どっちにしろ良い音がするんですけど、やっぱりOFFにすると、パッシブの音になりますよね。フラクタル・オーディオみたいなシステムと相性がいいんです。これくらいの規模で弾いているとあんまり変わらないかもしれないけど、大きな会場とかならONにしたほうが良い感じです。それからタップ・スイッチはフロントがシングルで、リアはハムの状態が多いかな。

── デジマート・マガジン「今剛 meets Providence」2014年9月26日

ここで注目したいのは、Vitalizer Gの導入理由として「フラクタル・オーディオみたいなシステムと相性がいい」と述べている点です。ギター側でローインピーダンス化しておくことが、後段のデジタル・プロセッサーへ信号を送る前提と結びついている。ギター本体とサウンドシステムが別々に選ばれているのではなく、ひとつの設計思想でつながっていることがうかがえます。

同じインタビューでは、本人所有の個体について「これと同じのが4本ぐらいあって、それぞれ微妙に音は違いますけど、基本的にスペアとして入れ替えてもまったく問題ない」とも語られています。市販モデルについても「今自分が使っているのと全然変わらないよ。市販品と自分のが混じっていてもわからないぐらい」という評価が示されました。

Deceiverの試作第1号器から始まったProvidenceとの関係

sD-102RVSは突然生まれたモデルではありません。デジマート・マガジンの同特集によれば、Providenceがギター本体の製作に参入したのは2005年で、ブランド・プロデューサーの奥野猛氏によって当初「Deceiver」と名付けられたそのギターは、試作第1号器から今剛に愛用されていたとされます。試行錯誤は8年間に及び、ギター・テクニシャンの志村昭三氏との再会をきっかけにProvidence Guitarとして再出発した、という経緯が記されています。

そしてsD-102RVSは、Deceiverの今剛モデル「DP-01JM/59D」とほぼ同型のSTタイプで、2ピースのライトアッシュ・ボディ、ローズウッド指板のメイプル・ネックといった基本スペックを継承したモデルだと説明されています。見た目の変更点はヘッド・デザインとサイド・ジャックの採用でした。

2005年 Providenceがギター製作に参入。ブランド名は「Deceiver」。試作第1号器から今剛が使用

Deceiver期 今剛モデル「DP-01JM/59D」が生まれる。約8年間の試行錯誤

2014年 Providence Guitarとして再出発。DP-01JM/59Dの基本スペックを継承した「sD-102RVS」がシグネチャーモデルとして発売

2026年9月時点 sD-102RVSはProvidence公式のエレキギター製品一覧に掲載されている

セットアップを担当する志村昭三氏について、今剛は「どこをどういじっているのかわからないけど、すごく良い音になっちゃうんですよね」「ちょっと魔法使いみたいな人なんです」と評しています。市販のsD-102RVSも志村氏が最終調整を担当する点が、公式・インタビュー双方で強調されています。

aS-102RSF「Shozo S Model」──80年代から使われる1本の系譜

Providenceのラインナップには、もう1本、今剛に関わるモデルがあります。aS-102RSF「Shozo S Model」です。公式ページは、このモデルについて次のように説明しています。

80年代、当時より神と言われるギタリスト今剛と、ギターセットアッパーの第一人者 志村昭三が幾度も手を加え熟成させ完成されたと言われる逸品。それは今も常に今剛のかたわらにあり数多のセッションで威力を発揮し続けていつつも、その詳細はベールに包まれていました。

── Providence公式:エレキギター製品一覧

つまりaS-102RSFは、今剛が80年代から使い続けているとされる1本を、志村昭三氏の監修のもとで現代仕様にリアレンジして製品化したモデルという位置づけです。もとになった楽器そのもののスペックは公開されていないため、詳細は明らかになっていません。製品版はライトアッシュ2ピース・ボディ、メイプル1ピース・ネックに、タップ対応のカバード・ハムバッカーを2基搭載し、2ボリューム・1トーンという構成です。

ここで注意しておきたいのは、Providence公式がsD-102RVSを「今剛の傍につねにある」、aS-102RSFのもとになった楽器を「今も常に今剛のかたわらにあり」と、どちらも同じように紹介している点です。公式情報のうえでは、どちらか1本が「メイン」と規定されているわけではありません。

