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磯部寛之のベースは64年ジャズベ|使用6本と機材の全構成【2026年版】

磯部寛之のベースは64年ジャズベ|使用6本と機材の全構成【2026年版】

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サウンドマニア編集部/楽器の購入ガイドや基礎知識を発信するサウンドマニア編集部です。ピアノ・ギターをはじめとした楽器選…

[Alexandros]のベーシスト・磯部寛之氏の不動のメイン機は、シリアル・ナンバーが「L」から始まる1964年製のFender Jazz Bassです。足下にはFree The Tone ARC-3で7ループに組まれた14点のペダル、ステージ袖にはAmpeg SVT-VRを2台積んだラック・システム。本記事では、ベース・マガジンが2025年の全国ツアーのリハーサル現場で取材したセットアップを軸に、使用ベース6本の使い分け、ラックと信号経路、弦の3ゲージ運用、2020年に公開された機材リストとの差分、そして中古市場に出ているジャズ・ベースの掲載価格の実測までを整理します。

磯部寛之とは──[Alexandros]の低音を担うベーシスト

磯部寛之(いそべ・ひろゆき)氏は、川上洋平氏(vo,g)、白井眞輝氏(g)、リアド偉武氏(d)とともに[Alexandros]を構成するベーシストです。

ベースを手にしたのは高校1年──公式プロフィールでたどる歩み

ベース・マガジンの「BASSIST FILE」に掲載された本人回答によれば、ベースを手にしたのは高校1年に入ってすぐ。「たまたま友達が目の前で弾いていたのがベースで、なんかカッコいいなと思ったから」というのがきっかけで、年齢については「15歳ですかね」と本人は答えています。

ベース・マガジン各記事のプロフィール欄に記載されている活動歴は以下のとおりです。

  • 2007年:バンド始動

  • 2010年1月:1stアルバム『Where's My Potato?』でデビュー

  • 2014年3月:初の日本武道館単独公演を成功させ、バンド名を[Alexandros]へ変更

  • 2018年8月:ZOZOマリンスタジアムで自身初のスタジアム・ワンマン・ライヴを開催

  • 2025年4月23日:9thオリジナル・アルバム『PROVOKE』をリリース。5月2日から全国18箇所・24公演の“[Alexandros] PROVOKE JAPAN TOUR 2025”を開催

同じ「BASSIST FILE」で、好きなベーシストとしてザ・ストーン・ローゼズおよびプライマル・スクリームのゲイリー・マイケル・"マニ"・マウンフィールド氏を挙げ、自身の代表作として『Where's My Potato?』『Me No Do Karate.』『Sleepless in Brooklyn』の3作を挙げています。

指弾きとピックの実像──「俺は指弾き中心だから」

磯部氏の奏法は指弾きが中心です。ただし、ピックを使わないわけではありません。『PROVOKE』制作時のインタビューで、「アフタースクール」はピック弾きだと明かしたうえで、こう語っています。

最後のほうまで指で弾いてたけど、洋平かまーくん(白井眞輝/g)が“ピックのアタック感がいいかもしれない”と言ったんです。俺は指弾き中心だから、正直“あー、ピックか~”と思いながらスタジオで弾いたんですけど(『ベース・マガジン』2025年4月23日公開インタビューより)

逆に、ピックで弾こうとして最終的に指に戻した曲として「FABRIC YOUTH」「超える」を挙げ(「冷めちゃう」についても「もそうだったかな」と述べています)、「慣れている指弾きで自由にやったほうがいいノリとか色気が出る」と説明。「JULIUS」については「最後まで悩んだけど、結局ピックにしたんだっけな」と、本人の記憶も揺れたまま語られています。曲ごとにどちらが合うかを都度判断している、というのが実像に近いところです。

また、真空管アンプとの関係も一貫していたわけではありません。同インタビューでは「昔は“温かい音が出ちゃって嫌”、“もっとバキバキなほうがいい”という理由で真空管アンプすら嫌いで、色気もクソもないベーシストだったんです(笑)」と振り返り、そこからロー感やアンプの鳴りの良さを知り、ヴィンテージ楽器を使うようになった経緯を語っています。

メイン機は1964年製Fender Jazz Bass

ベース・マガジンが“PROVOKE JAPAN TOUR 2025”のリハーサル現場で撮影した機材取材記事によれば、磯部氏のメイン機はシリアル・ナンバーがLから始まる1964年製のFender Jazz Bassです。

同記事は「不動のメイン器であり、『PROVOKE』のレコーディングでもメインで使用された」と記し、各種パーツ類など基本スペックは当時の状態が維持されていること、激しいステージングを物語るように塗装が剝げ落ちていることを伝えています。

