SOUNDMANIA
伊藤大地のドラムはShirai Keet|開発協力から機材選びまで【2026年版】

伊藤大地のドラムはShirai Keet|開発協力から機材選びまで【2026年版】

投稿日: 更新日:

サウンドマニア編集部/楽器の購入ガイドや基礎知識を発信するサウンドマニア編集部です。ピアノ・ギターをはじめとした楽器選…

伊藤大地は1980年生まれのドラマーで、インストバンドSAKEROCKの元メンバーであり、現在はグッドラックヘイワ、サンフジンズ、ハシケントリオでの活動と、細野晴臣・星野源・真心ブラザーズ・EGO-WRAPPIN'らのサポートを並行して続けています。使用するドラムキットとしては、愛知県豊橋のシライミュージックが手がける「Shirai Keet(シライキート)」の所有と使用が、メーカー公式に記録されています。さらに製品ページには、開発に協力したドラマーとして伊藤大地の名前が掲載されています。

この記事では、キートガッキ(シライミュージック)の製品ページと開発発表、所属事務所NOTE Incの公式プロフィール、そして音楽ナタリーに掲載された本人の言葉をもとに、伊藤大地のドラムキットと機材の選び方をまとめます。

プロフィール早見表

項目

内容

名前

伊藤大地(いとう だいち/Daichi Ito)

生年月日

1980年3月8日

出身

東京都保谷市(現・西東京市)。小学生時代の大半をインドネシア・ジャカルタで過ごす

ドラム開始

高校入学と同時。卒業後、バンドを掛け持ちしながら活動開始

在籍バンド

グッドラックヘイワ、ハシケントリオ、サンフジンズ、KILLING FLOOR、Cherry's

元在籍

SAKEROCK(2000〜2015年)、Good Dog Happy Men(2009年脱退)

主なサポート

細野晴臣、真心ブラザーズ、高田漣、星野源、安藤裕子、EGO-WRAPPIN'、レキシ、ハナレグミ、フジファブリック、LOVE PSYCHEDELICO ほか

ドラム以外

口笛

以上は所属事務所NOTE Incの公式プロフィールに記載されている内容です。

ドラムキットはShirai Keet ── メーカー公式に残る「開発に関わったドラマー」の記録

伊藤大地のドラムセットとして裏づけが取れるのは、シライミュージック(愛知県豊橋市)のドラムブランド、Shirai Keet Acoustic Drums です。単に「使っている」という以上に踏み込んだ記録が、メーカー側に残っています。

2014年の開発発表で名前が挙がった2人のうちの1人

シライミュージックが自社ドラムセットの開発を発表したのは2014年8月20日のこと。その告知記事では、プロトタイプを試した協力者が実名で紹介されており、「すでに長期的に使って頂いている二名のドラマー」として伊藤大地と小寺良太の2人が挙げられています。開発途中の楽器を日常的に使い込む立場にいた、ということです。

製品ページのSpecial Thanksにも伊藤大地の名前が掲載されており、掲載写真についても「写真は伊藤大地さんにレンタルしていたプロトタイプです」「写真は伊藤大地さん所有のKeetです」とメーカー自身が明記しています。所有と使用が、メーカーの言葉で確認できる状態です。

Shirai Keetというドラム ── 「アコースティックドラム」というコンセプト

Shirai Keet の設計思想は、製品ページで次のように説明されています。現在主流となっているマルチマイク前提のドラムを仮に「エレアコ」と位置づけたとき、アコースティックなドラムセットとはどういうものか ── そこから逆算して作られた楽器だ、と。想定されているのは、音響機材を使わずに20〜40人規模の会場で演奏する場面です。

Shirai Keet の基本スペック(メーカー公表) シェル:4ply 5mm / フープ:トリプルフランジ 1.6mm プレスフープ(バスドラムはウッドフープ)/ テンション:バスドラム・フロアタム8、タムタム6 / ヘッド:打面コーティング、裏面クリア(バスドラムは両面コーティング)

特徴的なのが重量です。メーカーの記載によれば22インチのバスドラムで6kg弱、18インチのバスドラムは約5kgで、これは14インチ×6.5インチのブラススネア1台とおおよそ同じ重さにあたります。バスドラムにタムをマウントできない仕様であることも、シェルの薄さと軽さを優先した結果として明記されています。