Providenceの「Heartbreaker」シリーズ(aH-105RSC、pH-202RSC/SSなど)は、公式ページで「今剛が愛用するHeartbreakerモデルのボディースタイル」を踏襲した製品として紹介されています。これらは今剛の使用機材そのものではなく、ボディ形状を共有する別モデルです。

サウンドシステムの変遷──20UラックからAxe-Fx III/FM9へ

アンプ・システムについては、推測を挟む必要がありません。2025年8月に公開された本人へのQ&Aで、変遷が直接語られています(オカダインターナショナル/CUSTOM AUDIO JAPAN「Voice from 今剛」)。

インタビュアーの質問文が、そのまま変遷の要約になっています。かつては20Uのラックシステムを使用し、そこからFractal Audio SystemsのAxe-Fx II、AX8へ移行し、現在はAxe-Fx IIIとFM9を使用している、という流れです。

ラック時代 20Uのラックシステム → デジタル移行期 Fractal Audio Systems Axe-Fx II/AX8 → 2025年8月時点 Fractal Audio Systems Axe-Fx III/FM9

一貫しているのは「切り替え」の追求

機材が20UラックからフロアユニットまでまるごとDigital化されても、目的は変わっていないと本人は述べています。

基本的にやろうとしてる事はいまも同じで、スイッチ1つで複数のエフェクターが切り替わって、瞬時にガラッと音色が変えられるというのを追求してます。

Fractal ⅡからⅢ、AX-8からFM9と進化して、やれる事の範囲が広がり、切り替わる速度が飛躍的に早くなりました。おかげで以前のように切り替わるタイミングを逆算して16分音符早めにフットスイッチ踏んだりする必要が無くなったのでより一層プレイに集中できるようになりました。

── Voice from 今剛(2025年8月)

「切り替わるタイミングを逆算して16分音符早めにフットスイッチを踏む」という記述は、スタジオ・ミュージシャンの現場がどれほどシビアかを端的に示しています。機材更新によって得られたものとして本人が挙げているのは音色の変化ではなく、切り替え速度でした。

2014年時点で使用されたシステム

移行期の具体的な構成としては、2014年のデジマート・マガジン特集の記録が参考になります。同記事のプロフィール欄には、試奏の際にFractal Audio SystemsのAxe-Fx IIプリアンプ、Amcronのパワーアンプ PSA-2、Mesa/Boogieのスピーカー・キャビネットで組まれたサウンド・システムを使用した、と記されています。

これは取材時の試奏システムとして記録されたものであり、常用リグと断定できる記述ではありません。ただし「プリアンプ部にAxe-Fx、パワーアンプとキャビネットは実機」という構成は、ラックからデジタルへ移行する過渡期の典型的な組み方であり、変遷の一断面として読み取れます。

FM9 MARK II Turbo by 今剛──本人のプリセットを収めた特別仕様機

2025年、Fractal Audio Systemsの国内代理店であるオカダインターナショナルから、今剛が実際に使用しているプリセットをプリインストールした特別仕様機が発売されました。

項目

内容

製品名

FM9 MARK II Turbo by 今剛

価格

394,900円(税込)

JANコード

4571220048357

通常版との差

今剛がツアーやレコーディングをはじめ数多くの現場で実際に使用しているプリセットをプリインストール

参考:通常版

FM9 MARK II Turbo 385,000円(税込)

国内代理店

株式会社オカダインターナショナル

出典:オカダインターナショナル:FM9 MARK II Turbo(2026年9月11日確認)

代理店ページは、エレキギターだけでなくアコースティックギター、ペダルスチール用のプリセットを含む点を特徴として挙げています。前述したマルチ楽器奏者としての側面が、そのまま製品構成に反映されている形です。

プリセット単体でも入手できる

すでにAxe-Fx IIIやFM9を所有している場合は、プリセットライブラリ単体を購入できます。

項目

内容

製品名

CUSTOM AUDIO JAPAN Axe-Fx III & FM9 presets by 今剛

価格

9,900円(税込)