本人が語る「ちょっと枯れたような音」

本人がこの個体の音を語った言葉も残っています。「今のメインの1964年製ジャズ・ベースのハイポジを弾いたときのちょっと枯れたような音も色気と言える」——ハイ・ポジションの枯れた響きを「色気」と表現する感覚が、この個体を選び続ける理由の一端を示しています。

2025年時点の使用ベース6本

同取材で紹介された6本は次のとおりです。

モデル

年式

役割・使い分け

Fender / 1964 Jazz Bass

1964年製

不動のメイン機。『PROVOKE』のレコーディングでもメインで使用

Fender Custom Shop / Jazz Bass

記載なし

2015年頃から使用。ライヴではドロップC♯チューニング用。モダンなロー・エンドと高域の輪郭が際立つ

Fender / 1977 Precision Bass

1977年製

シリアルはS753340。アッシュ・ボディ、メイプルのネック/指板、ディマジオ製ピックアップを搭載

Rickenbacker / 4001

1970年代製

楽器店でひと目惚れして購入。2015年頃からライヴ専用器として使用

Gibson / Les Paul Triumph Bass

記載なし

川上洋平氏の兄から借り受けた1本。バンド内では“兄ちゃんベース”。「WITH ALL DUE RESPECT」「Boy Fearless」の音はこの個体

Gibson / 1981 Flying V Bass

1981年製

シルバー・バースト。2019年4月頃に購入。リア・ピックアップをメインに使用

Custom Shop製ジャズ・ベースはリア・ピックアップが高めにセッティングされ、弦との距離を詰めることでパワフルな出音を狙っているとされます。Les Paul Triumph Bassはピックアップ・セレクターを基本センター・ポジションで使い、「WITH ALL DUE RESPECT」ではトーン・セレクターを“2”に設定して歪みを強調したと紹介されています。

1981年製Flying V Bassの購入理由は演出です。「Kick&Spin」でGibson Flying Vギターを弾く白井眞輝氏に影響を受け、ステージ上で“ツインV”を成立させるために手に入れたと同取材は伝えています。

本人がこれらを実際にどう比較したかも、インタビューに残っています。「Boy Fearless」の冒頭リフについては「ジャズベもプレベも試したけど、“やっぱり兄ちゃんベースが一番合うね”となりました」。楽曲ごとに複数の個体を鳴らして選ぶ、という手順が取られています。

アンプとラック・システム──Ampeg SVT-VRを2台

2025年ツアーのアンプ環境は、ステージ上ではなくステージ袖に置かれています。

ヘッドとキャビネット

ラックにはメイン/サブの2台のAmpeg SVT-VRがスタンバイし、キャビネットはAmpeg SVT-810AV。SVT-VRはAmpegの公式マニュアルで「300 watts rms minimum continuous @ <5% THD into 2 or 4 ohms」と規定された真空管ヘッドで、同マニュアルはSVT-410HLF/SVT-610HLF/SVT-810AV/SVT-810Eといったキャビネットとの組み合わせを想定機種として挙げています。

入力の使い方も変化しています。ベース・マガジンによれば、以前はチャンネル1の“ブライト”に入力していたところを、2025年の取材時点ではより低音が膨らむ“ノーマル”のインプットを使用しているとのことです。

ステージ袖へ移した理由

アンプをステージ上から動かしたのは、音量の問題を解くためでした。同記事は、以前はキャビネットやヘッドをステージ上に設置していたものの、低音の回り込みやモニターとの干渉により音量を上げづらかったため、全メンバーのアンプ・システムごとステージ袖へ移設する方式に変更した、と説明しています。これによって低域感をしっかり加えることが可能になったとされます。

ラックの中身と信号の流れ

ラックには上から、SHURE製ワイヤレス・レシーバー、Tech 21製SansAmp RBI(プリアンプ)、American Audio製DB DISPLAY MKII(レベルメーター)、KORG製DTR-2(チューナー)が配置され、左側にFree The Tone製IG-1N INTEGRATED GATE(ノイズゲート)が外付けされています。

信号はエフェクター・ボード → SansAmp RBI → ノイズゲート → ラック裏のRadial製J48(DI) → アンプ・ヘッド → キャビネット・シミュレーター → キャビネットという順で流れ、ライン出力はSansAmp RBI通過前、通過後、キャビネット・シミュレーター経由の3系統が用意されています。