もう一つ、このブランドには珍しい方針が2つあります。客席側から見える位置にブランドロゴを置かないことと、シェルの材質を公表しないことです。前者はバイオリンやクラシックギターが外装にブランド名を書かないことに倣ったもの。後者については、「シェルの成形方法など全体のバランスで音が変わる」ため素材名だけを示しても意味をなさず、むしろ材質がわからないほうが固定観念なしに音と向き合えるのではないか、という説明がなされています。生産は浜松のNegi Drumsが担当しています。

2015年の公演で使われたキット構成

キートガッキのブログには、2015年12月17日に行われた細野晴臣のイベント「デイジーワールドの集い」でShirai Keetが使われたことが記されており、その際の構成が具体的に示されています。

パート

サイズ

バスドラム

20"×12"

タムタム

12"×8"

フロアタム

14"×12"

バスドラム20インチ、タム1つ、フロアタム1つという小型の3点構成です。深さ12インチのバスドラムは、一般的な標準サイズより浅い設計にあたります(後継のNueシリーズでは、この12インチ深を基本サイズとすることがメーカーの製品ページに明記されています)。あくまでこの公演で使われた構成ですが、小音量を前提にしたブランドのコンセプトとサイズ感が反映されたセットです。

レコーディングでの使用例も残っています。グッドラックヘイワが音楽を担当した映画『森山中教習所』(2016年7月9日公開)では、伊藤大地から「ほぼキートの音です!」という連絡があったことがメーカーのブログに書かれています。なお、名鉄パノラマスーパー柄のマスキングテープで装飾された個体の写真も公開されており、鉄道好きとしても紹介される本人らしい一台です。

Shirai Keet Acoustic Drums は受注終了している

これから同じブランドを新品で手に入れようとする場合、押さえておくべき事実があります。キートガッキは2024年7月6日付の告知で、Shirai Keet Acoustic Drums シリーズをすべて「受注終了」とすると発表しました。理由は生産上の都合により再生産の見通しが立たないためで、一時受注停止としていたモデルも含めての終了です。初代モデル(オリジナルキート)についてはこれより早く、2017年2月末で廃番になっています。

同告知では、シンバルやアクセサリー類の販売は継続すること、再生産の見込みが立つまでの措置であることも合わせて記されています。

受注終了前の価格感は、メーカーの価格表から確認できます。とくに後継のNueシリーズには、BD20"×12"/TT12"×8"/FT14"×12" という、2015年の公演で使われたものと同じサイズ構成のキット(N-KIT20)がラインナップされていました。

シリーズ

品番

構成・サイズ

定価(本体価格・税別)

Nue

N-KIT20

BD 20"×12"/TT 12"×8"/FT 14"×12"

139,200円

Nue

N-KIT18

BD 18"×12"/TT 12"×8"/FT 14"×12"

133,200円

Nue

N-KIT22

BD 22"×14"/TT 12"×8"/FT 16"×12.5"

150,000円

Nue

N-SD14575

スネアドラム 14"×5.75"

36,000円

Nue

N-TT1208

タムタム 12"×8"

26,400円

City

C-KIT20

BD 20"×12"/TT 12"×8"(スタンド付)/FT 14"×12"

138,000円

Nueは初代の後継にあたるシリーズ、Cityは要所に補強を施した派生モデルで、伊藤大地が所有しているのは初代のKeetです。同一モデルの価格ではありませんが、この構成のキットがどの程度の価格帯で作られていたかの手がかりになります。

本人の言葉から読み解く、機材の選び方

2024年2月22日に音楽ナタリーへ掲載された連載企画「これのドラムを聞け!5秒だけでもいい」の第14回に、伊藤大地本人が寄稿しています。好きなドラムフレーズを語るなかで、自身の機材やセッティングに触れた箇所がいくつかあり、そこから機材への向き合い方が読み取れます。