収録数

128プリセット

内容

アコースティックギター用、ペダルスチール用を含む

備考

プリセットネームの使用は株式会社アミューズの承認を得ている

出典:オカダインターナショナル/CUSTOM AUDIO JAPAN「TUYOSHI KON PRESET」(2026年9月11日確認)

同ページには本人のコメントが掲載されており、「福山雅治さんのツアーやレコーディングをはじめ、数多くの現場で実際に使用しているサウンド」であり、「これまでのキャリアの中で培ってきたギターサウンドの集大成とも言えるライブラリー」だと説明されています。プリセット名の使用について所属事務所の承認が明記されている点からも、現場のセッティングがそのまま収録されていることがうかがえます。

足元の定番──Providence VELVET COMP VLC-1とシグネチャー版VLC-1TK

システムが入れ替わっても足元に残り続けてきた、と紹介されてきたペダルがあります。Providenceのコンプレッサー「VELVET COMP VLC-1」です。Real Soundの記事は、このペダルについて「彼の足下に、必ずと言っていいほど存在し続けるコンプレッサーペダル」と記述しています(Real Sound、2018年6月3日)。同記事が書かれたのは2018年であり、それ以降の足元の構成について公開された記録は見当たりません。

2017年には、Providenceブランド20周年とVLC-1の累計5,000台突破を記念して、シグネチャーモデル「VLC-1TK」が発売されました。

項目

内容

製品名

Providence VELVET COMP VLC-1TK

発売日

2017年11月24日

生産数

完全数量限定 250台

コントロール

LEVEL、SUSTAIN、ATTACK

筐体

全面クロームメッキ加工(レギュラー版はブルー)。フットスイッチ・プロテクターはゴールド

内部・端子

ブラック基板を採用。入出力ジャックは金メッキ接点

LED

マゼンタ色。電池電圧が約7V以下になると暗くなり交換時期を知らせる

サイズ/重量

115(D)×72(W)×50(H)mm/約250g(電池含まず)

消費電力

DC9V 約4mA(エフェクトON時)

付属品

ナンバー入り特別認定書、本体裏蓋に本人の直筆サイン

価格

オープン

出典:デジマート・マガジン「【Providence/VLC-1TK】」2017年11月21日

本人はVLC-1TKについて「もともとVLC-1は音がキレイで気に入っているんだけど、このVLC-1TKはさらに音がクリアになったし、本当に生々しいというか、リアルなサウンドがグッと迫ってくる感じが凄くいいね」とコメントしています。

コンプレッサーの役割は、音量のピークを抑えて粒を揃えることにあります。歌の後ろで鳴り続けるギターに求められる性質と、この機材が足元に置かれ続けてきたという記述は、無理なく結びつきます。ただし本人がその理由を語った記録は見当たらないため、ここは読み方のひとつにとどめておきます。

一次情報で継続的な使用が確認できたペダルはVELVET COMP VLC-1のみです。ほかのペダルについては公開された記録が見当たらないため、本記事では列挙していません。

今剛の音作り──本人が公開したプリセット構築の手順

2025年のQ&Aで、今剛はプリセットを組む手順、EQの考え方、リバーブの使い分け、そして「音作りで最も大切なもの」を具体的に語っています。Fractalユーザーでなくとも応用できる内容です。

プリセットを組む順序

Fractal ⅢとFM9になってからはまずinputとoutputを両端に置いて両端を繋ぎます。その次に左からamp→cabi→EQの順に並べて基本的な感じを作ります。それから右半分の所に空間系のeffect blockを並べていきます。例えば、chorus→delay→reverbみたいな感じです。それから微調整を繰り返して曲の雰囲気に寄せて行きます。

── Voice from 今剛(2025年8月)

先に信号経路の骨格を通し、アンプとキャビネットとEQで土台を決め、そのあとに空間系を足す。本人は順序の理由までは述べていませんが、土台が固まる前に空間系へ手を出さないという手順そのものは、機材を問わず持ち帰れる部分です。

100Hz前後の共鳴とEQ

本番直前までEQを調整している理由について、本人はこう答えています。

ライブハウスのような比較的小さなハコでスピーカーキャビネットを鳴らす場合はステージの作りや材質による低域の共鳴に気を使います。特に100Hz前後の膨らみはアンサンブルに大きく影響しますし、ギターの音自体のヌケも悪くなるので重要なポイントだと考えています。