このSansAmp RBIは音を作り込むためではなく、補正のために常時オンで使われています。ペダル型のBass Driver DIに近いキャラクターを持ちながら、BLENDを絞ってもEQ補正が効く点を生かし、SansAmpらしさを前面に出しすぎずにロー感を膨らませ、サウンドの重心を下げる役割を担っているとのこと。2023年頃のラック・システムへの移行のタイミングで導入されたと紹介されています。

エフェクター・ボードは14点・7ループ構成

足下はFree The Tone製ARC-3(ルーティング・コントローラー)を中心に組まれています。ベースからの信号はまずFree The Tone製JB-41(ジャンクション・ボックス)に入力され、すべてのペダルがARC-3に接続される構成です。

ループ

接続機材

用途

1

BOSS / BC-1X(コンプレッサー)+ Mad Professor / Ruby Red Booster(ブースター)

BC-1Xの使用頻度は少ないが、スラップ・フレーズなどでブースターと併用し、ハードにコンプレッションがかかった質感を加える

2

Electro-Harmonix / PITCH FORK(ピッチシフター)+ BOSS / BB-1X(オーバードライブ)

PITCH FORKはKORG / XVP-10と接続しピッチをリアルタイムに操作。BB-1Xは軽く歪ませ、音色にわずかな変化を加える目的でオンにすることが多い

3

Mad Professor / Blueberry Bass Overdrive(オーバードライブ)

以前も使用していたが、近年再び必要性を感じて再導入

4

Tech 21 / red ripper(ファズ)

低域の膨らみが豊かになるようにセッティング

5

Darkglass Electronics / Microtubes B7K Ultra(プリアンプ)

プレシジョン・ベースや、ドロップ・チューニングのジャズ・ベースを使う際のナチュラルな歪みとロー・エンド補強

6

JHS Pedals / Pandamonium(オーバードライブ)

ピック弾き時に活躍。ファズとオーバードライブの中間のようなキャラクター

7

pandaMidi Solutions / Future Impact I.(ベース・シンセ)

ベース・シンセを単独のループに配置

このほかボード上には、BOSS / TU-3S(チューナー)、Free The Tone / JB-41(ジャンクション・ボックス)、KORG / XVP-10(エクスプレッション/ヴォリューム・ペダル)、Tech 21 / SansAmp Bass Driver DI(プリアンプ)、Free The Tone / ARC-3(ルーティング・コントローラー)が並び、合計14点で構成されています。

ループ6のPandamoniumが「ピック弾き時に活躍し、ファズとオーバードライブの中間のようなキャラクターで音作りがされている」と説明されている点は、前述の奏法の話とつながります。曲ごとに指とピックを切り替える演奏に対して、ピック弾きの場面で使う歪みがループ単位で独立している構成になっています。

弦・ピック・シンセ・ベース

GHS BASS BOOMERSを3ゲージで使い分け

使用弦はすべてGHS製のラウンド・ワウンド弦“BASS BOOMERS”シリーズ。用途に応じて3種類を使い分けています。

ゲージ

対象の個体

狙い

.045 – .105

1964年製Jazz Bass、Precision Bass、Rickenbacker

メインのセット

.050 – .107

Gibson製ベース2本

ショート・スケール用

.050 – .115

Custom Shop製Jazz Bass(ドロップC♯)

テンションを保ちつつロー・エンドを強調

ピックは0.8mmのおにぎり型のオリジナル・ピックを使用しています。

Moog Subsequent 37という新しい挑戦

『PROVOKE』から導入されたのが、シンセ・ベースとしてのMoog / Subsequent 37です。ライヴでは「todayyyyy」で全篇をシンセ・ベースで演奏し、「Boy Fearless」では曲中でエレキ・ベースと使い分けています。

ただし、レコーディングで弾いたわけではありません。本人はインタビューで「自分で考えたベース・ラインを打ち込んではいるんですけど、レコーディングではシンベを弾いてなくて。あとからライヴ用にモーグを買って練習したんですけど、イチから弾き方を覚えた超初心者です(笑)」と説明しています。ラインを作る際も「あえて竿は使ってないですね」と述べ、手グセの概念を一度捨てて頭のなかで鳴るラインをそのまま打ち込んだと語っています。

機材はどう変わってきたか

ベース・マガジンには、2020年8月公開の「BASSIST FILE」にも磯部氏の機材リストが掲載されています。2025年の取材と並べると、変化した部分と変わらない部分がはっきりします。

項目

2020年8月公開のリスト

2025年5月公開の取材

メイン機

Fender / Jazz Bass(1964年製)

Fender / 1964 Jazz Bass(変わらず)