色違いのドラムセットを組む ── マット・ジョンソンの影響

ジェフ・バックリィ・バンドのドラマー、マット・ジョンソンについて語った箇所で、本人はこう書いています。

普段自分は色違いのドラムセットを好んでセットしますが、マット・ジョンソンの影響でもあります

同一シリーズ・同一フィニッシュで揃えるのがドラムキットの一般的な組み方とされるなかで、あえて色を揃えないという選択です。ここで重要なのは、それが音響的な理屈ではなく、憧れたドラマーの見た目からきているという点でしょう。同じ記事で本人は、マット・ジョンソンのプレイを「無骨にも見えて実はめちゃくちゃ緻密に、繊細に、超テクニックという両端を表現している」と評しています。

中古でドラムを探す人にとっては、実務的な示唆もあります。シェルごとに色やブランドが揃わなくてもよいという前提に立てば、キットまるごとの出物を待たず、単品で出てきたタムやフロアタムを1つずつ足していく買い方も選べます。

古いドラムヘッドを探して使う

ドラムヘッドについては、レコーディング現場を取材した記事のなかで、本人が理由を説明しています。

古いヘッドにこだわるのは、ベーシストが弦を換えない人がいるのと似たような理由ですが、現行のヘッドがあまりにもクオリティ下がっているからでもあります。ビンテージドラムの良さが消えてしまうのです。良いものであれば、新旧拘らずです。

ヘッドの品質評価は本人の見解であり、一般論として断定できるものではありません。ただ「良いものであれば、新旧拘らずです」という締めくくりに、判断の基準が新旧ではなく個体にあることが表れています。消耗品であるヘッドを、消耗品として扱いきらないという姿勢です。

こども用ドラムのタムをセットに組み込む

自身のバンド、グッドラックヘイワの「黒ダイヤ定食」について、本人は2分37秒あたりのフィルインを気に入っていると挙げ、それが「こども用のドラムのタムをドラムセットに組み込んで出てきたフレーズ」だと説明しています。野村卓史が書いた難しい構成の曲で、ドラムとピアノがうまく噛み合ったと振り返っています。

楽器としての格や値段ではなく、そこから出てくるフレーズを基準に太鼓を選んでいる例です。手持ちのキットに口径の小さい太鼓を1つ足すという発想は、フレーズの引き出しを増やす方法として応用が利きます。

「音色と自分の中のパッションのつながり具合」

同じ記事で、プレイの際に意識していることを問われた本人は、次のように答えています。

一番大事にしているのは音色と自分の中のパッションのつながり具合です。そこのコントロールがうまくいって、自分が演奏させてもらっている曲たちの存在感と個性に少しでもプラスがあれば最高に幸せです。

小さなタッチから反応する軽量のキット、古いヘッド、こども用の太鼓、色の揃わないシェル。並べてみると、いずれも「自分が出したい音色に手が届くかどうか」という一つの基準で選ばれた機材に見えてきます。

キャリア ── SAKEROCKから現在のサポートワークまで

SAKEROCK(2000〜2015年)

SAKEROCKは、リーダーの星野源が自由の森学園高等学校出身のメンバーを集めて2000年に結成したインストゥルメンタルバンドで、カクバリズム所属。伊藤大地は結成から解散までドラムと口笛を担当しました。

固定編成のバンドというイメージを持たれがちですが、在籍状況は途中で変化しています。

メンバー

パート

在籍

星野源

ギター・マリンバ(リーダー)

2000〜2015年

伊藤大地

ドラムス・口笛

2000〜2015年

浜野謙太

トロンボーン・スキャット

2002年に正式加入〜2015年

田中馨

ベース

2011年12月26日脱退、『SAYONARA』で復帰

野村卓史

ピアノ・オルガン

2002年脱退(以後サポート)、『SAYONARA』で復帰

バンドは2015年2月28日に解散を発表。2015年4月8日にラストアルバム『SAYONARA』をリリースし、6月2日の両国国技館公演「LAST LIVE "ARIGATO!"」をもって解散しました。

グッドラックヘイワ、サンフジンズ、ハシケントリオ

SAKEROCKと並行して、伊藤大地は複数のバンドで活動してきました。2002年に加入したKILLING FLOORは、福島ピート幹夫(サックス)を中心に1989年に結成されたインストバンドです。SAKEROCKの浜野謙太もかつて在籍していましたが、バンドの公式サイトによれば、2013年10月に9年間の在籍を経て芸能活動のためバンドを離れ、以降は佐藤綾音(サックス)を迎えた7人編成で活動しています。伊藤大地は現在もメンバーとして名前が掲載されています。