Fractal ⅢやFM9になってからはTuner Modeにすると周波数が表示されるのでスペクトラムアナライザーとか使わなくても簡単にその帯域を特定してEQできるのでとても重宝しています。

── Voice from 今剛(2025年8月)

チューナー表示の周波数を使って問題の帯域を特定する、という手法は、専用の測定機材を持たないプレイヤーでもそのまま真似できます。ステージで低域が膨らむと感じたら、その音のピッチを確認し、対応する周波数をEQで削る。手順としては明快です。

リバーブの使い分け

Reverbは曲の雰囲気に大きく影響するので使い方によっては最強のエフェクトだと思います。少人数でのアンサンブルの時にはもの足りないところを補ってくれます。リズムカッティングなどには短めのRoom系、ギターソロには長めのHall系やPlate系といった具合に曲中で変えたりする事は良くあります。

── Voice from 今剛(2025年8月)

カッティングには短いRoom系、ソロには長いHall系やPlate系。しかもこれを曲中で切り替える。冒頭の「スイッチひとつで瞬時に音色を変える」という話と、この使い分けは直結しています。プリセットとシーンの切り替え速度が重要になる理由が、ここで具体的に見えてきます。

音作りで最も大切なのはOutput Level

「プリセットの制作=音作りでいちばん大切なのは何か」という問いへの回答が、このQ&Aで最も示唆に富む部分です。

Output Level です。

その曲の中、もしくはセットリストの中で1番盛り上がって最大の音量になる部分のLevelを最初に決めて、そこから引き算して他の曲のバランスを取って行くと作りやすいです。

DistortionやCrunchよりCleanの方がPeak成分が多いのでLevelを沢山喰います。DigitalはClipに弱いので要注意です。

── Voice from 今剛(2025年8月)

歪みの種類やキャビネットの選択ではなく、出力レベルの設計が最優先だという回答です。しかも手順が具体的で、セットリスト全体のピークを先に決め、そこから引き算していく。歪ませたサウンドよりクリーンのほうがピーク成分が多くレベルを消費する、という指摘も、デジタル機材でクリップに悩んだ経験があれば思い当たるところでしょう。

音作りに悩むプレイヤーへの助言

ただやみくもにプリセットを作ろうとしてもうまく行かないと思います。もし題材となる曲があれば、その曲で自分はどのようなプレイをしたいのか?なんて事をイメージしながら音作りをすれば、歪み具合やトーンの感じは曲に合っているか? エフェクトは多過ぎないか? Soloがあればバッキングとのバランスはどのくらいだろうか? ブレイクがあるからDlyのon/offはあった方が良いな…といった具合にやるべき事が見つけやすいですよ!

── Voice from 今剛(2025年8月)

また、公開されたプリセット群について「各プリセットに大きな違いは無いと思われるかも知れませんが、実はEQの設定やディレイやリバーブ設定が微妙に異なります」と述べ、その微妙な差がアンサンブルへの影響とギターの抜けに作用していると説明しています。128本のプリセットが並ぶ意味は、音色のバリエーションの数ではなく、現場ごとの微調整の記録だということです。

今剛のサウンドに近づくための進め方

同じ機材を揃えても、同じ音にはなりません。ギターの個体差、セットアップ、演奏する部屋、そして演奏者のタッチが音を決めます。以下は「方向性をたどるための出発点」として読んでください。

ルート1:プリセットから入る

今剛の場合、他の多くのギタリストと事情が違います。本人が実際の現場で使っているセッティングそのものが製品として販売されているためです。Axe-Fx IIIまたはFM9を所有しているなら、プリセットライブラリ(9,900円・税込)を導入すれば、現場で使われているセッティングをそのまま読み込めます。これから機材を導入するなら、プリセットをプリインストールしたFM9 MARK II Turbo by 今剛(394,900円・税込)という選択肢があります。

本人はプリセットの扱いについて「バックアップを取ればいつでも戻せるので、大胆に弄くり回して”自分の音”を見つける手がかりにしていただけると嬉しいです」と述べています。そのまま使うことではなく、分解して学ぶことを想定した言葉です。