以前のメイン機

Fender / Jazz Bass(1974年製)と記載

取材対象6本には含まれず

そのほかのベース

Godin / A4 Ultra Fretted、Fender / Musicmaster Bassを記載

取材対象6本には含まれず

Gibson系

Flying V Bass(1981年製)のみ

Flying V Bassに加えLes Paul Triumph Bassが加わる

アンプ

Ampeg/SVT+810AV、Fender/Bassman100

Ampeg / SVT-VR×2+SVT-810AV(ステージ袖のラック運用)

ラック機材

記載なし(DIとしてRADIAL/J48)

SansAmp RBI、IG-1N、DB DISPLAY MKII、DTR-2、J48

歪み

Crews Maniac Sound/SVD-001を含む

ループ2〜6の5系統に分散。SVD-001は取材記事に記載なし

シンセ

pandaMidi Solutions/Future Impact I.

Future Impact I.に加えMoog / Subsequent 37を導入

2つの記事は掲載時点が異なるため、リストに載っていないことが「手放した」ことを意味するわけではありません。それでも、1964年製Jazz Bassだけは両方の時点でメイン機として記載されているという事実は読み取れます。周辺のシステムが大きく組み替えられる一方で、音の出発点は動いていないわけです。

磯部寛之のサウンドに近づくには

1964年製のジャズ・ベースそのものは、同じ個体が二つとない世界です。ここでは、フェンダー公式ストアで購入できる現行モデルの仕様と価格、中古市場に出ているジャズ・ベースの実際の価格帯、そして中古個体を見るときに自分で確かめられる項目を順に見ていきます。

フェンダー公式ストアで買える現行モデル

モデル

価格(税込)

主な仕様

Fender American Vintage II 1966 Jazz Bass

437,800円

アルダー・ボディ、グロス・ニトロセルロースラッカー、1966 "U"シェイプ・メイプルネック、7.25インチラジアスのバインディング付きラウンドラミネート・ローズウッド指板、Pure Vintage '66 ピックアップ

Fender Player II Jazz Bass

110,000円

アルダー・ボディ、グロス・ポリエステル、Modern "C"シェイプ・ネック、9.5インチラジアス指板、Player Series Alnico 5 ピックアップ

注意したいのは、American Vintage II 1966 Jazz Bassが1966年仕様の再現であって、1964年製の復刻ではない点です。フェンダー公式の製品情報によれば、同モデルはネック・バインディングとパール・ドット・インレイ、1966年の"U"シェイプ・ネック、Pure Vintage '66ピックアップを備えています。磯部氏の個体は1964年製ですから、同じ1960年代の系譜にあるとはいえ、仕様がそのまま一致するモデルではありません。

中古市場に出ているジャズ・ベースの価格帯

楽器検索サイト・デジマートのエレキベース・カテゴリから、種別が「JBタイプ」でブランドがフェンダー系の掲載品を2026年9月15日に収集し、商品名に含まれるシリーズ名で区分して整理しました(プレシジョン・ベースおよびパーツ組み込み品は除外)。以下の数値はいずれも出品者が提示している掲載価格であり、成約価格でも買取価格でもありません。外れ値の影響を避けるため平均値は使わず、第1四分位・中央値・第3四分位で示します。

区分

件数

第1四分位

中央値

第3四分位

1960年代製(ヴィンテージ区分)

38本

174.0万円

220.0万円

332.0万円

 うち1965〜69年製

24本

165.0万円

211.0万円

260.0万円

American Vintage系(復刻モデルの中古)

42本

23.1万円

25.3万円

26.4万円

American Professional/Ultra/Performer等(USA製・中古)

35本

19.8万円

23.5万円

27.8万円

Made in Japan(中古)

27本

11.0万円

13.2万円

14.0万円

Player/Player II(メキシコ製・中古)

28本

7.9万円

9.4万円

11.4万円

磯部氏の個体と同じ1964年製に絞ると、この日の掲載は6本。1960〜64年製まで広げても14本で、価格帯として提示できる件数に届きませんでした。そのため1960年代製をひとまとまりとして扱い、内訳として1965〜69年製だけを分けています。1960年代製の帯は第1四分位と第3四分位の差が158万円に開いており、同じ年代でも掲載価格が二倍近く動きます。年式だけで価格が決まる帯ではない、ということです。

中古で探すときに見るところ

価格差の理由を自分で読み解くために、出品情報と写真から確認できる項目を挙げます。

中古のジャズ・ベースを見るときの確認項目

  • シリアル・ナンバーの位置と刻印:年代によって打刻箇所と書式が異なります。出品情報のシリアルと、写真に写っている実物が一致しているかを確認します

  • オリジナル・パーツの残存:ピックアップ、ペグ、ブリッジ、ポット(ボリューム・トーンの電子部品)が当時のものか、交換されているか。同じ年式でも価格差の主因になります