  • グッドラックヘイワ:2004年結成。野村卓史(キーボード)とのデュオ。伊藤大地はドラムと口笛を担当

  • サンフジンズ:奥田民生、岸田繁(くるり)との3ピースバンド。アルバム『スリーシンフサンズ』(2015年7月29日)

  • ハシケントリオ:シンガーソングライターのハシケンとのバンド

  • Cherry's:2004年結成。富樫春生、武藤雅孝とのバンドで、本人がメインボーカルを取る楽曲もある

ドラムに専念することが多いなかで、Cherry'sのようにボーカルを取るバンドがある点は、口笛を含めた表現の幅と地続きの部分です。

レコーディングとライブサポート

所属事務所の公式サイトに掲載されている参加作品から、主なものを挙げます。

アーティスト

作品

発売年

細野晴臣

HoSoNoVa/Heavenly Music/Vu Jà Dé/あめりか

2011〜2021年

星野源

ばかのうた/エピソード/Stranger/YELLOW DANCER

2010〜2015年

真心ブラザーズ

Do Sing/PACK TO THE FUTURE/FLOW ON THE CLOUD/INNER VOICE/Cheer/TODAY

2014〜2022年

GLIM SPANKY

SUNRISE JOURNEY/Next One/BIZARRE CARNIVAL ほか

2015〜2023年

吉澤嘉代子

箒星図鑑/秘密公園/東京絶景/女優姉妹 ほか

2015〜2020年

フジファブリック

I Love You/プラネタリア/LIVE at NHKホール

2021〜2025年

高田漣

アンサンブル/コーヒーブルース〜高田渡を歌う〜 ほか

2013〜2022年

YUKI

forme/SLITS

2019・2024年

レキシ

レシキ/ムキシ

2014・2018年

薬師丸ひろ子

エトワール

2018年

KinKi Kids

O album

2020年

ライブサポートとしては、細野晴臣、真心ブラザーズ、高田漣、星野源、安藤裕子、EGO-WRAPPIN'、レキシ、ハナレグミ、フジファブリック、山内総一郎、吉澤嘉代子、LOVE PSYCHEDELICO、須藤寿 GATALI ACOUSTIC SET、ヒグチアイ、Rei、地球三兄弟、坂本美雨、Salyu、片平里菜、藤巻亮太らの名前が公式に挙げられています。このほか公式プロフィールには、久保田麻琴がプロデュースするライブへの参加、サックス・クラリネット奏者の梅津和時やブギ・ウギ・ピアニストの斎藤圭土とのライブセッションも記載されています。また本田技研工業「Me and Honda」コンセプトフィルムのアブストラクトドラム篇にも参加しています。

インストバンド、フォーク、ロック、ポップス、ブギ・ウギのセッション ── ジャンルの振れ幅の大きさが、そのままキャリアの特徴になっています。

伊藤大地が挙げた「聴いてほしいドラム」

音楽ナタリーの同じ記事で、本人が好きなドラムフレーズとして6曲を挙げています。演奏の志向を知るうえで、機材リスト以上に手がかりになる部分です。

楽曲

ドラマー

本人のコメント(要旨)

細野晴臣「蝶々-San」

林立夫

「おっちゃんのリズム」に憧れ続けて30年近く。今も変わらず日本を代表するドラムイントロだと思う

ロイ・ヘインズ「JAMES」

ロイ・ヘインズ

高校生の頃から何度も聴いた。メロディあふれるドラミングと歌い方に憧れる。各ソロを口笛でコピーしたこともある

ビル・フリゼール「Egg Radio」

ジム・ケルトナー

スネア2つとリムショットだけで表現される世界観。音色、タイム感、フレーズ、訛り方。憧れの存在

フィオナ・アップル「Limp」

マット・チェンバレン+ブッチ・ヴィグ

ツインドラムのソロブレイク。初めて聴いたときの興奮度は人生で1、2を争う

ジェフ・バックリィ「Dream Brother」

マット・ジョンソン

世界で一番好きなロックバンド。無骨に見えて緻密で繊細、超テクニックという両端を表現している

グッドラックヘイワ「黒ダイヤ定食」

本人

2:37〜のフィルインが気に入っている。こども用のドラムのタムを組み込んで出てきたフレーズ

最近気になるドラマーとしては、エメット・コーエン・トリオのカイル・プールを挙げ、「古い時代のジャズの音がするけど、めちゃくちゃ現代的な感性を盛り込んでスウィングしているように聴こえて」魅力的だと評しています。