ルート2:ギターから入る

sD-102RVSはProvidence公式の現行ラインナップに掲載されています。ただし後述するとおり、中古市場での流通は本記事の調査時点では確認できませんでした。

サウンドの方向性を押さえるなら、スペック上の要点は3つに整理できます。

  1. アッシュ・ボディ+ハムバッカー2基:公式が挙げる特徴は「音の立ち上がりに優れ、中音域の豊かな芯のあるサウンド」です。木材の種類から音を推し量るより、この記述を手がかりに試奏で確かめるほうが確実です。

  2. コイルタップ:本人はフロントをシングル、リアをハムで使うことが多いと語っています。1本でシングル的なカッティングとハムバッカーのリードを行き来する発想です。

  3. ローインピーダンス化:Vitalizer G1は常時ONというのが本人の使い方です。デジタル・プロセッサーに信号を送る前提でギター側を設計している、という考え方自体が再現の要点になります。バッファーやローインピーダンス変換を検討する価値はここにあります。

ルート3:足元から入る

予算の面で手をつけやすいのがコンプレッサーです。シグネチャー版VLC-1TKは、レギュラー版VLC-1の特別仕様として企画されたモデルでした。そのVLC-1について、ブランドを「Providence」に指定してキーワード「VELVET COMP」でデジマートを検索したところ、2026年9月11日時点の掲載は7件。内訳は新品3件(いずれも掲載価格28,600円)と中古4件(14,850円から17,380円)でした。一方VLC-1TKは250台の数量限定品です。

使用機材の入手性──デジマート実測データ

「Providenceのギターは中古で手に入るのか」という疑問に答えるため、実際にデータを取得しました。推定ではなく、検索結果の件数を数えた結果です。

調査方法

楽器検索サイト「デジマート」のエレクトリックギター・カテゴリで、ブランドを指定して全ページの掲載情報を取得し、商品IDで重複を除外したうえで、各出品に付与された状態区分(新品/中古/アウトレット等)を集計しました。調査日は2026年9月11日です。

調査結果

検索条件

掲載総数

「中古」と明示された出品

その掲載価格

ブランド:Providence

95件

4件

139,800円/140,000円/220,000円/228,000円

ブランド:Deceiver

3件

3件(全件)

168,000円/198,000円/218,000円

キーワード:sD-102

ギター本体は1件(他はケース類)

0件

該当なし

デジマート掲載情報を2026年9月11日に取得・集計。掲載総数には、新品・アウトレットのほか、状態区分が判別できない出品も含まれます。金額はいずれも掲載価格であり、成約価格ではありません。

読み取れることは3点です。

  • sD-102RVSの中古は、調査時点で1件も確認できませんでした。掲載されていたのは新品1件のみです。シグネチャーモデルを中古で狙う戦略は、現実的とはいえません。

  • Providenceブランド全体でも、中古と明示された出品は95件中4件にとどまりました。同ブランドの流通は新品が中心です。

  • 前身ブランドのDeceiverは掲載3件がすべて中古で、価格は168,000円から218,000円でした。ただし母数が3件では市場の傾向とは呼べません。

本記事が相場レンジを掲載しない理由

本記事では、実測にもとづく中古相場レンジを掲載していません。中央値や四分位数を意味のある形で提示するには十分な母数が必要ですが、上表のとおり該当件数が一桁にとどまるためです。少数の出品から「相場は◯万円〜◯万円」と書けば、それは統計ではなく印象になります。代わりに、件数と掲載価格をそのまま示しました。

中古で探すときの判断材料

価格の目安が示せない以上、判断の手順を持っておくほうが実用的です。Providence系のギターを中古で検討する場合、次の点を確認してください。

確認項目

着眼点

Vitalizer回路の動作

スイッチのON/OFFで音が変化するかを実際に確認する。電装系を内蔵するモデルのため、配線まわりの状態も見ておきたい

コイルタップの動作

フロント・リアそれぞれのタップ・スイッチが機能するかを個別に確認する

ブリッジとペグ

アーミング後のチューニング復帰。パーツが交換されている個体では、公式スペックと異なる場合がある

ネックとフレット

順反り・逆反りとトラスロッドの残量、フレットの摩耗量を確認する

シリアルと年式

Deceiver期とProvidence期でブランド名が異なる。前身ブランド名義の個体は仕様が個別に異なる可能性がある

出品ブランド表記

「Providence」と「Deceiver」で検索結果が分かれる。両方を確認しないと候補を取りこぼす

実機を試奏できる楽器店を経由すると、これらの確認を店側に依頼できます。個人間取引では動作確認と返品条件の扱いが出品者ごとに異なるため、高額な個体ほど確認の手間を惜しまないほうが安全です。