  • 塗装の履歴:リフィニッシュ(再塗装)の有無。ネック・ポケットやキャビティ内部の塗り分けが判断材料になります

  • ネックの状態:順反り・逆反り・ねじれ、トラスロッドの残り調整量。フェンダーが1966年仕様を再現した現行モデル(American Vintage II 1966 Jazz Bass)では、トラスロッドがネックの根元側で調整する「Vintage-Style Butt Adjust」と公表されており、当時の仕様は現行の一般的なヘッド側調整とは手順が異なります。出品個体の調整方式と、調整代がどれだけ残っているかを販売店に確認してください

  • フレットの残量と打ち替え履歴:打ち替え済みなら、いつ・どこで行ったか

  • 修理歴の書面確認:出品者に文面で残る形で確認する。口頭やチャットの記憶に頼らないこと

なお磯部氏の個体について、ベース・マガジンは「各種パーツ類など、基本スペックは当時の状態が維持されて」いると記しています。長く使われながらオリジナルの構成が保たれている個体、という位置づけです。

足下から近づけるという選択

機材構成を見ると、磯部氏のサウンドは楽器単体ではなく、真空管ヘッド、常時オンのプリアンプ、用途別に分けられた歪みという層で作られています。1964年製の個体に手が届かない場合でも、たとえばドロップ・チューニング時のロー・エンド補強にプリアンプを使う、ピック弾き用と指弾き用で歪みを分ける、といった設計の考え方は、手持ちの機材でも試せる部分です。

ひとつ補足すると、同じ機材を揃えても出てくる音は同じにはなりません。タッチ、ピッキングの位置、個体差、そしてバンドのアンサンブルが音を決めます。磯部氏自身、インタビューで「指で弾くからには、粒立ちとか指弾きのカッコよさを表現したいですし、そこはベーシストとしても追求したい部分で」と語っています。

よくある質問(FAQ)

Q. 磯部寛之はピック弾きもするのか?

します。本人が「俺は指弾き中心だから」と述べているとおり基本は指弾きですが、『PROVOKE』では「アフタースクール」をピックで演奏。「JULIUS」も最終的にピックを選んだと語っています。エフェクター・ボードにも、ピック弾き時に使うオーバードライブ(JHS Pedals / Pandamonium)が組み込まれています。

Q. ドロップ・チューニングの曲はどの楽器で弾いている?

ライヴでのドロップC♯チューニングにはFender Custom Shop製のJazz Bassが使われています。弦はGHS BASS BOOMERSの.050 – .115で、テンションを保ちながらロー・エンドを強調するゲージが選ばれています。

Q. “兄ちゃんベース”とは何のこと?

川上洋平氏の兄から借り受けたGibson製Les Paul Triumph Bassのバンド内での呼び名です。『PROVOKE』収録の「WITH ALL DUE RESPECT」「Boy Fearless」で聴けるサウンドはこの個体によるもので、本人は「唯一無二の音がするんです」と語っています。

Q. シグネチャー・モデルは発売されている?

フェンダー公式ストアのジャズ・ベースのラインナップに、磯部寛之氏のシグネチャー・モデルは掲載されていません(2026年9月15日確認)。1960年代の仕様を再現した現行モデルとしては、American Vintage II 1966 Jazz Bassが用意されています。

まとめ

磯部寛之氏の機材は、1964年製Fender Jazz Bassという動かない中心と、そのまわりで更新され続けるシステムという二層構造になっています。2020年に公開された機材リストでも2025年の取材でも、メイン機は同じ個体。一方でアンプはステージ袖のラック運用へ移り、SansAmp RBIが補正用として加わり、Moog Subsequent 37という新しい音源も導入されました。

足下はARC-3で7ループに整理され、ピック弾き用の歪み、ドロップ・チューニング用のプリアンプ、スラップ用のコンプ+ブースターというように、プレイの都合から逆算して組まれているのが特徴です。弦を3ゲージ使い分けているのも同じ発想でしょう。

これから磯部氏のサウンドを追いかけるなら、まずは『PROVOKE』の各曲を、どの個体で弾かれたのかを意識しながら聴き直すところから。そのうえで、自分の手持ちの楽器と足下を「曲ごとに使い分ける」設計に組み替えてみる。機材そのものより先に真似できるのは、この切り分け方のほうです。

サウンドマニア編集部

楽器の購入ガイドや基礎知識を発信するサウンドマニア編集部です。ピアノ・ギターをはじめとした楽器選びや、メンテナンス・演奏に関する実用的な情報をわかりやすくお届けします。

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