林立夫、ロイ・ヘインズ、ジム・ケルトナー、マット・ジョンソン。名前を並べると、手数やパワーではなく音色とタイム感で曲の性格を決めるタイプのドラマーが並んでいることがわかります。小さな音量から反応するドラムを長く使い続けている事実とも、方向として重なります。

同じ方向のサウンドを目指すなら ── 小音量で鳴るドラムという考え方

Shirai Keet Acoustic Drums は受注終了しているため、新品で同じキットを揃えることはできません。ただし、この楽器が体現しているのは「小さなタッチから反応するドラム」という設計思想であり、その考え方自体は機材選びに応用できます。

中古でShirai Keetを探す場合に見るポイント

中古で探す場合、このブランド特有の注意点があります。メーカーが「柔らかく軽い材なので、ヘッドを外してシェルに力をかけると、たわみます」「楽器として普通に扱って大丈夫な耐久性はありますが、乱暴には扱わないでください」と明記している楽器です。強度を前提にした一般的なドラムとは扱いが異なります。

⚠ オリジナルキートの中古売買についてのメーカー見解 初代モデルについて、メーカーは製品ページで「その華奢な仕様の為、通常の中古売買では買い手の正しい判断が付きかねる可能性があり、不当な値付けなどトラブルになる可能性があります」とし、オリジナルキート取扱店での売買を推奨しています。

流通量そのものも限られています。2026年9月14日にデジマートで「Shirai Keet」を検索した結果は1件で、内容は新品シンバル(FLAT WHITE 20")。中古のドラムキットは出品されていませんでした。ヤフオクで直近180日間の落札を検索した結果も3件のみで、出品タイトルはいずれもNueシリーズの13インチ・スネアドラム単体でした(落札額17,000円・19,500円・20,000円)。3件は発送地と出品者評価が同一で、同じ出品者による出品とみられます。

参考までに、同じ13インチのN-SD13575は本体32,400円で販売されていました。落札額はその半分から6割程度にあたりますが、3件のみの結果であり、しかも同一出品者の出品です。

母数が3件では相場と呼べる水準に達しないため、本記事では実測にもとづく価格レンジを掲載していません。数字の代わりに、個体を判断するための手順を挙げておきます。

  • どのシリーズかを先に確定する:レインフォースメント(補強)の入り方がシリーズで異なります。初代はスネアドラムと22"×8"のバスドラムのみに補強が入る仕様で、Ducoではこれが全種類に拡大されたとメーカーが説明しています

  • 内部ラベルを確認する:Keetは外装にブランドロゴを出さず、シェル内側に糸巻き形のラベルが貼られています。Nueシリーズについては、2018年4月生産分からラベルのデザインがマイナーチェンジされたと製品ページに注記があり、年式の手がかりになります

  • シェルのたわみと補強を見る:初代は薄く軽い設計で、メーカー自身が扱いに注意を促しています。バスドラムにタムをマウントした形跡があれば、仕様外の使い方をされた可能性を確認したいところです

  • 取扱店を経由できないか検討する:メーカーは通常の中古売買でのリスクに触れ、取扱店での売買を推奨しています。店舗の在庫を先に当たるほうが判断材料は揃います

中古でドラムを買うときに確認したいこと

ブランドを問わず、中古のドラムを購入するときに現物や出品写真で確かめておきたい箇所を整理します。写真だけでは判断しにくい項目が多いため、気になる部分は出品者に追加撮影を依頼するのが実際的です。