法的な留意点:自分が使っていた楽器を手放すだけであれば古物商許可(転売目的で中古品を継続的に売買する際に必要な公安委員会の許可)は不要ですが、転売目的で継続的に中古楽器を売買する場合には許可が必要です。また、売却によって年間20万円を超える所得が生じた場合は確定申告(雑所得)の対象となります。いずれも2026年9月時点の制度にもとづく記載です。

よくある質問

今剛のシグネチャーモデルはありますか?

あります。ギターはProvidence sD-102RVS(Tsuyoshi Kon Signature Model)で、Providence公式のエレキギター製品一覧に掲載されています。エフェクターはProvidence VELVET COMP VLC-1TK(2017年発売、250台限定)。さらにFractal Audio SystemsのFM9 MARK II Turbo by 今剛は、本人のプリセットをプリインストールした特別仕様機です。

現在のメインアンプは何ですか?

2025年8月公開の本人へのQ&Aでは、Fractal Audio SystemsのAxe-Fx IIIとFM9を使用していると語られています。同じQ&Aで、20UラックからAxe-Fx II/AX8を経てこの構成に至った経緯も述べられています。

今剛と同じ音を出すには何から手をつければよいですか?

Axe-Fx IIIまたはFM9を所有しているなら、本人が現場で使用しているプリセットライブラリ(CUSTOM AUDIO JAPAN Axe-Fx III & FM9 presets by 今剛、9,900円・税込)をそのまま読み込めます。所有していない場合は、本人が語っている音作りの手順──アンプとキャビネットとEQで土台を作り、空間系は最後に足す、出力レベルを最初に設計する──を、手持ちの機材で実践することから始められます。

sD-102RVSは中古で手に入りますか?

2026年9月11日のデジマート調査では、中古の出品は確認できませんでした。掲載されていたのは新品1件のみです。前身ブランドであるDeceiver名義の個体は中古で3件が掲載されていたため、Deceiverでの検索もあわせて行うと候補が広がります。

教則映像は入手できますか?

『今剛 スタジオ・ライヴ&ギター・インストラクション』が2013年にアトス・インターナショナルから発売されています。現在の流通状況については、販売各社の在庫情報をご確認ください。

まとめ

今剛の機材は、公式情報と本人の発言で骨格をたどれる、比較的珍しいケースです。シグネチャーギターはProvidence sD-102RVS。前身ブランドDeceiverの試作第1号器から続く関係が製品化されたもので、セットアップは長年のパートナーである志村昭三氏が担当しています。足元にはProvidence VELVET COMP VLC-1が定位置を占め、2017年にはシグネチャー版VLC-1TKが250台限定で発売されました。

そしてサウンドシステムは、20UラックからAxe-Fx II/AX8を経て、Axe-Fx IIIとFM9へ。本人が語る移行の理由は音色ではなく切り替え速度でした。「スイッチひとつで瞬時に音色を変える」という目的が一貫している以上、機材が入れ替わっても方向性はぶれていないことになります。

もっとも実用的な収穫は、本人が公開した音作りの手順でしょう。アンプ・キャビネット・EQで土台を組み、空間系は最後に足す。ライブハウスでは100Hz前後の共鳴をチューナー表示で特定して削る。カッティングには短いRoom系、ソロには長いHall系やPlate系。そして最も大切なのはOutput Levelで、セットリストのピークを先に決めてそこから引き算する。ここに挙げたどれも、Fractalを持っていなくても実践できます。

機材の型番を知ることはゴールではありません。ある機材が選ばれた理由をたどれば、自分の現場で何を選ぶべきかも見えてきます。今剛の機材遍歴は、その手本としてよくできた教材だといえます。

サウンドマニア編集部

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