確認する箇所

見方

気づかなかった場合に起きること

シェルの真円度

ヘッドを外し、平らな面に置いて隙間が出ないか見る

ヘッドが均等に張れず、チューニングが安定しにくくなる

ベアリングエッジ

シェル上端の削り出し部分に欠け・へこみがないか、目視と指先で確認する

ヘッドとの密着が不十分になり、鳴り方が不均一になる

フープの歪み

フープを平面に置いて浮きがないか見る

ヘッド交換時に収まりが悪くなる

ラグ・テンションボルト

ボルトが固着していないか、ネジ山がつぶれていないか

チューニングの作業そのものが困難になる

シンバルのクラック

明るい場所で透かし、エッジ部やベル周辺にひび割れがないか見る

演奏中に進行し、使用できなくなる

シンバルの芯穴

穴が楕円形に広がっていないか見る

スタンド上で傾き、安定しにくくなる

ペダルの可動部

ヒンジのガタつき、スプリングの張力を確認する

踏み心地にムラが出る

薄いシェルのドラムを中古で探す場合は、これに加えて輸送時の扱いが論点になります。ドラムキットは大型で重量もあるため、梱包方法を事前に確認しておくと、到着後のトラブルを避けやすくなります。

伊藤大地のドラムに関するよくある質問

Q. 伊藤大地が使っているドラムセットは?

シライミュージック(キートガッキ)のShirai Keet Acoustic Drumsです。メーカーの製品ページに「伊藤大地さん所有のKeet」と明記されており、開発協力者としてSpecial Thanksにも名前が掲載されています。2015年12月17日の細野晴臣「デイジーワールドの集い」で使われた構成は、バスドラム20"×12"、タムタム12"×8"、フロアタム14"×12"の3点でした。

Q. Shirai Keet は今でも購入できますか?

キートガッキは2024年7月6日付の告知で、Shirai Keet Acoustic Drums シリーズすべてを受注終了としました。再生産の見通しが立たないことが理由とされています。同ブランドのシンバルやアクセサリー類の販売は継続されると案内されています。

Q. 伊藤大地はどのドラマーを挙げていますか?

音楽ナタリーの連載で「好きなドラムフレーズ」として挙げているのは、林立夫(細野晴臣「蝶々-San」)、ロイ・ヘインズ、ジム・ケルトナー、マット・チェンバレンとブッチ・ヴィグ、ジェフ・バックリィ・バンドのマット・ジョンソン、そして自身が参加したグッドラックヘイワの1曲です。このうち本人が「影響」という言葉を使っているのはマット・ジョンソンで、色違いのドラムセットを好んで組むというセッティングへの影響を語っています。また、プレイスタイルに影響を与えたドラマーや最近気になるドラマーを問われた項では、エメット・コーエン・トリオのカイル・プールを挙げています。

Q. 星野源の作品ではどの作品に参加していますか?

所属事務所の公式サイトに掲載されている星野源の参加作品は、『ばかのうた』(2010年)、『エピソード』(2011年)、『Stranger』(2013年)、『YELLOW DANCER』(2015年)の4作品です。両者はSAKEROCKで2000年から2015年まで同じバンドに在籍していました。

Q. SAKEROCKはいつ解散しましたか?

2015年2月28日に解散を発表し、6月2日の両国国技館公演「LAST LIVE "ARIGATO!"」をもって解散しました。ラストアルバム『SAYONARA』は同年4月8日にリリースされています。

まとめ

伊藤大地の機材を語るうえで中心に置くべきなのは、小さな音量から反応することを目的に設計されたShirai Keetという楽器です。メーカーの開発発表に実名で登場し、プロトタイプを長期間使い、完成品を所有している ── その関係が、メーカー自身の言葉で確認できます。

色違いのシェルを組み、古いヘッドを探し、こども用の太鼓をセットに加える。本人が語る機材の選び方には、スペック表には現れない基準が一貫しています。SAKEROCKから細野晴臣・真心ブラザーズ・EGO-WRAPPIN'のサポートまで、ジャンルをまたいで呼ばれ続ける理由を考えるとき、この「音色から逆算する」姿勢は一つの手がかりになるはずです。

サウンドマニアでは、ドラムをはじめとする楽器の情報をプレイヤー視点で発信しています。中古楽器の選び方については、サウンドマニアの他の記事もあわせてご覧ください。

サウンドマニア編集部

楽器の購入ガイドや基礎知識を発信するサウンドマニア編集部です。ピアノ・ギターをはじめとした楽器選びや、メンテナンス・演奏に関する実用的な情報をわかりやすくお届けします。

アーティストの記事

新着記事